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■□■5■□■ 救出成功! セレスティアーナ!

像賊たちが大混乱の中、
高い場所から、
百合園女学院の牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)が現れた。

「か弱い女子を人質に取る悪逆非道の賊どもめ、
この牛皮消アルコリアの刃は許しはしない!
百合園の朋友、セレスティアーナは返して貰う」

「あ、アルコリアだと!?」

「ウオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
クライ・ハヴォックとともに、
次の瞬間、ちぎのたくらみとメタモルブローチで、
アルコリアはふりふりエプロンドレス少女になった。

「ということでー……まいりまーす☆」

センチネルが、両断されて、崩れ落ちた。

「アルコリア! 今がチャンス釘バット!」
魔鎧のラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)が、
服の下で、メタモルブローチがしゃべってるフリをする。

クェイルのライフルが空中で分解させられ、
次の瞬間、本体の腕がもがれる。

「パラミタの平和を乱す奴は許さない釘バット!」

マスコットキャラ風ということで、
変な語尾でしゃべっているのはご愛嬌である。


あなたの隣に釘バット
あなたの頭に釘バット

ステキなブローチ型マスコット
メタモンちゃんブローチ
50Gで販売中☆



こうして、アルコリアに、
センチネルやクェイルがなぎ倒されていくのを、
シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)は、撮影していた。

「視聴率のためか……。
しかし、あまりやる気にならないな」
空飛ぶ箒シュヴァルベに乗ったシーマは、つまらなそうにつぶやく。
しかし、
アルコリアが像賊を蹂躙する映像のおかげで、視聴率はうなぎのぼりだったのだが。

他方、もう一人のパートナー、
ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)は。

「イエス、マイロード・アルコリア様!
かような雑魚ども、
アルコリア様のお手を煩わすにもおよびませんわ!」

サンダーバードを召喚し、密集してアルコリアに突撃しようとしていたセンチネルに突っ込ませる。


「まさに現代のウェヌスにしてアレス。
マイロード・牛皮消アルコリア様は大きくても小さくても
美しくて可愛いですわ!
百合園の気高く戦う一輪の花!
マイロードはいつだって最高ですわ!!」


ナコトが全力で宣伝をする。

「アルコリアだ!」
「アルコリアが来たぞ!」
「ヤドカリにティラノサウルスに、畜生、どうなっていやがる!」
「ロイヤルガードもあんなにいるし、もうおしまいだー!」
「馬鹿野郎、あきらめずに戦うんだ!」

「だんだん気の毒になってきたな。だが、もう観念しろ」
契約者たちの猛攻でパニックになった像賊を前に、
樹月 刀真(きづき・とうま)が言っていると。

葦原明倫館の緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が、
もう一機いたイーグリットと一騎打ちする。
脚や腕の間接を狙い、
派手に破壊することで、盛り上げも狙う。

透乃の様子は、まさに、人智を超えた鬼神のごとき動きで、
イーグリットを解体していく。

「うわあああああああっ!」
パイロットが慌てふためくも、
透乃は、笑顔のままだ。

「もう、地祇だけをちぎる私じゃないんだよ!」
透乃は、地に落ちたイーグリットに全力の一撃を放つ。
「死闘に燃える桃火の拳、烈火裏逝拳!」
爆音とともに、イーグリットは燃え上がった。

パートナーの
緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)
月美 芽美(つきみ・めいみ)は、
残っていたセンチネルをなぎ倒す。
「さすがですね、透乃ちゃん。
私たちも、アルコリアさんたちに負けていられませんよ!」
陽子が言い、
「煌く刃は空を翔る流れ星、翔羽流星墜!」
血の付いたノコギリの落下切りで、芽美が攻撃する。

センチネルの兜が、ノコギリでまっぷたつになる。
「やっぱり、旧式イコンは所詮は旧式イコンですね」
「そうね。本当は人間がよかったんだけど、
まあ、イコンでもいいわ」

陽子の言葉に、芽美は、しれっと不穏当なコメントをする。
バートリ・エルジェーベトの英霊である、芽美は、
名を変えた今であっても、
かつての残虐性を有しているのだ。

「あ、あんなところに地祇が!
しかも、ざんすかちゃんとつぁんだちゃん!
地祇のトップクラスの子達じゃない!」
「ぎゃあああ、何しやがるざんす!?」
「けっきょくちぎって投げてるじゃないかー!?」
透乃がざんすかとつぁんだを捕えて、ちぎって投げる。

「えー、だって、そこに地祇がいたら、ちぎらないとね!」

飛んで行ったざんすかは、
巨大化に失敗した桐生 円(きりゅう・まどか)に激突した。
「ガフッ!?」
「コ、コメディじゃないのが敗因に違いない……」
ざんすかにぶつかられ、円は謎の言葉を残して気絶した。

「あらあら、まどかちゃん、あんなとこにいたんですねー」
そちらを見ていたアルコリアは、
ちょうど飛んできたつぁんだにすごくいい笑顔で向き直った。
「え?」
わけもわからず硬直した次の瞬間、つぁんだは地面に叩き落とされた。


★☆★

そうしていると、
【バウンティハンター貧乏】こと、
蒼空学園の十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)が、
やはり生身でイコンに挑む。
パートナーの
ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)
リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)は、
宵一の援護に回る。

「Bonjour,ヒーロー。聞こえますか?」
蒼空学園の雪住 六花(ゆきすみ・ろっか)が、
シェヘラザード・『千夜一夜物語』(しぇへらざーど・せんやいちやものがたり)の空撮する様子を、
モニタールームから見て語りかける。
「ヒーローか。たまには悪くないな」
宵一がつぶやく。
「作戦は先ほど確認した通り。
戦闘の最中、万が一にもスポンサー広告に傷が付くことのないよう気をつけてください。
そしてトドメは、番組を盛り上げるためにも派手にお願いしますね♪」
「ああ、善処するよ」
そう、やりとりをする、六花と宵一だが。


「このやろおおおおおおおおお!
ビルごとつぶしてやる!」
やけになった像賊が、クェイルのライフルでビルを乱射する。

「うおっ!?
何やってるんだ!?」

「さすが、
【バウンティハンター貧乏】の称号は伊達ではないですね」
六花が肩をすくめ。
「ここ再開発地区では、激しい、激しい攻防が続いていますわ!
この熱気、テレビの前の皆さまに伝わっていますかしら。
あっ、あの構えは『則天去私』ですわ!」
シェヘラザードが実況する。


賞金首に困っている! 誰か助けて!
そんな時は、バウンティハンター貧乏の出番です!
お気軽にお電話ください


広告が大写しになり、
宵一の全力攻撃が、
クェイルを吹き飛ばす。

「うおおおおおおおおおおおおお!?」

「リーダー、早く逃げるでふ!」
リイムが、宵一に呼びかけ、
ヨルディアが、小型飛空艇ヴォルケーノで、飛び散るビルの破片を破壊する。

「し、死ぬかと思った……」
なんとか倒壊するビルから逃げた宵一だが、カメラに気づくと、
わざと怪我で流れた血を無造作に顔に塗って、
渋い顔で振り向く。

「お困りの時は、
いつでも、俺を呼んでくれ!」

「一部始終、流れてしまいましたけど、やりましたわー!」
「Good job! ヒーロー!」
シェヘラザードが拍手し、
六花はモニタールームで微笑むのだった。


★☆★


「この野郎!
こうなったら!」
自暴自棄になった像賊が、混乱で契約者の傍を離れたセレスティアーナに銃を突きつける。

すると、その腕を、誰かが狙撃した。

「ひええええっ!?」
セレスティアーナは、あわてて飛びすさる。

倒れた像賊の上には、トランプのジョーカーのカードが一枚舞い降りてきた。
それは、
姿を見せない謎のヒーロー、「インベイシオン」こと、
蒼空学園の白星 切札(しらほし・きりふだ)がいたことの証明であった。

セレスティアーナの無事を確認し、
インベイシオンは視聴者の前には現れずに、そっと姿を消す。

(人を助けるというのが、ヒーローのすべきことです。
それが、私の大切な人に伝わればいいのですが)
インベイシオンは、
テレビの前にいるであろう、家族のことを思っていた。

あのジョーカーを見た、切札の大切な人に、
そのメッセージは、きっと届いたに違いない。


そこに、天御柱学院の桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)が、
生身の像賊を蹴散らす。

「カーディナルブレイド!!」
相手が硬直している隙をついて、一気に畳み掛ける。

「やはり、イコンに比べれば、
並の契約者は歯ごたえがないな」
煉は、ここに駆けつける前に、数体のイコンも、撃破していたのだ。

「だが、
セレスティアーナをこれ以上、危険にはあわせられないな。
行くぞ!」

そして、
氷雪比翼でセレスティアーナの元に急行すると、抱き上げる。

「うわあああ、何をする!?」
「こら、暴れるなって」
そのまま、セレスティアーナをお姫様抱っこして、
煉は、安全な場所へと飛んでいった。

「はなせー!」
「おいおい、落ちちゃうだろ」
セレスティアーナにポカポカ殴られる煉だが、
平然と、地面に着地する。

「セレスティアーナ様!」
酒杜 陽一(さかもり・よういち)と、
理子が、その現場にかけつける。

陽一が、わたげうさぎに広告を貼り、
理子の周りで展開する。
花の映像により、理子の姿を美しく彩ったのだった。

「リコにばかり良い格好はさせないわよ!
みんな私に続けーっ」
酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)が、
パラミタペンギンやミイラ男たちと一緒に、像賊のイコンに突撃して蹴散らされる。

「ひぃーっ。た、助けて二人ともー!」
「ああ、もう、何してるんだか」
理子が頭を抱え、
陽一がイコンを素手で殴って倒す。
「理子様に危害を加えようとする者、
セレスティアーナ様に狼藉を働く者!
断じて許しはしない!」

「わ、私が本気を出したら理子の活躍の機会を奪っちゃうからね!
目立てる様に御膳立てしてあげるから、感謝しなさいよっ」
美由子が、強がりを言う。
「はいはい、無事でよかったわね」
理子は苦笑する。

「……セレスティアーナもね」
「リコ!」
理子は、駆け寄ってくるセレスティアーナを抱きしめたのだった。

その周りを、わたげうさぎが舞い、
先ほどとは違う種類の花と、花火の映像で、セレスティアーナ救出の達成感を演出する。

(よかった。理子様も、セレスティアーナ様もご無事で)
理子の影武者として、
その護衛を旨とする、陽一にとって、二人の笑顔は、何よりの物であった。

(このお姿、高根沢家の皆様へもお届けできればいいのだが)
今回のテレビ中継で、
理子の家族へのメッセージも伝わるといい。
そう考えていた陽一は、大切な人の笑顔を見て、
そう思うのであった。