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ユールの祭日

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ユールの祭日
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●●● 幕間:クォ・ヴァディス(どちらにいかれるのですか)

これで残るは6名にまで絞られた。

珠代は食堂で、その男を見つけた。
男のテーブルには酒瓶と杯があり、杯には葡萄酒が注がれていた。

珠代は男に近寄り、相席の許可も求めずに腰掛ける。

「その葡萄酒、少しいただけないかしら?」
珠代は男にせがむ。

「いいとも。
 だが未成年に飲酒を勧めると、今の律法では罰せられるがな」
男はそう答え、柔和な笑みを浮かべた。

珠代は小さなペットボトルを差し出した。

「風情がないな。瓶はないのかね、瓶は」
と言いながらも、男は葡萄酒をペットボトルに注ぐ。
瓶のなかの葡萄酒は、不思議と減る気配がない。

ペットボトルに蓋をすると、珠代は満面の笑みで
「親切なおじさん、ありがとう!」
といい、その場を立ち去った。

男は自分の杯を再び手にしたが、妙な気がした。
こんなに真新しかっただろうか?
しかし彼にとって、そんなことはどうでもいいことだった。

「あんなもの、言えばいくらでもくれてやったのに」


雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)ベファーナ・ディ・カルボーネ(べふぁーな・でぃかるぼーね)は、そろそろ会場を去ろうとしていた。
今日はちょうどクリスマス、空京のイルミネーションはさぞや綺麗だろう。
ふたりはそんな空京の街並みを見物していくつもりだったのだ。

「待ってー! メリー・クリスマス!」
珠代はそういうと、ペットボトルをベファーナに放り投げた。

ベファーナはそれをキャッチし、怪訝な顔をした。
「今日はユールの祭日じゃなかったのかな?
 それはさておき、これはなんですかねぇ」
「プレゼント。“血”よ」

ベファーナは思わず吹き出した。
魔女ベファーナを名乗ってはいるが、その実態は吸血鬼だ。
今日この戦いに参加した理由のひとつは、英霊の血が舐めてみたいというのがあった。

ベファーナはペットボトルを開けてみるが、アルコールの臭いがするばかりだ。
血じゃないな、酒だ。ワインだ。

真意は図りかねたが、せっかくの貰い物である。
「メリー・クリスマス。ありがたく戴いておきますよ」