リアクション
一方。
「もっと何か色々あると思ったけど、あんまりねぇな」
ヒスミはほとんど何も無い建物内部に明らかにがっかりしていた。自分のいる所だから何か面白い物があるのではと期待していただけに。
「それは多分、ここがロズさんの記憶を元にしているからだよ。情報から考えてロズさんが知っているのは耳で聞いた事だけだと思うから」
聡いジブリールが双子ががっかりする原因を推測してみせた。まさにその通りでこの夢の礎はロズが水槽で聞いたヒスミ老の話が元になっているのだ。
「そうだな。特殊な平行世界が来て脱出したとか言うから水槽を出て見学なんて事出来ねぇもんな……でもなぁ、折角来たのにつまんねぇよな」
キスミはジブリールの推論に納得するも悪戯心が抑えられない。
ここで
「でもどこかにこの世界の悪戯もあるかも」
双子と遊ぶのが目的なジブリールが双子を元気にする一言。
ジブリールの発言に刺激を受けて
「それにちょっとやらかしてもいいよな」
「それいいな。で、お前はどうする?」
双子は悪戯する気満々となる。
キスミに聞かれて
「やり過ぎない程度に二人付き合うよ」
ジブリールは子供らしい無邪気さで答えた。
「よし、遊ぶぞ!」
「現実より思いっきりやるぞ!」
「オレも」
双子とジブリールはあちこち遊び回り、時には悪戯を仕掛けた。ヒスミがやり過ぎて研究室の皆を巻き込む展開になるも慣れた皆は難なく解決した。
その最中ヒスミ老だけは
「自分に悪戯されるとは妙な感じだな」
笑っていた。同じ悪戯好きだけに寛容だが二人で仲良く悪戯する姿に羨望と懐かしさの色に双眸が染まっていた。
■■■
覚醒後。
ロズの夢に来訪しヒスミ老に関わった皆はやはりヒスミ老はヒスミだと思うと同時にこちらの双子とロズがヒスミ老が遭遇した事故を回避し幸せな人生を歩む事が出来ればと願った。
「……夢だがあの人に会えて話す事が出来てよかった」
ロズは夢ではあるが今は亡き製作者と会話が出来た事を静かに喜んだ。たとえ夢のヒスミ老が発した言葉と現実のヒスミ老が発するだろう言葉と違っていたとしても。何せロズの生まれた平行世界はこの世から存在を消されたので姿を見られただけで幸せなのだ。
「この先も一緒にいおう。そして達人を目指そうぜ、キスミ」
「当然だ、ヒスミ。オレ達はいつも一緒さ」
双子は改めて互いの存在を大切に思った。もちろん、悪戯はやめないが。
この後、双子は奢る約束をきちんと果たすもお仕置きされた事を思い出してしばらくの間寝付く事が出来なかったという。
参加者の皆様大変ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。
素敵な夢、賑やかな夢、優しい夢、愉快な夢など様々な夢を楽しんで頂いたりお騒がせな双子と交流して頂きありがとうございました。
何よりロズを気に掛けて頂き彼の夢に来訪して老いたヒスミと交流して頂きありがとうございました。彼が言葉を交わした老いたヒスミは夢であって本物ではありませんが。
最後に少しでも楽しんで頂ければ幸いです。