蒼空学園

リアクション

　
　
　
「さて、一戦目から素晴らしいバトルが見られましたね」
「マジカル☆カナさんの早着替えには驚かされました」

　お互いのパフォーマンスが終わり、舞台に上がったときと同じように司会者に挟まれる形で一同が並ぶ。

「それではいよいよ運命の投票タイムです！　マジカル☆カナさんだと思った方は赤を。ラブゲイザーfeat.千尋だと思った方は白を。もちろん両方でも構いません。それでは皆様、お手持ちのボタンをどうぞ！」

　スクリーンが切り替わり、集計結果を示すグラフの数値がぐんぐん上がっていく。
　そして、一戦目の勝者は決まった。

「歌菜」
　残念ながら控え室まではいけないのでバックステージの入口付近までこっそり出てきてくれた歌菜に、羽純は声をかける。

「羽純くん……えへへ、負けちゃった」

　悔しそうに少しだけ目を赤くしている歌菜の頭を羽純はなでた。
　結果がどうであれ、歌菜の歌は間違いなく羽純を幸せにした。
　彼にはそれだけで十分だった。


「さてさて、さっそく第二戦目のバトル！　今回は可愛い子たちの登場ですよ！」

　卜部のアナウンスを聞いて、客席で源　鉄心（みなもと・てっしん）は落ち着かない様子でパートナーたちの出番をまっていた。
　ウズミに促され登場したのは、リボンやレースがふんだんに使われたふりふりな衣装を身にまとったミーナ・リンドバーグ（みーな・りんどばーぐ）、うさみみとしっぽをつけたティー・ティー（てぃー・てぃー）に同じようにねこみみとしっぽをつけたイコナ・ユア・クックブック（いこな・ゆあくっくぶっく）。そしてにんじんの着ぐるみをきたラブ・リトル（らぶ・りとる）の姿があった。

　思えば、朝から嫌な予感がしていた。コア・ハーティオン（こあ・はーてぃおん）は開演前の出来事を思い返しながら客席の後方で頭を抱えた。
　『蒼空学園の近所の八百屋さん、『八百八』の店長『八百田　菜夫（やおた　なお）（４９）』に頼まれて、『八百田店長お手製のニンジンキグルミ』を着てニンジン販促用のイベントに参加し、さらにそのまま着替える間もなくライブフェスタに参加をした』なんて超がつくほどの説明的な連絡をもらった後だったので、まさかと思ったのだが、本当にそのままだとは。
　にんじんに手と足がそのまま生えたようなシュールな着ぐるみをきてカメラに向かってピースをするラブ。身長が30センチしかないので、少し大きめのにんじんが本当に動いてるように見える。

「第二戦目のバトルは三組同時決戦です。一戦目との判定とは違い、一組ずつ皆様に判定して頂きます。それではさっそく開始しましょう！　ライブフェスタ二戦目、レッツバトル！」

　ステージの中、さらに特設されたテーブルのようなミニセットの上で、ラブはにんじん衣装でくるくると回りだす。


　――キュ・キュ・キュ〜トでキャロット　貴方の愛で　美味しくなっちゃう
　ビタミンＡ　カロテンが豊富なの　あたしの力でお肌もキラキラ
　血色だって良くなっちゃう


　最初こそ心配していたコアだったが、ラブの歌を聞いているうちにそんな心配は要らなかったようだと安心した。前方の席を見ても、いい声で歌うラブにみんな魅了されているようだ。


　――でも　ちょっとの雑草にも負けちゃうくらい　か弱いか弱い私なの
　だけど貴方が愛してくれるなら　頑張って　最高のあたしになるわ


　テンポのよい曲に合わせてラブが小さいマイクを持って特設ステージの特設ステージを端から端まで駆け回る。スクリーンにラブの笑顔が映し出されるため、遠くの席の方でも安心だ。よ〜く目を凝らしてみると『八百八』とにんじんとほぼ同じ色で刺繍された店名が浮かんで見える。
　にんじん衣装も最初こそ強烈だったものの、徐々に慣れてきた観客たちはコスプレ衣装のラブの可愛さに気付いたらしい。


　――キュ・キュ・キュ〜トでキャロット　貴方の愛で　美味しくなっちゃう
　あたしを　好きでいてね
　貴方のために　最高のあたしになるから


　音楽が鳴り終わり、可愛くポーズを決めると観客席のあちこちから野太い歓声が聞こえてきた。笑顔で客席に手を振りながら特設ステージごと奥へと運ばれていった。

　休むまもなく場内に鳴り響く音楽。続いて登場したのはミーナだ。アップテンポな曲でダンスを踊る。結い上げた髪が何度も跳ねるが、綺麗な髪よりも華麗なステップの方へ目が行く。
　彼女と音楽が止まったとき、会場内は拍手で包まれた。