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お風呂ライフ

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お風呂ライフ

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 警備員達の活躍で続々と捕獲されるノゾキ達。
 別働隊として温泉に迫っていたアルフとエールヴァントにも、各々に焦りの色が見える。
「状況は不利だぜ、エルヴァ!」
「わかってるなら今すぐやめろ……て、もう謝って済む一線は超えてるか」
 アルフは巨猿をけしかけ、最後の作戦に向かう。
「いいか!? お前ら!」
 後続の残り少ない巨猿部隊にアルフが呼びかける。
「最初に覗くのは俺たちだ!! 覗く順番には、大佐がどうだこうだは関係ないぜ!」
「「「うおおおおぉぉ!!」」」
「続けェェ!!」

 
「表が騒がしいようじゃのう……」
 安徳天皇は、非常用のロウソクを灯した施設内で、風呂上がりの牛乳を飲んでいた。先程まで玲が隣にいたのだが、彼女は軽食を買いに行っており今はいない。
「あ、貴女は──と、言仁命。言仁命やないですか!?」
「うん? わらわの事か?」
「えぇ」
 安徳天皇に声をかけたのは、裕輝であった。神話が好きな裕輝は、生きている間は「天皇」とは呼ばないという事を知っていた。言仁(ときひと)とは安徳天皇の諱(いみな)である。
「のう、裕輝。あの者達は何をしているのじゃ?」
「NOZOKIです」
 神話好きな裕輝は安徳天皇には敬意を払っている。そのため地が関西弁な彼の口調に標準語が混ざるのはお察し頂きたい。
「……なんじゃ、それは?」
「NOZOKI、とは……難しい問題です。しかし、考えれば、別の場所や地点で騒ぎや何かを起こし、その間に多分本命であるかもしれん違う所でNOZOKUんや……と」
「じゃが、よう捕まってるみたいじゃな。そのノゾキとやらは?」
 安徳天皇は牛乳瓶を傍らに置き、裕輝を見つめる。
「完璧な作戦にはならなんだな?」
 裕輝は、源平合戦で入水した安徳天皇がもし生存していたら、どんな歴史になっていただろうと考える。真偽は定かではないにしろ、彼女は既に裕輝自身がノゾキ作戦の立案者である事を見抜いているような口調である。
「完璧……なんて言葉は人間らしい言葉やけど、完璧なんて言葉は実際にはあらへん。それに何処まで近づけるっちゅーかが問題なんですわ……」
 裕輝はそれだけ言うと立ち上がる。
「何処へ行くのじゃ?」
「立案したオレだけ逃げるわけにはいきまへんのや」
「NOZOKIに?」
 裕輝は安徳天皇に頭を下げ、静かに去っていく。
「ふむ……」
「安徳様、お待たせしました!」
 玲が手に一杯の軽食類を持って戻ってくる。
「食堂が混んでて……安徳様? 何かお考えですか?」
「……玲よ。おぬしに聞きたいことがある」
「はい?」
「わらわはノゾキの対象にまだ値せぬのじゃろうか?」
「………………え?」
 玲は、彼女の人生の中でワースト3に入る難しき返事に直面するのであった。

「…………」
 薄暗い事務室の中で、ルカルカは、目の前の少女の問いかけに頭を悩ませていた。目の前の非常用のロウソクの炎が彼女の溜息の数だけゆっくりと揺らめいている。
「話はわかったわ。セーラさん、だっけ?」
「はい」
 水着の上にグレーのパーカーを羽織った金髪ボブの少女が頷く。
「貴方の話が本当なら、スパリゾートアトラス……まさかそんな場所に建設されていたなんてね」
 ルカルカがチラリとセーラを見る。
「それで、貴方のお兄さんが、動いた……と?」
「兄は……変態です」
「見ればわかるわ」
「食費を切り詰め、お小遣いで薄い本を買い漁っているだけならそれで良かったんです。でも、兄は、自然保護やストリーキング集会に出ていく内に、無駄に生まれ持ったそのカリスマを発揮していったんです」
「……」
 ルカルカは椅子から腰を上げる。
「でも、今すぐ施設を明け渡せ、ていう貴方の要請にはお答えできそうにないわね」
「……何故?」
「何故って? 決まってるじゃない」
 窓から、電波塔によじ昇っていた巨猿を見つめていたルカルカが振り返る。
「ノゾキに温泉を取られてたまるもんですか!!」
 断固たるルカルカの決意に、セーラが気圧される。
「オゥフ……なんて迫力……」