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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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 ■ みんなで初詣 ■
 
 
 
 新しい年の始まりには、多くの人が初詣に繰り出す。
 手水舎で痺れるほど冷たい水で手や口を清め、参拝をする。
 普段は神社から離れていても、初詣だけは欠かさないという人は多いだろう。
 
「何故わざわざこの寒い中……」
 東洋魔術学科生であることもあって、非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)は神社の類に関して興味が無い訳ではない。
 けれど、何もこんな寒い時に神社に来なくても良さそうなものだ、とは思う。
「まだ歩くんですか?」
 足下の玉砂利が歩きにくいとぼやく近遠に、【分御魂】 天之御中主大神(わけみたま・あめのみなかのぬしのかみ)が笑った。
「まだまだこれからじゃ。神への道、心して歩くがよいぞ」
「人は多いし何より寒いし……もっと暖かくなってからでも良いんじゃありませんか?」
 近遠がかじかんだ手をこすると、今度は【分御魂】 神産巣日大神(わけみたま・かみむすびのかみ)が説いた。
「この人出ははそれだけ神に新年の挨拶をしようという人が多い証拠よ。貴殿も新年ぐらいは神の前に頭を垂れるのも良いと思うわ」
 何を言ってもさらりと返される。
 これでは勝ち目がないと近遠が黙り込むと、じゃあ、と【分御魂】 高御産巣日大神(わけみたま・たかみむすびのかみ)が話し出した。
「おぬしの気が紛れるように、我がこの神社の祭神について話してやろう」
「この神社の祭神というと?」
「そなた、それも知らずに参ろうと言うのかえ?」
 天之御中主大神に言われ、近遠は仕方ないでしょう、と答える。
「ただ神社に初詣に行こうとだけ言われて、引っ張ってこられたんですから」
「この神社に祀られておるのは、オモイカネじゃ」
「知識の神だから、貴殿にはぴったりの初詣よね」
 天之御中主大神も神産巣日大神も、その辺りにはさすがに詳しい。
「オモイカネというのは、思金神、思兼神とも書かれる我の子だ」
 さらりと言われ、近遠はえっと高御産巣日大神の顔を見直した。
「名前の通り、オモイカネは思慮を兼ね備える神、思想や思考、知恵の神だな。天照大神が岩戸に隠れた際、外に出すための知恵を出した話は有名だ。天孫降臨では番能邇邇芸命に随行して地に下りた。ああ、この天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命は、我の娘、萬幡豊秋津師比売命の子であるから、我から見れば孫に子が随行したことになるな」
 寒い中の参拝には意義を見いだせない近遠だが、この手の話なら興味はある。
 あれこれと質問を差し挟みながら高御産巣日大神の話に聞き入るうち、気づけば拝殿まで来ていた。
「ここに高御産巣日大神の子が祀られているのですね……」
 なんだか不思議な気分だと思いながら、静謐な空気の中、近遠は3人と並んで参拝するのだった。