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ユールの祭日

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ユールの祭日
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●●● 赤壁

ここまでで三国志に起源を持つ英霊のうち、張飛に夏侯淵、魯粛と、三国それぞれ将を失う形である。

「魯粛殿も倒れられたか……周瑜 公瑾(しゅうゆ・こうきん)、いざ、参る!」

呉の大都督、周瑜が前に進み出た。
英霊となったおりに女の身となったが、過去は過去の話である。

ただ一点、胸が大きくなったのが邪魔らしいが。

「公瑾ちゃん、頑張れ〜♪
 それにしても、どうせなら私も関羽と戦ってみたかったな〜」

パートナーの秋月 葵(あきづき・あおい)はノリノリで応援している。
普段は着ない中国風の衣装を着ているが、これは周瑜の妻であった小喬のコスプレだ。

しかし敵は姿を見せない。

「臆したか! ならば私の勝ちでよいな!」
そう叫ぶと、いずこからか矢が飛んできた。

どうやら敵は隠れているらしい。
「……待て、これは諸葛亮 孔明(しょかつりょう・こうめい)の罠だ!」

ジャーンジャーン!(銅鑼の音)

「いかに魏が強大であったとはいえ、蜀との同盟は今にして思えば誤りであった。
 この一戦、赤壁の戦いにて再び決着をつけよう!」

周瑜と孔明、いずれにとっても因縁深い決戦の地、赤壁。
シャンバラ大宮殿の壁が、赤壁の断崖に変異していく。

周瑜の魂に焼き付いた情景が、現実(リアリティ)を侵食していったのだ。

オーッ! という雄叫びが上がる。
周囲を取り囲む呉の兵、その数三万が、船とともに姿を現わす。

兵たちは先に矢が放たれた方に向かって、一斉に矢を射かけた。
しかし反応はまったくない。

「むむっ、討ち取ったか……?
 まて、これは十万本の矢を集めたときの計略では!?
 これは諸葛亮 孔明(しょかつりょう・こうめい)の罠だ!」

ジャーンジャーン!(銅鑼の音)

「早まったか……しまった! 孔明は風を起こす術を使えるぞ!
 船に乗っていては不利か!?
 これは諸葛亮 孔明(しょかつりょう・こうめい)の罠だ!」

ジャーンジャーン!(銅鑼の音)

仕方がないので呉の兵士は慌てて船を岸につけ、孔明を探しにでていった。

「……待て、陸に上がった曹操は関羽に襲われたぞ!
 これも諸葛亮 孔明(しょかつりょう・こうめい)の罠か!」

ジャーンジャーン!(銅鑼の音)

「天は周瑜を英霊としながら、なぜ諸葛亮をも英霊としたのだ!」
とここまで叫んだところで、周瑜はあることに気付く。

ここまで飛んできたのはわずかに矢が一本。
風はそよとも吹かないし、兵が関羽に襲われたという報告もない。

「計ったな、孔明!
 敢えて疑心暗鬼を生じさせるのが貴公の策か!」
「見破られては仕方ない」

森の中から孔明が姿を現した。

「なまじ貴公の策を研究したために、却って罠に嵌っていた。
 船と三万の兵がいながら、ここまで貴公を近寄らせてしまったのです。
 重大な失策だ。
 しかしこの距離まで出てきたのは貴方の失策でもある」

言い終わるやいなや、周瑜は腰の刀を抜いて斬りかかった。
『破滅の刃』というスキルである。
武勇においては一分の利があると踏んでのことであった。
ところがあっと悲鳴を上げたのは周瑜である。

「なんの罠もしかけずに、この私が顔を見せたとお思いか」

『防衛計画』という実になんの取り柄もないスキルであった。
しかし同時に孔明も倒れる。呉の兵士が矢を射たからである。


「だいじょうぶ、公瑾ちゃん!?」
小喬もとい葵は周瑜のもとに駆け寄った。

と、そこで一番最初の矢に、矢文がついていたのに気がついた。
開けてみるとこのようなことがしたためてあった。

「この戦いで勝ったなら、二喬(英霊の小喬と葵)を我が物にしたいと考えております」

挑発であったのだろうが、不発に終わった。