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空に架けた橋

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空に架けた橋

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 ミーティングルームに残っている者の中から、ファビオが声をかけたのは、ズィギルを気にかけていた閃崎 静麻(せんざき・しずま)青葉 旭(あおば・あきら)紫月 唯斗(しづき・ゆいと)アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)の4人だった。
「ズィギル・ブラトリズは、体内に埋め込まれた機械で操られているらしい。彼を操っている機械を破壊しに行く」
 ファビオは自らの身分を明かし、4人にそう説明をした。
 機械は民間の施設に存在しているということ。
 この作戦は寺院に気取られてはならない、非常に機密性の高い作戦であること。
 この作戦の結果により、犠牲者が出る可能性があること。
 少なくても、ズィギルを殺すことに繋がるということ。
 遂行後も、世に知られてはならない、闇の作戦であることを話していく。
 それでも受けてくれるか? というファビオの問いに。
「まあ、これはあまり多くの人間には伝えれないわな」
 と、静麻は頷き。
「汚れ仕事か……。やるさ。俺らがやんなきゃ他の奴がやる羽目になっちまうしな」
 唯斗は、ちらりと他の品行方正な契約者達を見ながら、言った。
「やらせてもらう。あの方が生きていたら、やっていただろうからな」
 旭は、亡くなったとある人物の薫陶を受けたものとして、彼女がやっただろう事を代行する意味で、承諾した。
「んー」
 アキラはしばし考えてから。
「やる」
 と、はっきりと返事をした。
 誰かを『守る』ためなら、迷ったりはしないと思いながら。
「実際の破壊自体は主に別のグループが行うことになる。俺達が行うことは、隠蔽とサポートだ」
「資料はどれだけある?」
「ネットで確認できる、地図と施設の外観だけだ」
 ファビオは場所と、施設の大きさをメンバーたちに説明する。
「見取り図がないのなら、それに近い物を用意した方がいいな。だが、研究所への非合法なアクセスはまずい」
 静麻は、研究所を建設、もしくは改築した施工会社のデータバンクから、研究所の図面を探して、手に入れる方法を打ちだす。
「潜入までの足は、トラックやありふれたバンってところだな」
 裏業者に根回しして、足がつかないような確保を検討する。
「時間は深夜。潜入中には外部からノートパソコンを使って警備システムにハッキング。勿論慎重に慎重を重ねてな」
 実行班が回避不能な、防犯カメラや各種センサーの欺瞞、研究所内部の監視などの計画を打ち出していく。
「研究所の全システムの掌握も試みるが、終了後にはパソコンは粉砕処分。データ類も残すつもりはない。それでいいか?」
「データに関しては、この会話さえも一切記録に残さないでくれ。その他の作戦に関しては、決行まで時間が差し迫っていることと、官憲の捜査が入った際に明るみになる作戦には出来ないため、やめておいた方がいいと思う」
 警備システムへのハッキングは、一般人に確実に気づかれる作戦だ。施設側は、事後に被害届を出すだろう。
 いかに気を付けていても、警察に尻尾を掴まれてしまう可能性がある。警察にも契約者や特殊な能力を持ったものはいるのだから。
「外部の警備会社に警備を委託してるんじゃないか? パートナーに頼んで、そちらの方に探りを入れてみようか……」
 言いながら、アキラは考えていく。
「あとは出来るだけ、早いうちに研究所の近くまで行って、近づきすぎない場所から調査をしておいた方がいいよな」
 職員の出社退社時間。
 荷物の搬入は一日にどのくらいか。
 夜、明かりがついている場所は、どの部屋か。
「そうだね。調査していることを気取られないように頼むよ。外部の警備会社へは、やはり足がつく可能性があるんで、接触しないでほしい」
「隠蔽工作はどうする?」
 アキラが尋ねた。
「そっちは、俺が動こう。潜入も想定してな」
 唯斗の言葉に、ファビオは頷く。
「無関係な一般の方には、事件を疑うことなく、事故と思われるような方法がいい。寺院のメンバーには機械が壊されたことは解ってしまうが、官憲を呼ぶようなことはないはずだ」
 知られては都合の悪いことがあるだろうから。
「あと、念のため言っておくけれど、作戦を漏らしてはいけないのは、親兄弟、パートナーに対してもだから。遂行後も未来永劫に、だよ?」
 作戦遂行に必要と思われる人物がいるのなら、先に教えて欲しいとファビオは皆に言う。
 申告により、メンバーのパートナーである獅子神 刹那(ししがみ・せつな)山野 にゃん子(やまの・にゃんこ)ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)が作戦に加わることになった。
 さらに、アキラはアリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)にも、調査を手伝わせると話したが、ファビオに却下された。そして、作戦に加わってくれるのなら機密性について真剣に考えて、認識を強くもって当たって欲しいと言われたのだった。