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夏最後の一日

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夏最後の一日

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 夜、郁乃宅。

「……(今日は郁乃さんのお家にお泊まりしているし普段なかなか聞けない学校での郁乃さんの姿を教えて貰おうっと♪)」
 芦原 揺花(あはら・ゆりあ)はちらりと芦原 郁乃(あはら・いくの)を見やるなり
「あの、郁乃さんって学校ではどうなんですか? ラブレターもらったり、ファンクラブがあったりするんですか?」
 揺花は唐突に郁乃の学校生活に探りを入れる。なぜなら未来人揺花は曾祖母である郁乃とその配偶者の話を小さい頃から聞かされて育ったため強い憧れを抱き慕ってこの世界に来たため何でも知りたいのだ。ちなみに曾お祖母ちゃんと言うと郁乃に怒られる。
「ちょ、揺花……あなたの中のわたしの像ってどんななの?」
 郁乃は自分を憧れに輝く目を引きつった顔で見やった。
「どうって、強くてかわいくって、友達も多いし……きっと人気者なんだろうなぁって……」
 揺花は郁乃の素晴らしい所を列挙する。揺花の目には郁乃は非の打ち所のない憧れの人に写っているようだ。完全に憧れフィルターがかかっている。
「そんなことないよぉ」
 良いところを列挙され褒められた郁乃は嬉しさでテレテレに。
 そこに
「そのとおりです」
 蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)が話に加わった。
「わぁっ、マ、マビノギオンさん!?」
「びっくりしたじゃない!?」
 突然の出現に自分達の話に夢中になっていた揺花と郁乃はびっくり。
「あぁ、それは申し訳ありません。少々、主に会いたく来ました」
 マビノギオンは驚かせた事に断りを入れてから目的を伝えた。
「あぁ、そうなの」
 と郁乃。
「えぇ、そうです。それで学校での主の様子ですが……」
 マビノギオンは再び二人の話に加わり始めた。
「はい、是非聞かせて下さい」
 憧れの人について話が聞く事が出来るとあって揺花は身を乗り出すような勢い。
「では……」
 マビノギオンはそう言うなり
「たしかに人気はあります、しかし……モテるモテない以前の問題ですね」
 意味深な事を口走り始めた。
「それはどういう意味ですか?」
 揺花は小首を傾げながら聞き返した。
 マビノギオンはちらりと郁乃を見てから
「奥様である桃花さんをはじめ、親しい女の子の胸を揉みまくった結果、おっぱいコメンテーターの異名がついちゃいましてね……」
 自分が知る郁乃を話した。
 それは
「え、おっぱいコメンテーター……」
 揺花を少々どん引きさせた。揺花としては郁乃の華麗なる学校生活が聞けると思っていただけに尚更。
 それを見て
「いいじゃん女の子同士だし! あんないいおっぱいあったら揉まないわけいかないでしょ! それにいいっていってくれた娘だけなんだよ」
 郁乃は必死に誤魔化すように弁解を並べ立てる。
 それだけならば何とかなったかもなのに
「ちなみにいっておくが、したことに後悔はない!」
 キリっとした顔で余計な事を口走り
「ただ慕ってくれるこの子に知られたのが恥かしいだけ」
 ちらりと相変わらずどん引きしている揺花を見た。
 さらに追い打ちをかけるように
「一時期は他校の男子生徒までがその鮮やかな手口、テクニックに弟子入りを申し込むほどでしたね……」
 マビノギオンが言葉を重ねた。
 それにより
「う、うわぁ」
 揺花のどん引きが深刻化していく。
 しかし、このままおっぱいな話だけをして揺花をどん引きさせたままにはせず
「話を人気に戻しますが、ともかく事実としてはいろんな意味で同性からの人気は間違いなくあります。奥様でありパートナーの桃花さんがいますからモテる必要はなかったんでしょうけど……」
 マビノギオンなりのフォローを入れ、予想外の話に茫然としている揺花を窺った。
「フフフ……揺花、なにか感想はある?」
 郁乃はニヤリとした笑みを浮かべながら何とも言えぬ顔をしている自分の血を受け継ぐ彼女に訊ねた。
「え、えっ……とぉ……」
 揺花は感想を求められ戸惑いを見せた。どう見ても聞かなきゃ良かったと後悔しているのは明らか。
 その顔を見るなり
「……そういえば、まだ揺花のは揉んだことなかったよ……ねぇ……?」
 郁乃の中で何かが吹っ切れたのかそれとも絶好のタイミングを見付けたのか両手の指をワキワキと絶妙な動きを見せた。
「……ちょ、郁乃さん、あの、ま、まさか……」
 揺花は郁乃が何をしようとしているのか察するなり顔色を変えた。
「……(……あの手の動きは卑猥だからなんとかなりませんかね)」
 郁乃を知るマビノギオンが部外者の構えで眺めているのを見て揺花は
「マビノギオンさん! 郁乃さんを止めてぇ〜!!」
 必死に助けをこうが
「申し訳ありません……そうなった主は誰にも止められないです……」
 マビノギオンがそっと丁寧に手を合わせて部屋を出て
「それではお二人ともごゆっくり……」
 静かにドアを閉めた。
 この後、ドアの奥からは
「ふわぁぁ、や、やめ……い、郁乃さぁぁん」
 揺花の切なげな悩ましげな声が夜通し響いていたとかいないとか。

 後日。
 マビノギオンは自分が帰った後の顛末を聞いて知った。
「……(揺花ちゃんの抵抗を止めたがいいことに、まさかブラウスのボタンを外して中まで主の手が入ってきて……)」
 マビノギオンは聞いた話を胸中でまとめていたが、途中で気付いた。想定外にとんでもない事が起きていたと。
「……(って、主、直に肌に……エロ過ぎです!!)」
 マビノギオンは心の中で声を上げていた。

 一方、可哀想な犠牲者となった揺花というとしばらくの間、
「あ、いたいた」
 郁乃と対面すると
「!?」
 凄まじい速さで腕で胸をカバーしていた。
 その様子を第三者として見るマビノギオンの目には
「……(あのようにカバーをしていますが、どう見ても嫌そうでも、避けてもいませんね)」
 と映っていたという。