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リアクション
●●● 獣魂
英霊でもないのに大会参加を決めてきたサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)をみて、白砂 司(しらすな・つかさ)は呆れ顔だ。
「英霊でもないのに参加してどうする?」
「ここで武勲をたてれば私こそが英雄です!」
拳聖ともなると、功名心のひとつも出てくるものである。
「その意気や良し! 褒美にわしの宝剣を授けようぞ!」
「へ? 誰ですあなた? まさか私の対戦相手?」
「違う、わしはこの大会で戦うつもりはない。
よく聞け、わしの名は天津 麻羅(あまつ・まら)、またの名を天目一箇神(あめのまひとつのかみ)という!
神代にあっては鍛冶の神としてあまたの刀剣、矛戟を鍛え、鏡や鐸を造ったものじゃ。
わけても天叢雲剣は一番の傑作であった。
英霊の身となった今ではかつての力は衰え、当時のような剣を打つこともできなくなった。
しかし今このときばかりは話しが別じゃ、神代の力が戻っておる。
わしは天叢雲剣を超える剣を鍛えようと思う。
おそらくは最後の機会となるじゃろうて」
麻羅の話を黙って聞いていたサクラコは、どうしたものかと思いながらも質問を投げてみた。
「ありがたいお話ですが、どうして私なんです?
剣の扱いならもっと向いている英霊が大勢いると思うのですが」
「もっともな疑問じゃ。だが英霊というのも不便なものでな。
英霊はその栄光と固く結びついておる。
高名な英霊であれば、その武具もまた英霊本人の一部となって、分かたれ難いものなのじゃ。
関羽の青龍偃月刀、アーサー王のエクスカリバー、近藤勇の虎徹、こうしたものは武具もまた英霊といってよい。
となればわしの剣を託せるのは、そうした過去に縛られておらぬ者でなければならん」
「ははあ、なるほど。
そういう事情ならお借りしましょう」
「いやまて、剣はまだ出来ておらぬ。
相手を見て相応しい剣を打とうと思ってな、しばし待つがよいぞ。
緋雨、ゆくぞ」
麻羅はパートナーの水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)を連れてその場を去っていった。
「お前は拳で戦うんじゃないのか?」
麻羅が去っていったのを見て、司が尋ねた。
「そのつもりなんですけどね、『拳より強いのは刀と銃』という言葉もありますし。
私としては蛇除けのお守りとしていいかなと」
天叢雲剣は草薙剣とも言い、何かと蛇に縁深い剣である。
また天目一箇神と同一視される一目連は龍神であるという。
神話に強く蛇を苦手とするサクラコとしては、蛇を避ける魔除けのつもりで預かっておくことにしたのだった。
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