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新ジェイダス杯第1回

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新ジェイダス杯第1回

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
『さあ、他の選手も続々と人形を拾っていきます』
「ええっと、なんでこんな人形を取らなきゃなんないんだろ。まあ、ルールだから仕方ないけどさあ」
 ちょっと嫌々ながら、カレン・クレスティアが新人形を拾うと、身体にたすき掛けにしていたゴムバンドで背中に背負い込んで固定した。
「懐かしいな。ここはやはり愛着のある古きジェイダス様のお姿を愛でるのが筋というものだよねぇ」
 佐々木弥十郎が、あえてごてごての旧ジェイダス人形を拾うと、ローブで背中にくくりつけた。ロープで縛られたジェイダス人形は、ちょっと絵面が妖しい。
「さっさと逃げ切りますよ。早く人形を拾ってください!」
「あっ、はいはい」
 チラチラと後ろを気にするカチェア・ニムロッドに怒鳴られて、緋山政敏があわてて新人形を拾いあげる。
「みんな邪魔だよ!」
 各選手が人形を拾っているところへ、皆川陽が突っ込んできた。さっと旧ジェイダス人形を拾いあげる。
「ああ、ジェイダス様お慕い申しておりますぅ」
 ジェイダス人形にスリスリと頬ずりしながら、皆川陽が恍惚として言った。
「テディ、お願いだよぉ」
「任せてくれ」
 皆川陽に言われて、テディ・アルタヴィスタが空飛ぶ箒パロットの上にすっくと立ちあがった。この細い足場の上で、驚異的なバランスを発揮する。
「なんだ、ヤバい!」
 その様子を見た緋山政敏が真っ先に回避運動を取った。
破滅よ、逆巻け!
 ヴァルザドーンを掲げ持ったテディ・アルタヴィスタが、目にも留まらぬ速さでそれを振り回した。強烈な打ち下ろしと共に放たれた剣圧が、嵐のように周囲へと広がっていく。剣圧が海面に激突し、白い波飛沫が周囲へと飛び散った。
「うおお、なんのぉ!」
 剣圧にあおられた清泉北都のオーニソプターが木の葉のようにゆられてひっくり返った。機体にベルトで身体を固定していた二人が、逆さ吊りになる。
「このまま行くよぉ」
 超感覚を全開にして機体のバランスを保ちながら、清泉北都が逆さのままブイの上に立つ新ジェイダス人形に突っ込んでいった。
「取りましたでございます」
 大きく両手を広げてだきしめるようにして新ジェイダス人形を確保したクナイ・アヤシが叫んだ。
 そのまま、まだ吹き荒れる剣圧に翻弄されつつも、清泉北都が機体を反転させて元へと戻す。
『清泉北都選手、華麗なアクロバット飛行で、無事に新ジェイダス人形をゲットしました』
『うむ。華麗な飛行、みごとだ』
『ジェイダス様も感心しておられます。さあ、他の選手は……』
 シャレード・ムーンの言葉で、カメラが他の選手の状況をマルチでスクリーンに映し出した。
『――隠れろ!』
 突然頭の中に響いた佐々木八雲の声に、佐々木弥十郎は反射的にカレン・クレスティアの陰へと飛び込んだ。
「ちょっと、いきなり攻撃なんて……はうぅ〜!」
 避けきれないカレン・クレスティアがあわてるが、突然その周囲が淡い光でつつまれた。空飛ぶ箒パロットの防衛機能が働いて、飛んできた剣圧をそのまま元の場所へと弾き返す。
「た、助かったあ」
 ほっと、カレン・クレスティアが胸をなで下ろす。
『――今だ』
「分かってるって、うるさい」
 佐々木八雲の声に言い返すと、佐々木弥十郎がカレン・クレスティアの陰から飛び出しいった。
「なに、戻ってきただって!?」
 カレン・クレスティアに反射された剣圧を感じて、テディ・アルタヴィスタが防御態勢を取った。だが、こちらも空飛ぶ箒パロットの防御機能が働いて、再び剣圧を弾き返す。
『なんと、パロット同士のピンポンです。これは珍しい。はたして、今度はどうでる、カレン・クレスティア選手!』
「えっ、えっ、なんでまた戻ってくるのよ!」
 信じられないとばかりに、カレン・クレスティアがあわてて回避運動を取った。それでも、剣圧にあおられてクルクルと回転しながらあわや海に墜落しそうになる。箒の先が海の水を掃きあげたところで、かろうじて回転が止まった。
 
    ★    ★    ★
 
『おおっと、第四グループは大波乱です。皆川陽選手、いきなりライバルの排除に打って出ました。各選手、なんとか凌いだようですが、カレン・クレスティア選手、体勢を崩しすぎていったん止まってしまいました。この遅れは痛いか』
「さあ、これは序盤から大荒れだ。どうなる、どうなる!」
 屋台そばの観客席で、マイク代わりに握りしめた麩菓子を勢い余って粉々に握り潰してしまいながら、ウォーレン・シュトロンが叫んだ。やんと、ノーン・クリスタリアが飛び散ってきた破片を払い落とす。
「もう、静かにしてほしいんだもん」
 うるさいと、ルファン・グルーガにひっついたイリア・ヘラーがウォーレン・シュトロンを睨みつけた。
「そうじゃぞ。少しは、落ち着いて観戦するのじゃ」
 周りに迷惑だと、ルファン・グルーガもウォーレン・シュトロンをたしなめた。
 
    ★    ★    ★
 
『さあ、続く集団は、前の集団の混乱には巻き込まれなかったものの、こちらも大変なことになっています』
「あれが、新人形ねぇ」
 ホークアイでターゲットにロックオンした師王アスカが、一直線に新ジェイダス人形にむかっていった。美しいお顔に傷をつけては大変と、慎重に引き上げようとする。
「隙あり!」
 そこに近づいたクリスティー・モーガンが、すかさずしびれ粉を振りまいた。
きゃあっ! けほけほ……」
 直撃をくらった師王アスカが思わず人形を落としてしまう。
「キャッチしました」
 それを下で待ち受けていたクリスティー・モーガンがパラミタイルカの上でキャッチした。
「早く、他の人形を……」
 手をのばそうとするが果たせず、痺れた身体で新人形の一つにぶつかって海に落としてしまった師王アスカが、その後を追ってコースぎりぎりまで漂うようにして移動していく。
「わたくしたちもいきますわよ」
 パラミタイルカに呼びかけると、エリシア・ボックも新ジェイダス人形をゲットした。
「おのれ、遅れたのだ。何人たりとも、我の前は走らせぬ!」
 まだ人形エリアの手前にいるフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が、手近なエリシア・ボックに狙いを定めた。
『おおっと、後続のフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』選手、エリシア・ボック選手を闇でつつんだ! さらに、ソア・ウェンボリス選手も、サンダーブラストの詠唱に入っている。またも大波乱か!』
「この私に魔法で挑もうだなどと、甘ちゃんです!」
 歴戦の経験を生かしたエリシア・ボックが、新ジェイダス人形をかかえたままパラミタイルカで水中に逃れた。ウォータブリージングリングで呼吸を確保し、そのまま潜航する。
「さあ、みんなどっか行ってください。幾千の雷よ、降り注げ!
 ソア・ウェンボリスが、サンダーブラストの詠唱を終える。ジェイダス人形付近にいた者たちに、雷光が降り注いだ。
「何を……」
 ちょうど手近な新ジェイダス人形を拾っていた天城一輝が、あわてて耐電フィールドを展開してそれを凌いだ。
 無事人形をゲットして散開していたクリスティー・モーガンが、女王の加護のおかげか雷光を避けてからコース中央に復帰する。落とした人形を追ってコースぎりぎりに移動していた師王アスカは、幸か不幸かサンダーブラストの範囲外にいてかろうじて無事だった。だが、痺れは消えず、大幅に遅れることになる。