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お姫様のお茶会・2

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は、
ひさしぶりに再会した友人、ミルザム・ツァンダ(みるざむ・つぁんだ)を、
お姫様のお茶会に誘っていた。

豪華クルージングに、とも思ったが、
話したいことの内容から、
ラズィーヤの傍は気まずいかもしれないとも思ったのだった。

「来てくれてありがとうな」
「いえ、私もお誘いいただいてうれしいです」
【東京都知事】として多忙な日々を過ごすミルザムだが、
今日は、のんびりと過ごすことができそうだった。

「えーと、何から話そうか……」
シリウスが、ティーカップに手を置いて、深呼吸してから、言った。
「オレ、就職決まった」
遅いのか早いのかわかんないけど、と、シリウスは付け加える。
「こないだミルザムも来てくれた
ニルヴァーナ創世学園、あそこの初等部で教師やることになった」
「まあ、おめでとうございます!」
ミルザムが笑顔で言う。
「それが、いきなり問題にぶち当たっちまってさ……」
シリウスが頭をかく。
「今は専攻科で実習生してる……んだけど。
……今度、初等部にとんでもないヤツが来るって噂がある。
そいつはオレもよく知ってる……戦ったこともあって、全く歯が立たなかったヤツだ」

ウゲン・カイラス(うげん・かいらす)
彼の魔少年のことをシリウスは語った。

「これからもそんな奴は出てくるだろう……
オレはそんな奴らを導けるのか……不安なんだ。
ミルザム……オレ、どうしたらいいのかな?」

シリウスは普段の勝気な態度からうってかわって、
等身大の若者の悩みを吐露した。

「甘えてるって自覚はある……ただ、聞いてみたかったんだ。
人の上に立つことの先輩の言葉を。
他に……こんなこと聞ける人が思いつかなくてさ」

「そうですね……」
ミルザムは、真剣な面持ちで、シリウスに向き直る。

「人を導く立場に立つということは、
いつも、たくさんの課題を乗り越えていかなければいけないことだと思います。
でも、シリウスさんなら、大丈夫だと、私は信じています」
ミルザムは、笑顔でそう、言いきった。

「そっか、そうだよな。
……ありがとな」
シリウスは、安心したように言った。

「……あ、あとさ。知事の任期って、日本は何年だったっけ?」
顔を上げて、シリウスが問う。
「もし……その後のこと、決まってなかったさ。
ニルヴァーナに来てみないか?
一度、肩を並べて何かしてみたいって……ちょっと思ったんだ」

ミルザムは、やわらかな笑みを浮かべ、言った。
「東京都知事の任期は4年間ですが、
その後も、シャンバラと日本のために尽くしたいと思っています。
ですので、ニルヴァーナに行けるかどうかはわかりませんが、
離れていても、地球とパラミタのこと、そしてニルヴァーナのことを考える気持ちは同じです。
お互い頑張りましょうね」

「そうだな。オレたちは離れてても友達だ」
ミルザムの想いを感じて、シリウスもうなずいた。

「紅茶、もう一杯、飲むか?」
「ええ、いただきます」