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ダークサイズ「蒼空の城ラピュマル」計画・後編

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ダークサイズ「蒼空の城ラピュマル」計画・後編

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2.北カナン 砂漠地帯

 北カナンの砂漠地帯は、いつものように雲ひとつない厳しい日照りで、厳しい環境なのは変わりない。当然そんな所を好き好んで通過する者はゼロと言ってよく、見渡す限りの砂丘である。

「レキよ……ちょっと休憩せぬか……?」

 そんな中、涼しい顔をしてレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が歩くのを、ミア・マハ(みあ・まは)が賢人の杖にもたれながら追いすがる。

「え〜? パラミタ内海までは一気に行こうって約束したじゃん。ほらがんばってよ、ミア」
「しかしのう、何故徒歩なのじゃ……歩き旅なぞ、魔女には向かぬ」
「だって楽しいじゃん♪」

 ダークサイズがエリュシオンにいるという噂を聞き、観光がてらダークサイズの様子を見物しようと旅をする二人。
 スポーツ万能で体力のあるレキに比べ、体も小さくほっそりしたミアにはわざわざ徒歩でエリュシオンを目指すのは酷だ。
 ミアはとうとうその場にへたり込んでしまう。
 シャンバラとエリュシオンの敵対関係を知り、また動きやすいようにとパーカーにスパッツ、風よけ用のポンチョを羽織っているレキ。
 彼女はポンチョをミアにかけてあげながら、

「弱ったなぁ〜」

 と、頭をかく。
 ミアはポンチョを引き寄せて日差しを防ぎながら、

「せめて小型飛空艇を用意してくれてもよいじゃろう……」
「だめだめ。そんなことだから、体がおっきくならないんだよっ」

 レキはミアを見下ろしながら胸を張る。
 ミアはレキを見上げるが、レキの大きすぎる胸のせいで顔が見えないのに腹を立てる。

「関係ないじゃろう! そのポーズは当てつけかっ! この胸めぇ〜!」
「あんもう、ちょっとぉ〜。元気あるじゃん〜!」

 ミアは腹いせにレキの胸に手を伸ばし、いつものように揉みしだく。
 もはやただ単に戯れているだけだが、小型飛空艇オイレを走らせる長原 淳二(ながはら・じゅんじ)には、遠目に暴漢が襲っているように見えたようで、

「何をしているんですっ!」

 と、飛空艇から飛び降り、ミアを引きはがす。

「やめなさい!」
「やかましい! この胸がっ、この胸がっ!」
「む、胸?」

 淳二が事情を聞くと、ミアがごねていただけだと分かる。
 ミアは渡りに船と、

「ちょうどよい! そなたの飛空艇に乗せてくれんかのぉ?」

 と、淳二を見上げておねだりを始める。
 淳二は慌てて手を振り、

「いや、申し訳ないが、俺急いでいるんです。エリュシオンに向かっているので……」
「おお! なおさら良いではないか。わらわと目的地は一緒じゃ。旅は道ずれと言うからのう」

 と、ミアはそれとなく淳二の飛空艇に乗り込もうとする。

「ちょっと待ってください!」
「よいではないか! よいではないかー!」

 今度は淳二とミアが絡み始めたところに、西の方から車のエンジン音が聞こえてくる。
 レキがその方を向くと、砂埃を上げてキャンピングカーのような大型の車両が近づいてくるのが見える。

「ん? あれは……」

 移動喫茶エニグマ(仮)の移動販売車の運転席から、椿 椎名(つばき・しいな)は目を細める。

「おいソーマ、あれ何だ?」

 椎名が指さす方向に、ソーマ・クォックス(そーま・くぉっくす)が双眼鏡を向ける。

「おおっ、マスター。人発見〜」

 砂漠だらけで退屈そうにしていたソーマは、嬉しそうに声をあげて椎名を見る。

「いや、それは分かってる。ここはカナンだぜ? 敵か味方かを聞いてんだよ」
「んっとね〜。何か見たことある人!」

 ソーマの漠然とした返事に、椎名はやれやれとため息をつくが、敵ではないようだし、もしかしたらダークサイズかもしれないと思い、レキたちの前に車を止める。

「あれっ」
「あんたは」

 椎名が車から降りると同時に、声を上げる椎名と淳二。
 二人ともカリペロニアにある大総統の館のガーディアンである。
 直接話したことはないが、顔は知っている、という感じ。
 ダークサイズがここを通っているということは、目的は同じ、と二人はピンときて、

『キャノン姉妹から連絡が?』

 と二人同時に尋ねる。
 そのシンクロとキャノン姉妹という単語に、レキもピンとくる。

「あ、なーんだ。キミたちダークサイズだったんだね!」
「ん? あんたもそうだったのですか?」

 淳二がレキに尋ねる。

「うーん、正確には違うけど、カリペロニアの『レキ温泉』レキ・フォートアウフとはボクのことだよっ」

 と、レキは胸を張る。
 なるほど、道理で見おぼえがあると三人は頷き、そうと分かれば一緒に行こうと言うことになる。
 三人の同意があった直後、車から椿 アイン(つばき・あいん)が顔を出す。

「椎名くん、車両の中は片付けた。とりあえずあと二人は乗れるはずだよ」

 人見知りのアインは、仮面で淳二達に顔を見られないようにしながら、椎名に伝える。

「おお! ありがたい。持つべきものはダークサイズ哉! ふぅー、涼しいのう!」

 と、いの一番にエニグマに乗り込むミア。
 スペースを広げたと言っても、移動喫茶店エニグマには店の商品や調理器具、食器が詰め込まれてある。

「構いません。俺は自分の飛空艇で並走しますよ」

 と、淳二が飛空艇に戻ろうとする。
 そこにアインが、

「私は先にエリュシオンに入り、活動しやすいように情報を仕入れておきたいわ。できればあなたの飛空艇を借りたいんだけど……」

 と、わざわざ椎名経由で依頼する。
 淳二は、

「まあ、大丈夫ですが……直接頼んでくれればいいのに」

 と、頭をかく。

「ははは、悪いな。アインは恥ずかしがり屋がひどくてな」

 そう言って、椎名はアインの頭をぽんぽんする。

「待ってぇ〜! 私も一緒に連れてってぇ〜!」

 淳二たちが振り返ると、ワイバーンに乗って手をぴょこぴょこ振る人の姿が。

「よかったぁ。誰もいないから道合ってるか不安で……」

 ワイバーンから降り立って、椎名達の元へ駆け寄る咲夜 由宇(さくや・ゆう)アレン・フェリクス(あれん・ふぇりくす)

「ダークサイズの人たちですよねぇ。ダイソーさんが捕まっちゃったって」
「ああ、そうだが……オレの車はこれ以上乗れねえなぁ」
「大丈夫ですぅ。アレンくんのワイバーンでついていきますですぅ」
「やーれやれ。オレは由宇のアシスタントですよっと……」

 ふてくされているのか性格なのか、アレンはあくびを一つして、ワイバーンに戻っていく。
 ということで、アインが先だって飛空艇を飛ばしていき、椎名達はエニグマに乗り込んで、急ぎエリュシオンを目指して出発した。