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七夕祭りinパラミタ内海

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七夕祭りinパラミタ内海

リアクション

 浜辺。

「お願い事は……(当然、家内安全、みんなで仲良くなのだ)」
 天禰 薫(あまね・かおる)は短冊にさらさらと迷う事無く書いていた。
 その横では
「ちー」
 ちーの白もこちゃんが短冊に“いたずら”と書いていた。悪戯好きの白もこちゃんらしい願い事である。
「久しぶりに双子の催し物に参加か……短冊に書く願いなど一つしかない(……天禰の傍にずっといる、両思いになりたい)」
 熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)は切実な願い事を短冊に粛々と書いた。
「ピキュキュピキュピ(これからもいもうとやふたごのおにいちゃんたちといっぱいあそべますように)」
 わたげうさぎロボット わたぼちゃん(わたげうさぎろぼっと・わたぼちゃん)は楽しそうに短冊に願い事を書いた。
「願い事と言えば……」
 朝雛 健太(あさひな・けんた)はあっという間に短冊に願い事を書き上げた。

 書き終えた後。
「キュピキュピ(短冊にお願い事を書いたよ)」
「天禰さん見てみて! 短冊書けたよ!」
 わたぼちゃんと健太が効果音が流れそうな勢いでびしっと短冊を薫に見せつけた。
「みんな短冊にお願い事を書いたねえ……わたぼちゃんは可愛いお願いで、朝雛くんは……義賊かギャングになって悪戯三昧! 斬新な願い事だねぇ……」
 薫は二人の願い事をまじまじと見て二人に笑いかけながら感想を言った。
 ここで
「それで天禰はどんな願いを書いたんだ?」
 孝高が薫の願い事を訊ねた。予想は出来ていながら。
「家内安全、みんなで仲良くなのだ」
 薫はしっかりした字で明確に書かれた願い事を読み上げながら皆に見せた。
「……そうか(例によって、か。まぁ、みんなの中には俺も含まれているだろうが……いや、しかし……)」
 孝高は予想通りの願い事に色々と複雑になっていた。
「孝高はどんな願い事を書いたのだ?」
 薫は知りたそうに孝高にせがむが
「悪いが、俺は絶対に見せないぞ」
 孝高は顔を赤くしながらかわした。
 その様子から何を書いたのか察しがよければ分かるはずだが
「そうなのだ? きっと内緒で幸せな願い事なんだねぇ」
 鈍い薫には分からず、無邪気な笑顔を向けるばかり。
「……そうかもしれないな。叶えばもっといいが」
 孝高は薫の言葉に少し笑みを浮かべた。
「そうだねぇ。みんなのお願い叶ったら我も嬉しいのだ」
 薫は皆の顔を見回し、にっこりと笑った。
 この後、四人仲良く短冊を笹に飾った。

 飾り付けを終えた後。
「ところで、天禰さん達の中で話題の双子ってどこ? 俺会ってみたいな」
 祭りの主催者に興味がある健太はきょろりと周囲を見回すがどこにもいない。
「最近、ご無沙汰だから我もご挨拶をしたいのだ」
 薫も同じくきょりと周囲を見回した。
 その時、
「ピキュピキュキュピ(何か大きな音がしたよ)」
 わたぼちゃんは離れた場所から聞こえたけたたましい音に気付いた。

 わたぼちゃんが気付いた先には双子製の花火の被害に遭ったフレンディス達がいた。
「……どうやらまたあいつらやらかしたようだな。捜してとっちめてやる(……大変だな)」
 孝高は騒ぎの様子から犯人の見当を即付け、騒ぎの消火に勤しむ同じ気苦労人のベルクに同情していた。
「へぇ、あれ、例の双子がやったの? 面白いね」
 健太は楽しそうに双子の形跡を眺めていた。
 双子捜索に出ようとする孝高に
「双子ちゃんを捜すなら我も手伝うのだ」
「ピキュキュピ(わたぼも行く。会ってお礼言う)」
「俺も行く、行く。面白そうだし」
 薫、わたぼちゃん、健太もまた加わる。思惑はそれぞれ。
 ともかく四人は双子捜索に出た。あちこち捜した結果、見事に見付ける事が出来た。丁度、たこ焼き屋に立ち寄った後だった。

 たこ焼き屋に立ち寄った後。
「……もう何でいるんだよ」
「監視二人もいたら何にもできねぇじゃん」
 双子は自分を尾行する背後の吹雪と隣のロズを盗み見ては不機嫌な溜息を吐き出す。
 その時、
「!!!」
 横の暗闇からのっそりと現れた生き物に青くなる双子。
「おいおい」
「あいつらも来てるのかよ」
 暗闇で明確に姿が見えないため双子は巨大な物陰故に巨熊化した孝高ととらえ、びびっていた。本当は孝高がけしかけたゴーレムなのだが二人は気付いていない。
「……(さて、お仕置きの時間だ)」
 孝高はいつものように巨熊に獣化し、恐怖を掻き立てるように咆哮を上げつつ暗闇から出現。
「キ、キスミ、やべぇよ」
「に、逃げるぞ、ヒスミ」
 危機を感じた双子は急いで逃亡しようとするが、『麒麟走りの術』で孝高が素速く双子に接近し、両前肢で抱えて抱っこの刑に処した。
「……」
 孝高に刑を執行された双子は抱っこされたままくたりとなっていた。
「……また二人が何かしたのか」
 成り行きを見守っていたロズが孝高に訊ねた。
「あぁ、実は……」
 孝高が花火の事を話した。
「……そうか。丁度、別行動していた時だ。面倒を掛けて……」
 事情を知ったロズは本日の活動を振り返り、やらかす機会があった事を見付けるなり孝高達に謝ろうとする。
「気にするな、いつもの事だ」
 双子仕置き人の孝高は日常の一コマのように言ってのけた。
「孝高の言う通りなのだ。浜辺で双子ちゃんが起きるのを待つのだ。挨拶はそれから」
 薫はにこぉと笑い、浜辺へと誘った。
「……ひとまずこいつらを預かる」
 孝高は双子の尾行役の吹雪に予定を伝えた。相手もまた双子の仕置き人なので。
「……自分は短冊でも飾りながら一休みするであります」
 吹雪は短冊を出して見せながら言い、快諾した。
 そして、浜辺へ向かった。

 浜辺。

「……」
 ようやく目を覚ましゆっくりと上体を起こした双子を一番に迎えたのは
「目を覚ましたか、双子」
 孝高だった。
 続いて
「良かったのだ。改めて双子ちゃん、ロズさん、ご無沙汰しているのだ。お元気だったのだ? 今日は素敵なお祭りをありがとうなのだ」
 薫が挨拶を始めた。
「……見ての通りだよ」
「何でこんな目に遭わせられなきゃなんねぇんだよ」
 双子は不機嫌そうな顔で皆をにらんだ。
「……目を離した隙に迷惑を掛けたと聞いた」
 ロズが双子気絶している間に聞いた事情を口にすると
「……」
 何も反論出来ず、双子はしゅんとなってしまった。
「キュピピキュ、ピキュピキュ(双子のお兄ちゃん、久しぶり、楽しいお祭りを考えてくれてありがとう)」
 わたぼちゃんは笑顔で挨拶と今日のお礼を言った。
「久しぶりとお祭りありがとうと言ってるのだ」
 ピキュウ語が分からない双子のために薫が翻訳し、わたぼちゃんの気持ちを伝えた。
 すると
「おう、久しぶり」
「元気そうだな」
 双子はあっという間に元気になった。
「ちー」
 そんな双子の周りを白もこちゃんが歩き回っていた。
「白もこちゃんじゃん」
「お前も来てたんだな」
 双子が目で白もこちゃんを追いかけていると
「ふーたーご」
 白もこちゃんは双子に話しかけた。
 時には
「ろーずー」
 ロズの周りをちょろちょろしてロズに話しかける。
「……あぁ」
 ロズは穏やかな様子で白もこちゃんを見ていた。
 ここで
「そう言えば双子ちゃんは、朝雛くんとは初めて会うよね? 朝雛くんは明るくていい人なんだけれど……」
 薫が初対面の健太を紹介しようと口を開いた時
「キミが例の双子なんだね。で、そっちが保護者さんだね。俺は朝雛健太だよ、よろしくね! 悪戯が大好きだって聞いたよ。俺も大好きだよ悪戯!」
 健太の元気な声が割って入り、薫の言葉は消されてしまった。健太は双子達三人に握手を求めた。
「お前も好きなのか。へぇ〜」
「同士って事か」
「……よろしく」
 双子は立ち上がりロズと共に健太の握手の申し出に応じた。しかも双子は同じ悪戯好きという事で通じるものでも感じたのか親しみの笑みを向けた。
「折角だから四人で写真撮ろ、写真!」
 健太はにこにことデジカメを取り出すと
「いいぜ」
「よし、撮ろうぜ、ロズも」
「……あぁ」
 調子に乗りまくりの双子は撮る気満々。まさか自分もと思わなかったロズは少し戸惑っていたが、健太の頼みを受け、写真撮影をした。

 写真撮影後。
「いい記念になったよ。ありがとう」
 健太は撮れた写真をデジカメで確認していた。
「おう。あとでくれよ」
「こっちもいい記念になった。よく撮れてるな」
 双子もデジカメを覗き込み、写真を頼んだ。
「いいよ、後で渡すよ♪」
 健太はニカっと笑って約束した。
 その横では
「……同士……お前ら短冊は書いたんだろ、悪戯が成功しますようにとでも」
 孝高は何やら感じたのか双子に願い事の内容を聞いた。
「別に何でもいいだろ」
「干渉されるいわれはないぞ」
 また痛い目にでも遭うと思ったのか怯え混じりの不満を吠えた。
 その様子に
「……大変だな」
 孝高は双子の保護者に同情し、
「……あぁ」
 ロズは溜息で答えた。
 ここで
「双子ちゃん、さっきの続きだけど、朝雛くんは我達でも掴めない部分があるから気をつけてね。我も中学生の頃に色々とハプニングをお見舞いされたから……でも、基本的にはいい人だからね? ね?」
 薫は先程話しきれなかった健太について重要な事を双子に伝えた。
「……ハプニングって」
「掴めない部分って天然か」
 何と無しに嫌な予感よぎる双子。
 その時、
「そうそう、お近づきのしるしにこれあげるよ!」
 健太が持参したギリギリキャンディを投げつけ
「!!!」
 双子が口を開く暇も無く爆破。
 しかし、殺傷能力のない軽い爆発のため
「って、何だよ!!」
「爆発したぞ」
 双子はすぐに復活した。

「どう? 喜んで貰えた?」
 一切悪気のない健太は目をキラキラ輝かせ双子を見るのだった。
 それを見て参るのかと思いきや
「あぁ、俺も何かお礼を……」
「だな」
 さすが悪戯好きなのか双子もごそごそと何かを出そうとするが
「……少しは大人しくした方がいいと思うが」
 ロズが止めに入り、余計な騒ぎを起こさぬよう保護者の役目を果たす。
「何でだよ」
「貰ったからにはこっちもあげないと」
 双子はロズを睨み、文句を垂れた。
 仕上げに
「ほう、つまり足りないという事か……」
 孝高は殺気溢れる鋭い双眸を向け、獣化しようとする。
「いや、足りてます」
「もう結構です」
 察知した双子は青い顔で大人しくなった。
「はぁぁ」
 悪戯が出来ずにがっくりと肩を落として深い溜息を吐いた。
「ピキュウ、ピキュピッピ(お祭りのお礼に冷凍みかんをあげる、一緒に食べよう)」
 わたぼちゃんが持参した冷凍みかんを今日のお祭りのお礼にと差し出した。
「……冷凍みかん」
 ピキュウ語は分からないが動作から何をしようとしているのか分かるが、ヒスミは受け取るよりも先にハロウィンにて孝高の父に冷凍みかんを投げつけられた怖い思い出し、ぞっとしていた。
「ピキュウピキュ(大丈夫だよ)」
 わたぼちゃんは笑顔でそっと直接手渡した。
 双子はそろりとみかんを受け取り
「ありがとな」
「ほんと、優しいよな」
 わたぼちゃんの優しさにお礼を言い、頭を撫で撫でした。
「……ありがとう」
 ロズは冷凍みかんを受け取り礼を言った。
「ピキュウ(どういたしまして)」
 わたぼちゃんは可愛い笑顔で答えた。
「ちー」
 白もこちゃんが現れ、指に双子のかぷっと食いついてきた。
「?」
 双子は疑問符を浮かべて白もこちゃんを見る。
「白もこちゃん、お菓子をおねだりしているのだ」
 すかさず薫が白もこちゃんの行動について解説を入れた。
 それにより白もこちゃんが何を欲しているのか分かった双子は
「おねだりか」
「よし、ほら」
 冷凍みかんをあげた。
「ちー」
 白もこちゃんは冷凍みかんを頬張るなり鳴きながら双子の周りを歩き回った。
「……」
 ロズは冷凍みかんを食べながら和む双子を穏やかに眺めていた。
「双子ちゃんは楽しい子なのだ」
 薫はロズの隣に行き、笑顔を向けた。
「……ありがとう」
 薫の優しい言葉にロズは感謝を口にした。双子と関係ある者として彼らが好意的に思われている事や仲良くして貰っている姿を見るのは何より嬉しいのだ。
 この後、しばらく遊んでから双子達は他の笹を飾り付けに行くのだと薫達を別れた。ちなみに健太は双子とロズに一枚ずつ写真を渡し、四人を喜ばせたという。