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【祓魔師】イルミンスールの祭典

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【祓魔師】イルミンスールの祭典

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第20章 2人のテスカトリポカ Story4

 カフェでの騒音は地下訓練場まで届くことはなかったが、ボコールが侵入したと弥十郎から連絡を受けたことにより、招かざる客がやってくるかもしれないと思い扉の向こうを警戒していた。
 その先では見張りとして、章と樹が待機していた。
「あちゃー。今日の祭典、終わったみたいだね」
 ディアボロスの襲撃に遭ったとあれば、一般客はおろかのんきに営業できるはずもなかった。
「久々に楽しめると思えば…やはりな」
「ほとんどの人は遊べてないらしいけど。出店に行けた人…いいなぁ」
「もとより、これは遊びではないからな」
 祭りといえどそれは表向きの行事であり、本来は時を操作させないためのものなのだ。
「僕たちも出店担当のほうがよかったかも?…いたっ!?殴らないでよ、樹ちゃん」
「真面目に仕事をしろ!」
「うー…ごめん。あ、そういえば樹ちゃん。今日はニュンフェグラールを持ってないね?」
「あぁ、探知の役割などが必要だろうからな」
 魔性を強制憑依させた者について特に情報はなくディアボロスさえこなければ、呪いのたぐいにかかることはないだろうと考えてのことだった。
「(まさかとは思ったが、見張り役が私とアキラだけとは…)」
 今更愚痴をこぼすわけにもいかず、ひたすら扉の傍で襲撃に備えるしかなかった。
 襲撃されずに任務を遂行できれば一番よいのだが、生憎そうもいかないようだった。
 アークソウルにヒトではない気配がかかり、接近スピードからして数分の後には遭遇しそうだ。
「アキラ、来るぞ」
「任せてよ、樹ちゃん♪」
 緒方 章(おがた・あきら)屋台デートの予定をぶち壊した彼らを、許すものかと待ち構える。
「目に見える相手なら恐れるものはないね」
 章は祓魔の力をムチ状に変化させ力いっぱいふるう。
「そこで何やってんだぁーっ?退けぇええ」
 ボコールは邪魔なスペルブック使いから潰そうと、ロッドから石化の魔法を発する。
「わわ、石化!?」
 灰色の泥が章を目掛けて押し寄せる。
「かわせ、アキラッ」
「ありがとう、さすが樹ちゃんだね♪」
 時の宝石により瞬間的に加速され、足元にあたる寸前にかわす。
 騒動を耳にした和輝が、何事かと扉を開けた。
「アニスが妙な気配を探知したらしいが、やつらか?」
「うん、きっちゃったみたいだよ」
「同一化はどうなった?」
「まだ目覚めてはいないが…無事に完了した」
「私たちが逃げれば、魔法学校を荒らされかねない。…どうする?」
「ここで叩くしかないだろう」
「戦うの…?」
 和輝の後ろからアニスがひょっこりと顔を覗かせた。
「中に魔性はいないんだね。ちょっと派手にやってもいいのかな」
「あぁ?死なせない程度にな」
「おっけー♪」
 にんっと笑みを浮かべたアニスはサンダーバードを暴れさせ、祭典の出店に行けずたまっていたフラストレーションをぶつける。
「あ…アニス、何を?」
 廊下に出たリオンは目の前の悲惨な光景に唖然とした。
「ふぇ?だって…だって〜、すっごい退屈だったんだもん」
 けっして広くはない通路の影響もあってか、サンダーバードの翼をぶつけやすい。
 地下通路の仕組みを知らない彼らにとっては、ホイホイにかかったのも同然だった。