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七夕祭りinパラミタ内海

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七夕祭りinパラミタ内海

リアクション

「七夕祭りか、あいつら珍しく粋な事をしてくれるぜ」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は珍しくいつも迷惑ばかり掛ける双子を褒めていた。
 なぜなら
「今日はリーブラと久しぶりに会えるし……卒業からずっとあいつ宮殿務めで空京で……もう何か月も……」
 卒業以来、就職の関係で会えずにいたリーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)に会えるからだ。傍目から分かるほどにウキウキしていた。
「……まだ三ヶ月ちょっとしか経ってないよ」
 シリウスとは違いツッコミを入れるサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)には浮き足だった様子は無かった。別にリーブラと会える事が嬉しくない訳では無い。ただ別の理由があるだけ。
「そうだっけ? いや、オレはてっきり……一日千秋ってこういうのをいうのかな、ははは……」
 シリウスは参ったなと照れ隠しの笑いを浮かべた。
「…………待ち合わせの時間よりも随分早いし、浮かれてるね」
 冷静なサビクのツッコミは続く。
 何と無しに二人の間に温度差が見られるが、
「当然だろ、久しぶりに会えるんだぜ。それにあいつだったらもうそろそろ来るはずだ」
 シリウスはリーブラとの再会に目が行ってるためかサビクの様子には気付かぬ模様。
「……そうだね(そわそわと子供みたいな浮かれようだし、そんなに会いたいのか)」
 シリウスの様子にサビクは何とも言えぬ様子で見ていた。
 自分を見るサビクの視線に気付くなり
「三人でめいいっぱい遊ぼうぜ」
 シリウスはニカっと良い笑顔。
「……少し様子見て来るよ」
 サビクはそう言うなりシリウスの返事を待たずに行ってしまった。
「あぁ、頼むぜ」
 シリウスは楽しそうにサビクを見送った。

 一方。
「……三人で七夕祭りに参加……今夜は素敵な日になりそうですわね」
 事前にシリウスから連絡を受け相談した待ち合わせ場所へ向かうリーブラ。その表情は楽しげな笑みがこぼれまくりである。
 それだけでなく
「本土も久しぶりな感じがしますわね、まだたったの三ヶ月しか経っていませのに……」
 何もかもが久しぶりな気がしてしまう。そんな自分に少しだけ苦笑。リーブラがこれほどまでに久しぶりに思い仲間と会う事に浮かれるのは仕方が無いのだ。何せ百合園女学院卒業後、シリウスと別れ、シャンバラ宮殿に勤務するようになったからだ。
「一日でもお休みが頂けて七夕をシリウス達と過ごせる事を感謝しないといけませんわね(離れていても会えるのはやっぱり嬉しいですわね。会う前から浮かれて……)」
 隣にいる事だけが仲間であり絆という訳では無いと知っていても会える事は大変嬉しく、それに浮かれる自分にクスリと笑ってしまう。
「さぁ、急がないと……」
 リーブラは先程よりも歩く速度を上げた。少しでもシリウス達と過ごせる時間を確保するために。

 急いでから少し経過後。
「……えぇと確か、シリウスの言っていた場所は……あれは、サビクさん?(シリウスはいませんわね。それに何か……)」
 立ち止まり、行き先を確認していたリーブラの眼前にサビクの後ろ姿が飛び込んできた。てっきりシリウスと一緒と思っていたためおかしいと思うと同時に何かを感じた。
 とりあえず
「サビクさん?」
 リーブラは変わらぬ調子でサビクに声をかけた。
「リーブラ」
 サビクがそう振り向くと同時に剣の花嫁を洗脳する『花嫁掌握』を発動させ
「ちょっとお話しようか」
 リーブラを人目のない場所へと誘導した。ちなみにこの能力についてシリウスは知らない。知ったら絶対に使うなと一喝するだろう。

 人目のない場所。

 ぼぅと突っ立っているリーブラを目の前に
「……予想通り契約の絆があってもキミなら掌握できる。ボクらはシリウスを通して繋がっているからね」
 サビク一人だけが喋っている。
「……蛇遣い座の力……今じゃ大した使い道はないと思ってたけど、これなら……」
 サビクはじぃとリーブラを見ながら脳裏によぎるのはリーブラとの再会を遠足前夜の子供のように浮かれるシリウスの様子。
 何事かをするかと思いきや
「……いや、ボクは何をしてるんだ」
 自分に呆れる溜息を吐くなり、じっとリーブラを見て
「キミをシリウスから引き離しても、シリウスの心が奪えるわけじゃないのに……」
 また溜息を吐いた。リーブラを待つ間、サビクの表情が優れなかった理由がこれなのだ。シリウスとリーブラの強い家族愛に近い絆に現在シリウスの相棒を務める自分が割り込む余地が無いために思わずこんな事をしてしまったのだ。
「今の事は忘れろ。目を覚ますんだ」
 サビクは鋭く言い放ち、リーブラに掛けた洗脳を解いた。
「……本当に何やってるんだ……ボクは……」
 サビクは深い自分への呆れの溜息を吐いた時、
「……あ、いけない。なんだかぼーっとしていたようですわ……って、ここはどこですの? シリウス達に会いに……あぁ、サビクさん、何があったのか知りません?」
 洗脳が解かれたリーブラはいつの間にか違う場所にいる事に慌てて訊ねると
「……それより、シリウスが待っている。行こうか」
 サビクは返答に言い淀んだ末、誤魔化し、何事も無いよう振る舞った。
「……えぇ(先程とは違う場所にいて記憶に空白、いつの間にかサビクさんがいるという事は何か……でもサビクさんは何も……それより今日の事を考えましょう)」
 今の状況から何かされたと察するもリーブラはサビクの様子から追求しなかった。
 ともかく二人はシリウスが待つ待ち合わせ場所に向かった。

 待ち合わせ場所。

「お、サビク……と、リーブラ!」
 シリウスは前方からサビクと待ちに待った人物がやって来るのを視認するなり駆け寄った。
「久しぶりですわね、シリウス」
 やって来たシリウスを見慣れた笑顔でリーブラは迎えた。
「あぁ、今日は三人で思いっきり祭りを見て回って……どうした、サビク?」
 シリウスは楽しそうに笑いながら言うもサビクが微妙に別れた時と様子が違う事に気付いた。
 しかし
「……何でもないよ。それで最後に笹流しだね」
 サビクは何でも無いように振る舞ってうやむやにした。
 そして、三人は歩きながら屋台で食べ物を購入し、食べ歩きながら笹が設置されている浜辺に向かった。

 浜辺に向かう道々。
「確か、七夕祭りの主催者は彼らでしたわね」
「あぁ、凄い短冊を作ったとか。あいつらも最近なんか変わったよな。いいことなんだろうけど……それにロズの事も関係あるのかもな」
 シリウスとリーブラは双子についてあれこれ話し出した。
 その時、
「三人も来てたんだな」
「願い事はしたか?」
 双子の陽気な声が降りかかる。
「あぁ、これから行く所だ」
「楽しんでいるみたいですわね」
 シリウスとリーブラは楽しんでいる双子に笑い、
「キミ達は何か書いたのかい?」
 サビクは訊ねた。
「これから書きに行くんだよ! ロズもな」
 ヒスミはニカニカ笑いながら隣のロズを見た。
「……いや、願いと言っても」
 話を振られたロズは戸惑ったように口ごもる。
「そう言うな。折角の七夕なんだから書いておけ」
 シリウスは珍しくヒスミの加勢に回った。
「そうそう、書いておけって」
 キスミも言う。
「……そうだな」
 ロズはこくりとうなずいた。
「それじゃ、俺達はもう行くからな」
「楽しめよ」
 双子はそう言うなり願い事を書きに行った。

「あぁ、そっちも楽しめよ」
「賑やかも程々に」
 シリウスとリーブラは賑やかな三人組を楽しそうに見送った。
「ところで、シリウス、短冊に書く願いは決まってるのかい?」
 双子達の流れからサビクは何気なくシリウスに訊ねた。
 ほんの少し考え込んでから
「そうだなぁ。いつも一緒は難しいかもしれないけど。こうやって年に何度かでも、ずっと三人で会って遊んだり冒険したり、できるといいなかな。いつまでもずっと、さ……」
 シリウスは二人の大切な相棒を見やりながら答えた。
「そうですわね。これから先も色んな事があるでしょうけど」
「……悪くないね」
 リーブラとサビクも同意した。それぞれに何かを抱えていたとしても一緒にいる事は嫌いではない。嫌いだったらこんなにも楽しいはずはないから。大好きだから楽しいのだ。
 とにもかくにも三人は浜辺へ行き、願い事を書いた短冊を笹に飾ってから食べ歩きを楽しんだ。
 その中にはキャンプファイヤーへの参加もあったり。

 キャンプファイヤーで双子が騒ぎを起こしている最中。
 シリウス達は買い食いをしながら離れた場所で様子を窺っていた。
「……前言撤回かな」
「やっぱり、やらかしていますわね」
 シリウスとリーブラはやっぱりの展開に呆れていた。
「祭りだから賑やかなのはいいけどね」
 サビクも肩をすくめながら言った。
 その後もあちこち遊び回り、最後は笹流しに参加し、願い事が光の粒子化し天に昇る光景眺めた。