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【空京万博】オラの村が世界一!『オラコン』開催!

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第七章  “シャンバラの現在”パビリオン


【悪の秘密結社オリュンポス名物 怪人のお面】

「い、いかん……このままでは……」

 ブースに設けられた特設ステージの裏で、ドクター・ハデス(どくたー・はです)は、大量に積み上がったお面の山を前に歯噛みしていた。
 ハデスの売り物は、自分が幹部を務める悪の秘密結社『オリュンポス』所属の怪人、『タコ男』、『イカ男』、『バッタ男』のお面。
 このお面を売るために、ヒーローショーならぬ怪人ショーを企画したのだが、午前中の第1回公演がものの見事にコケてしまったのである。

「や、やはり、出演者が3人しかいなかったのがいけなかったのか……」

 この1回目の公演では、幹部役(というか、そのもの)の自分と、妹の高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)が正義のヒーロー『パラミタレッド』、メイドロボのヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)がバッタ男の役で出演した。
 といっても、自分はただ『行け!』とか『やれ!』とか言っているだけで全く殺陣(たて)はしないので、実質動いていたのは2人のみであるる。

(本当はパラミタファイブもレッドだけではなく5人全員出したかったし、怪人も3人全員出したかったんだが……。そうは言っても、人員の都合がな……)

 オリュンポスの構成員は、ハデス、咲耶、ヘスティアの3人以外には、戦闘員すらいない。

「いやそれよりも、お面を数作るのに予算をかけ過ぎて、スーツを作る予算が全く残らなかったのが原因か?」

 パラミタレッドはただ単に咲耶が紅い【ビキニアーマー】を着ただけだったし、バッタ男に至っては、ヘスティアがメイド服の上からばバッタ男のお面を被っただけだった。

「いやいや。やはり『怪人が人質を取って、手出しの出来ないパラミタレッドを一方的に嬲り物にする』というシナリオがマズかったか?」

 ハデスの書いた台本では、パラミタレッドは、出てきて早々バッタ男に観客を人質に取られ、レッドが本当に何一つ出来ない内に叩きのめしてしまうというコトになっていた。 

(いやでもアレは、人質に取った小僧に泣かれたヘスティアが、子供を開放してしまって人質になっていなかったような……)

「いやいやいや!そんな上っ面のコトはどうでもいい!やはり、本来ここで魅せるべきアクションが、どーしよーもなかったからではないか!」 
 バッタ男を演じたヘスティアは、『ただの』メイドロボ。炊事洗濯掃除プログラムは搭載されているが、武器制御プログラムなどは全く搭載していない。
 【ワイヤークロー】でレッドに襲いかかったのはいいものの、ワイヤーがまるで操作できずに、観客席に突き刺さるはステージを突き破るわ自分のマントを切り裂くわで、挙句に危うく咲耶のブラをひっぺがす所だったのである。

(アレは我が妹ながら、思わず色々と熱くなった瞬間だった……。咲耶のヤツ、ああいう時だけ通常の3倍の反応速度を出しおって……)

 結局、ワイヤークローの暴走が元でショーは中止。
『安全対策を徹底する』という念書を提出した上で、ようやく警備本部からは午後の公演を認められたものの、事前申請を全くせずに配っていたオリュンポスへの入会申込書の存在に気づかれてしまい、配った分を全て回収された挙句、配布も禁止されてしまった。

「フン……。なんだ。こうして改めて洗い出してみれば、どれも大した問題ではないではないか。一体何故、これ程お面が売れなかったのだ!」

「問題しかないわー、ボッケー!!」
「オブゥ!!」

 イキナリ物凄い力で後頭部を叩かれ、顔面からテーブルにめり込むハデス。

「い、イテテテ……。な、なんだ?イキナリ……」

 鼻血を押さえながら身体を起こしたハデスの背中に、黒い影が差す。
 ハデスが殺気を感じて振り返ると、ソコには、巨大なハリセンを手に仁王立ちし、悪鬼のような形相でハデスを睨みつける、メガネの女子高生の姿があった。

「な、何者だキサマ……。は!ま、まさか!我がオリュンポスの壊滅を企むヒーロー共の差し向けた刺客か!」
「こんなクズみたいな秘密結社に、ダレが刺客を送り込むかぁ!いやそれ以前に、ドコの世界に刺客を送るヒーローがいる!」

『スパァン、スバァーン!』

 と小気味良い音を立ててハリセンが宙を舞う。

「で、では、な゛に゛も゛の゛……」

 鼻血に加えて口から流れ出る血を押さえながら、辛うじてそれだけ言うハデス。

「私の名は森下 冬希(もりした・ふゆき)。蒼空学園報道部部長にして、世界で二番目にスーパー戦隊を愛する女よ」
「も、もりしたふゆき……?ま、まさか!」
「あら、知っているようね」

 まるで、悪の女幹部のような言い回しをする冬希。

「今年、スーパー戦隊第45作を記念して地球のローカル局で制作された『スーパー戦隊クイズ王選手権』で、準グランプリに輝いたという、あの森下冬希か!」
「そうよ!その私の前で、良くもこんなどーしよーもないヒーローショーをやってくれたわね!こんだけヒドいヒーローショーは、5年前に中国で見たご当地ヒーローのショー以来よ!!」

 その中国のご当地ヒーローとやらがどれほどヒドイものなのか、ハデスはものすごく気になったが、下手に口を挟むとまたどんな目に遭うかわからないので、黙っていることにした。 
 そのハデスの沈黙を『ぐうの音もでない』と勘違いしたのか、冬希は大きくため息を吐いて話を続ける。

「それで、どうするの?」
「ど、『どうするの』とは?」
「やるんでしょ、午後のヒーローショー」
「あ、あぁ」
「あのままじゃ、出来ないわよ。午後のヒーローショー」
「いや〜。取り敢えず咲耶とヘスティアの役を変えて、咲耶にバッタ男をやらせようかと−−」
「それじゃ、お面はまるで売れないわね。せいぜい、物好きな特撮オタクが2、3個買っていくのが関の山よ」
「た、確かに……。午前のショーで売れたのは、3つだった……」
「ソレ見なさい。表面化した問題に正面から向き合わず、無視するか、場当たり的な対策しかしない結果ジリ貧化していくのは、視聴率が取れずに打ち切りになる番組の、典型的なパターンよ」
「な、ならば!ならばどうしたらいい!」
「……私に任せなさい。とびきり素晴らしいステージにしてあげる。それに、アナタの抱えるこの不良在庫も!」

『バァン!』と勢い良くお面の山を叩く冬希。お面の山が、ガラガラと崩れていく。

「全て、売り切ってあげるわ。ただし、私のする事に一切口出ししないコト。いいわね?」
「い、いいだろう……」

 最早、どっちが悪の大幹部が分からない2人であった。


「大変!みんな、パラミタレッドがピンチよ!さぁみんな『ガンバレ〜』って、大きな声でパラミタレッドを応援して!」

「「「ガンバレー!」」」

 突貫工事で修理の完了した特設ステージ。その上では森下が、ノリノリで司会のおねぇさんを演じている。


「ハッハッハ!その程度の声では『パラミタンパワー』は溜まらんダコ〜!」
「今の内に、パラミタレッドにトドメを刺すイカ〜!」
「トドメは俺様にヤラせるバッタよ〜」
「何を言う、トドメを刺すのは我輩ダコ!」
「そうはイカないわ。手柄を立てて、ハデス様に褒めて頂くのは、このアタシよ!」
「俺様バッタ!」
「我輩ダコ!」
「アタシイカ!」

 などとお約束の仲間割れで絶好のチャンスを失する怪人を演じているのは、神狩 討魔、なずな、マーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)の3人だ。

 タコとイカの討魔となずなは、森下に頼まれて仕方なく(なずなはだいぶノリノリだったが)。
 バッタのマーゼンは、『シツジくん』の頭を脱いで一休みしていた所を、「私には、わかります!アナタには『もっと人に見られたい!スーツアクターとして認められたい!』という隠れた願望があります!」と森下に説き伏せられ、連れて来られたのだった。

 お面は一緒(一応イカ女だけは、女の子というコトで、お面にハデなピンクのリボンが付けてある)だが、着ているのは【パワードインナー】から余計な機構を取り払った上で、赤、白、緑に塗った物である。
 
「だ、ダメ……。パラミタンパワーが足りない……」
「パラミタレッド!」

 レッドを演じているのは、元の台本通り咲耶。衣装も、元のビキニアーマーのままである。
 ヘスティアは、さっきの失敗を生かして、人質役を演じている。

「みんな!みんなの応援の声がなくちゃ、パラミタレッドは超変身出来ないわ!お願い、パラミタンパワーを、みんなのありったけの元気をパラミタレッドに届けて!さぁ、もっと大きな声で!いくよ、せーの!!」

「「「「「ガンバレー!」」」」」

「な、なにィ!」
「こ、この光は!」
「ま、まぶしいバッタ!」

 舞台のレッドに紅い光が降り注ぎ、怪人たちが思わずひるむ。
 応援の声に押され、残った力を振り絞って、立ち上がるレッド。

「みんな、有難う!みんなの応援で、レッドにパラミタンパワーが溜まったわ!!」
「わたし、戦います!パラミタと地球、2つの世界を守るため。そして、この会場のみんなを守るために!」

「超変身!!」

 レッドの掛け声と共に、ステージがスモークに包まれる。
 そして、煙の後から現れたのは−−。

「スーパーパラミタレッド!!」

 ビキニアーマーとは打って変わって、戦隊ヒーローの王道を行くレッドの登場に、観客から歓声が上がる。 
 そのレッドのスーツは、八雲から借りたご当地ヒーローの着ぐるみを、森下監修の元月美 あゆみ(つきみ・あゆみ)が超特急で改造した物。
 スーツを着ているのは、うっかりお客としてやって来た所を森下に拉致された、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)である。

「す、スーパーパラミタレッドだと……!」

 激しく動揺するハデス。
 迫真の演技……と言いたいところだが、ハデスは書き直された台本の中身を全く知らないので、本気で驚いているだけだったりする。 

「おっと。驚くのはまだ早いぜ!」
「だ、誰だ!」

 上からの声に、空を見上げるハデス。

「「「「とおっ!」」」」

 宙に浮かぶ飛空艇から、4つの影が飛び降りる。

「あ、アナタたちは!」

 突然の援軍の登場に、驚くレッド。
 観客も、5メートル以上の高さからのヒーローの登場に、完全に度肝を抜かれている。
 だがもっと驚いているのは、観客の中にチラホラと存在するヒーローマニアたちだ。

「あ、あれ!バイフーガじゃん!」
「もしかして、『勇者』はゴールドか?」
「あのブラックは、新人だな」
「ま、魔法少女は……?」
「「そりゃ、ファイアーだろ!」」

 魔鎧 リトルスノー(まがい・りとるすのー)を見にまとったクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)はブラック。
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)はゴールド。
 やはりプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)を着た紫月 唯斗(しづき・ゆいと)はシルバー。
 そして『紅の魔法少女 ダブルド・ルビー』にメタモルフォーゼした永倉 八重(ながくら・やえ)が、ファイアー。

 さすがに作成が間に合わなかったので、着ぐるみではなくて自前の衣装(?)であるが、むしろこちらのほうが圧倒的に格好良かったりする。

「さぁレッド!俺たちの手で、オリュンポスからこの蒼い空を守るんだ!」
「ハイ!」

「パラミタレッド!」
「パラミタブラック!」
「パラミタゴールド!」
「パラミタシルバー!」
「パラミタファイアー!」

 5人の見栄と共に、巻き起こる爆発。
 このあたりの演出は、全てクロセルの監修だが、色も火薬の量もタイミングも、全てバッチリである。

「蒼空(そら)に輝け、5つの勇気!蒼空戦隊、パラミタファイブ!」


「おのれ!そんな中途ハンパな色の戦隊に、我々オリュンポスが敗れるものか!」
「お面の怪人に、言われたくありません!」
「ウルサイ!やれぃ!」
「タコー!」
「イカー!」
「バッター!」

 この後、地球のヒーローショーを遙かに上回る迫力で繰り広げられたアクションに、観客は大興奮。
 大好評の内に、ショーは幕を閉じた。

 ショーの後には『お面を買ってくれた人には、素顔の怪人とヒーローたちとの握手会』が開かれ大盛況。
 さらに、森下の指示でシグノー イグゼーベン(しぐのー・いぐぜーべん)が一部始終を録画していたショーのDVD発売が発表されるに及び、ブースには予約券を求める長蛇の列が出来上がった。

「どう?確かにお面全部、売り切ったわよ」
「あ、あぁ……。スゴイ、スゴすぎる……。完全に、私の完敗だ……」

『フン!』と胸をそびやかす森下に、ガックリと膝をつくハデス。

「に、兄さんしっかり!ホラ、いい機会だから、悪の秘密結社なんてもうやめて、ね!」
「いや、これで私は目が覚めた!これからは、本当の悪の秘密結社を目指し、さらに精進する!」

 咲耶の手を振り払い、決然と立ち上がるハデス。その目が、真っ赤に燃えている。

「そうですよ!」
「古人曰く、『光ある所に影あり。影ある所に光あり』です」
「ヒーローが輝くには、まず悪が輝かなくっちゃダメなんだ!」

 いつの間にか、ヒーローと怪人を務めたメンバーが、ソコに立っている。

「有難う、森下冬希、そしてパラミタファイブ!私は間違っていた!次はお面なんかじゃなくて、ちゃんとした自前の怪人を連れて来る!」
「そうです、その意気ですよ!」
「エェ!なんでそうなるの!」

 咲耶の悲鳴を他所に、ガッシリと手を握り合う『戦友』たち。今ここに、善悪を超えた友情が芽生えていた。

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【悪の秘密結社オリュンポス名物 怪人のお面+DVD】

【基本値】
 5,6,4=15

【修正値】
《MC》(運営)ドクター・ハデス(どくたー・はです)
:2×1=2

《LC》(運営)高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)ヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)(客)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)
:1×3=3

《IC》怪人3人衆、パラミタレッド:+1
《MB》設定+1、接客+1、適性(自由設定)+1=3

 2+3+1+3=9
 9+15=24

【判定結果】
 大成功!:PP+2

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