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【蒼フロ3周年記念】蒼空・零 ~2009年~

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【蒼フロ3周年記念】蒼空・零 ~2009年~
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リアクション


第1章 13日の魔物 2

「はあぁっ!」
 青年の猛々しい気合いの声が響く。
 続いて起こったのは、魔力を全力で込めた神の審判の激しい稲光と爆発だった。目の前にいたガーゴイルの一群が、文字通り神の裁きを受けたように消滅した。
「にゃはー、涼介君ったらやるわねん」
 青年の攻撃を見ていた娘が、からかうような口調で言った。
「お褒めいただいて光栄……かな?」
 対魔物チームの一員として魔物と戦っていた涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)は、その娘に対して慣れたように答える。
 それから、彼は周りを見回してつぶやいた。
「それにしても、東京のど真ん中に魔物とはね」
「まるで映画みたいな話よね。出演オファーとかくるかしらん?」
 横にいた娘――五十嵐 理沙(いがらし・りさ)が、自分たちの現状を笑いながら言った。
「かもね」
 涼介はそれに対して苦笑を返した。
「ま、冗談はさておき……さっさと倒してしまいましょうか。ね、セレス」
「あら、あなたにしては的確な判断ですね、理沙」
 理沙に話しかけられた隣の女性は、軽い皮肉を交えて笑った。
 理沙のパートナーのセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)である。鮮やかな銀髪の下の優しげな慈母の顔が、理沙をのぞき込むようにして見ていた。
「私だってたまにはちゃんとするのよん。それに――」
 瞬間、理沙は横っ飛びに跳んだ。
 次いで起こったのは、路面の爆発である。いや、違う――それは爆発的な衝撃を生んだ、ガーゴイルの拳だった。巨大な爪が地面をえぐり、アスファルトに爪痕を残していた。
「こういう事態にはふざけてられないのよ!?」
 理沙は龍骨の剣の構えた。
「涼介! セレス! バックアップよろしく!」
「任せといて。クレア、やれるかい?」
 涼介は杖を構えながら、傍にいた娘に訊ねた。
「うん、おにいちゃん!」
 娘は元気よく返事をすると、理沙に続いて前に飛び出た。
 涼介のパートナーのクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)である。彼をお兄ちゃんと慕い、妹と兄のような関係を築いているヴァルキリーだった。
 理沙はガーゴイルの群れに斬り込んでいく。狙うは敵の翼である。地を蹴って跳躍すると、その勢いのまま次々と翼を斬り裂いていった。
 当然、翼を傷つけられたガーゴイルは上手く飛べずにバランスを崩す。
 それに、後方から続いたセレスティアがさらに攻撃を加えた。帯電した刀身が、ガーゴイルを斬ると同時に、その傷口を焼きつける。
 地に落ちたガーゴイルには、涼介とクレアの二人が魔法を放っていた。
 『凍てつく炎』と『稲妻の札』――氷と炎と稲妻という、三つの属性の魔法がガーゴイルたちに次々と襲いかかる。稲妻は敵を貫き、炎は灼熱でその身を焼き尽くし、氷は身体を凍り漬けにする。
 クレアも負けてはいなかった。
 賢騎士の剣――ワイズマン家に古くから伝わるひと振りの剣を巧みに使い、敵を斬り裂いていく。ライトブリンガーや轟雷閃の光り輝く魔力を帯びた刀身は、敵を一匹ずつ確実に仕留めていた。
 ザンッ――と、ガーゴイルを斬り倒したクレアが嬉しそうな笑みで言った。
「へへっ、やったよ、おにいちゃん!」
「ああ、よくやったね。でも気を緩めてちゃダメだよ、クレア。敵はまだいるんだからね」
「もっちろん!」
 クレアは涼介に元気よく答えて、次なる敵に的を移した。
 その様子を見ていた理沙がセレスティアに言う。
「ねえ、やったよ、セレスお姉ちゃん!」
「そうですか。良かったですね」
 セレスティアの答えは実に素っ気なかった。
「……………………しくしく」
「泣くほどのことですか」
 呆れながらため息をつくセレスティア。
 しかしなんのかんのと、戦う二人の息はぴったりと合っていた。