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【ダークサイズ】灼熱の地下迷宮

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【ダークサイズ】灼熱の地下迷宮

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「しかし、マグマイレイザーとの戦いで見落としていたが、こんなにも保存状態が良いとは」

 ダイソウはマグマイレイザーが倒れた先、遺跡とは打って変わって先進的な建物があるフレイムタン・オアシスを見渡す。

(そのためにボクが造られたんだろうね)

 フレイムたんが尻尾を振りながら胸を張る。
 一体何から守ろうとしたのか、フレイムタンは火山帯の遺跡はおろか、他の地域からも隔絶されていた。
 堅固な岩壁で塞がれ、それを開くには「鍵のギフト」フレイムたんが必要であった。
 何故か人懐っこい性格になっていたが、全身が炎で包まれる仕様も、フレイムタン・オアシスを守るためと考えると、つじつまが合っているような気もする。

「これは探索の一択だね。探索探索」

 桐生 円(きりゅう・まどか)が、ダークサイズペンギン部隊こと【DSペンギン】を引き連れ、ダイソウの元へやってくる。

「うむ。ここは調べる価値がありそうだな。ところで円よ。お前が乗っている見慣れぬペンギンは何だ?」

 ダイソウが、円に従う新たなペンギン【ペンギンアヴァターラ・ロケット】を見る。

「でっかいでしょ。なんかギフトだって言い張ってるんだけど」
「こんなギフトもいるのか」
「言い張ってるだけで、まだよく分かんないんだけどね」

 このギフトと思しきペンギンは人間の大人ほどの大きさで、その頭に乗る円と話すには彼女を見上げねばならない。

「ダイソウトウ。アルテミスも。ボクのペンギン部隊の人海戦術で、あ、ペン海戦術で、フレイムタン・オアシスをチェックしとく必要があるよね。一緒にうろうろするよ」
「うむ、だが待て。まずはマグマイレイザーの体内を調べておかねば……」

 と、ダイソウがマグマイレイザーの方を振り返ると、

がぶがぶがぶがぶ……

 既にフレイムたんが、マグマイレイザーの腹にかぶりついている。

(あったよー)

 顔じゅうを血まみれにして、フレイムたんがダイソウを振り返る。

(鍵のギフトのみならず、イレイザーの固い皮膚を噛み切るとは……それは今詮索すべきではないか……)

 ダイソウは超人ハッチャンを呼び、

「総帥。フレイムたんが新たな部品を見つけたようだ」
「ぼ、僕が取り出すんですか……ひー」

 超人ハッチャンが嫌々マグマイレイザーの腹に手を突っ込む。
 中から、金属質の長いパイプや鉄材が発見された。

「すげ、全然溶けたり腐食してるところはないですね。何でできてるんだろ?」

 超人ハッチャンは、マグマイレイザーの血をぬぐいながら、材質に問題ない事を告げる。

「あ! おにーちゃんのお手紙に書いてあるかも」

 ノーンが荷物を探り、ここにはいない御神楽 陽太(みかぐら・ようた)からの書面を取り出す。
 パラミタ横断鉄道の施設を目指して鉄道事業に従事している陽太が、【博識】【用意は整っております】のスキルと経験を生かしたアドバイス。

「マグマイレイザーの身体の中に入ったままで悪くなってないなら、『ちょーたいねつごーきん』の一種だろうって書いてあるよ」
「超耐熱合金か」

 クロム、ニッケル、コバルト、チタンなど複数の金属を合成し、耐高温はもちろん、耐食、耐酸化にも優れた合成金属の事だ。
 すでに地球上でも実用化されている技術であり、ニルヴァーナの超耐熱合金なら、さらに強靭な金属であると思われる。
 ノーンの報告に向日葵が慌てる。

「ノーンちゃん! ダイソウトウのやつに情報あげちゃダメじゃないー!」
「あれ。えへへ」
「えへへじゃ……なーい!」

 と、向日葵は叱りながらノーンを抱きしめている。

「はぁ、ふぅ……材料も見つかったことだし、ダイソウトウ。リニアモーターカーの組み立ては、遺跡でやった方がいいと思うわ」

 アルテミスの加護のおかげで、熱はあらかた遮断できているはずだが、マグマ溜まりという特殊な環境が持つ、圧、と言えばいいのか、イリス・クェイン(いりす・くぇいん)は苦手な暑さで発汗と顔色がよろしくない。
 十六夜 白夜(いざよい・はくや)がさすがにイリスを心配し、

「おぬし、大丈夫か? 暑いのは苦手じゃから、フレイムタンには入りたくないと言っておったのに」
「い、一応材料や部品がどんなものか確認したかったのよ……」
「ねーねー、イリスー。どこに運ぶー?」

 鉄材を引きずりながら、クラウン・フェイス(くらうん・ふぇいす)元気そうだ。

「それにしても……」

 ダイソウが周りを見ると、グラキエスやら東雲やらがぐでぐでになっていて、ラルクの応急処置の世話になっている。
 ダイソウはラルクが処置を終えたのを見、

「我がダークサイズは、暑さに弱い者が多いな……」
「まー仕方ねえな。どうする? フレイムタン・オアシスも調べてえんだろ?」
「ダイソウトウさま」
「どうした、アルテミス」
「実は……ご飯の量に不安があるのです。拠点からの補給を、そろそろ視野に入れねば」
「そうか、よし。では、フレイムタン・オアシスを調査する者は残れ。アルテミスの加護の影響下で調査をするぞ。リニア組立班は、部品を遺跡に持ち帰り、組立作業に入るのだ。体調の優れぬ者を『亀川』とフレイムたんで連れて帰ってやってくれ。また、手の空いた者は遺跡までの護衛を頼む。ニルヴァーナ捜索隊から食料の支援が届いているらしいので、それをオアシスまで運搬してもらいたい。」
「え? 閣下、今何て?」

 最後の一言にひっかかった超人ハッチャンが、ダイソウに聞きなおす。

「それをオアシスまで運搬してもらいたい」
「いや、その前」
「……ご飯の量に不安があるのです」
「いや、そのだいぶ後! てかそれ、アルテミスの言葉でしょ。ニルヴァーナ捜索隊の支援って何すか」
「ブラッディ・ディバインとの戦闘から、やはり我々は認知されていたようでな。ニルヴァーナにいる間は、多少支援をしてくれるらしいのだ」
「何すか、その新情報!」
「支援と言っても緊急避難程度の水と食料だ。基本的には我々で確保せねばならんからな」
「それでも大事なことじゃないですかー!」

 と、クロスがダイソウを【ピコハン】でぶんなぐるのも仕方がない。
 ともあれ、部品と資材を遺跡に運搬することになった。
 リリとハデスがマグマイレイザーの超耐熱の皮に目をつけ、オリュンポスの方のアルテミスが、カリバーンで皮膚を切りだしている。
 カリバーンがハサミ状になっていたのが、ここで役に立っている。
 マグマイレイザーの皮を敷き、その上に資材を乗せれば楽に運搬もできる。
 ダイソウやアルテミスを始め、フレイムタン・オアシスの調査組を残し、リニア組立班は再度遺跡を目指して出発した。