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リアクション
■ 異国の月の光の下の ■
「ここがニルヴァーナですか……」
回廊を通ってニルヴァーナにやってきた御神楽 陽太(みかぐら・ようた)は、興味深く周囲を見渡した。
普段はパラミタで鉄道事業に奔走している為、ニルヴァーナの地を訪れるのはこれが初めてだ。
月冴祭が開催されている創世学園付近は、現在開発の真っ最中だ。
そんな中に不意に竹林と池のある風景が広がるのは、不思議な眺めだった。
たいむちゃんの搗いた月うさぎの餅を貰ってから、陽太は妻の御神楽 環菜(みかぐら・かんな)と共に竹林を歩いた。
「日本を思わせる風流な景色ですね」
竹林の小径には小さな灯が邪魔にならない程度に置かれ、所々に東屋も設えられている。
夜風に揺れる竹と、見え隠れする満月。
歩いているだけで心が静かになる風景だ。
「そうね。あなたにしては風流な催しを見付けてきたのね。心が落ち着くわ」
「それは良かったです」
陽太は心からそう思った。
日頃、環菜は鉄道事業に入れ込むあまり、なかなか休みを取らない。たまには心と身体を休めて欲しいと心配していただけに、環菜がこうして月を愛でる時間を持ってくれることが嬉しい。
飲み物と月うさぎの餅を楽しみながら、陽太と環菜は久しぶりにゆっくりした時間を過ごした。
環菜とニルヴァーナや、その他の四方山話をしながら、陽太はふと今年の夏のことを思い出す。
毎日一緒に過ごしている環菜なのに、違う状況になるとまた別の面を発見したり、改めて感心することがあったりと、新鮮な驚きを感じられた。
こうして静かに月を眺めている環菜の姿も、また新たな魅力に溢れている。
頭上に輝く月はとても綺麗だ。
こんな月を環菜と一緒に眺められるのはとても幸せだ。
そして……月に負けず劣らず、妻の環菜は本当に綺麗だと陽太は心底から思う。
「本当に綺麗な月ですね……」
口に出して言ってみると、環菜は月から陽太へと視線を移した。
「そうね。これほどまでに光量があるものなら、太陽光発電まではいかなくても、月光を利用してエネルギーを取り出せないものかしら。それとも月光を増幅させるという手の方が可能性があるのかしらね」
月を真剣に見上げていると思ったら、そんなことを考えていたのかと、陽太は環菜らしさに口元をほころばせた。
ムードよりも実益で、おまけに人前でのふるまいを気にする環菜は、綺麗だなんて言われたらきっと照れて困りそうだ。
だから陽太は行動でそれを伝えることにした。
「ここなら人目につきませんから……」
そう言って陽太は、環菜と口唇を重ねた……。
神秘的な異国の月光のもと。
女神のように美しい最愛の妻とかわす情熱的なKissは、いつも以上に甘く痺れ。
いつまでもこうしていたいと、陽太は月に願いをかけるのだった――。
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