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こどもたちのハロウィン

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こどもたちのハロウィン
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リアクション

 パーティが始まっても、帰ってこない子供達もいた。
「これでよし!」
 たけるくん(武尊)が、木の洞の中に、たくさんのぱんつを入れて、にんまり笑みを浮かべた。
「むかしから、きをかくすにはもりのなかっていうし。ここにかくすのがいちばんなんだ」
 ログハウスで大人達の目を盗み、たくさんの小さなぱんつをゲットしたたけるくんは、隠し場所として森の中を選んだのだ。
「おっかないおんなのこがもどってくるまえに、かえらないとな。うひひー ほとぼりがさめたころにとりにきて、いえにかざろーっと」
 さあ、みんながいる場所に戻ろう。
 そう思ったたけるくんだけれど……。
「あれ……? かえりみちどっちだっけ」
 同じような木が沢山並んでいるだけで、ログハウスも池も、ランタンの光もここからは見えなかった。
「えーと、えーと……だ、だれかー」
 たけるくんはぱんつを隠した場所から少し離れると、大声を上げた。
 自分が迷子になったとしても、ぱんつのありかだけは知られるわけにはいかないのだ。
「だれか、だれかいるでしゅか……」
 小さな声が聞こえた。
「ようじょのぱんつのけはいが!」
 たけるくんは急いで声の方へと歩く。
「ここ、どこでしゅかぁ……」
 そこには、同じく迷子になってしまっていたひなちゃん(日奈々)がいた。
 ひなちゃんが持つ籠の中には、いがぐりや、紅葉の葉っぱ、木の実など、食べられそうなもの、綺麗なもの、珍しいものが沢山入っていた。
 あと、まどかちゃんが落したお菓子も……。
 森の宝物を拾って回っているうちに、ひなちゃんは迷子になってしまっていた。
 宝物を隠しに来たたけるくんとは反対の理由だ。
「たちか、むこうからきたようなきがするんでしゅ……でも、わかんないでしゅ……」
 ひなちゃんはぽろぽろ涙を流しだす。
「よし、ぱんつをくれたらかえりみちおしえてやる」
 たけるくんはそうは言うものの、たけるくんにも帰り道はわからない。
「ぱ……ぱ……そ、それはあげられないでしゅー! ひっく、おしえてでしゅ。みんなのところにかえりたいでしゅ……」
 ふぁ〜んと、ひなちゃんは声を上げて泣き出した。
「わかった、いっしょにかえろう」
 たけるくんはひなちゃんを可哀相に……
(ぶじつれてってやったら、おれいにぱんつくれるかもしれないぞ)
 思ったわけではなく、ぱんつのためにひなちゃんの手をとって歩き出す。
「かえりみち、どっちー? おせーてー!」
 声を上げながら、ひなちゃんとぐるぐる歩き回っていたたけるくんは……。
「こら、森に入ったらダメだと言っただろ」
 数分後に子供達を探しに来ていた、ファビオに発見された。
「ふ、ふぁ〜ん、うぁ〜ん、うぅぅぅぅえーーーーーん」
 ひなちゃんはファビオに抱き上げられると、抱き着いて大泣きをしたのだった。

「くしゅん」
 可愛らしいクシャミをしたのは、ざみえるちゃん(ザミエル)だ。
 群がってきた子供達を振り切って、どうにか森の中に逃げ――いや、お仕事の為に森に入ったざみえるちゃんは、クマさんの着ぐるみを着ていた。
「むらがってきたこどもたちと……いりぐちをまもっていたおんなのことのたたかいでふく、よごれてしまったからな」
 元々来ていた服は、足止めをしていたゆうこちゃんと戦った時に、破れたり、汚れたりしてしまっていた。
 ……3歳児に手こずってしまったのだが、ざみえるちゃんは勿論そんなことは認めていない。
「ふふ……いえ、いけません。いけません」
 モフモフの着ぐるみの感触はとても気持ちよく、ザミエルちゃんの顔はつい緩んでしまっていた。
「……あのこは、こういったおみやげのほうがよろこびそうですね」
 ざみえるちゃんは、どんぐりを拾って回っていた。
 拾ったどんぐりの中から綺麗などんぐりを選んでポケットに入れていく。
「おうごんいろ。これがいい!」
 いちばんきれいなどんぐりは、あの子――入口を守っていた子にあげようと思いながら、ハンカチでふきふきして、そのまま包んで大切にしまっておく。
 いつか、あの子も森の興味を持ってくれたら嬉しいな……と思い、ちょっと微笑んでから。
「ん? かえりみち、どっちでしたっけ。……けっしてまよったわけではないですけれどね。けっして!」
 一人主張をしながら、ざみえるちゃんは暗い森の中を歩き出す。
 でも、ログハウスの光を見つけることは出来なかった。
「……たんさくしゅーりょー! きかんします!」
 不自然なほど、大きな声を上げてすぐ。
「仕事終わったのかな? 働いたら駄目とはいわないけれど、大人の言う事はきかないと駄目だぞ」
 声を聞いて駆け付けたファビオに、ざみえるちゃんも助けてもらったのだった。

「で、でやがったな……こわくなんかないんだからな!」
 悪ガキ達と森の奥に進んでいたらるくくん(ラルク)は、獣に遭遇していた。
 犬か狼のようだけれど、暗くてよくわからない。
「た、たべられちゃうぞ!」
「にげろー!」
 ぶらぬくん達はわーっと逃げ出しました。
「がうううううっ!」
 獣は逃げ出した子供達を追おうとする。
「こうしてやるっ」
 らるくくんは落ちているもの、いがぐりや木の枝や、石ころを次々に獣に投げていく。
「ぐ、がううう!」
 しかし、獣にはあまり当たらない。
 獣は子供達を追うのをやめて、らるくくんに飛び掛かってきた。
「くそっ、でもこうすればおれのかちだ」
 らるくくんは、近くの木によじ登る。
「がう、がうううっ!」
 獣も木に駆け登ろうとするが、上手く登ることができない。
「やっぱり、きにのぼれないか。オレたちみたいににほんあしではしれるわけじゃねぇからな」
 らるくくんは、木の上からよぉくねらって、悪戯用に持っていたいがぐりや石を獣の体めがけて思い切り落した。
「ぎゃん、ぎゃん」
 今度はちゃんと命中し、獣たちは鳴き声を上げながら逃げて行った。
「らくしょーだぜ」
 らるくくんはガッツポーズをする。
「けど、くらくなってきたよな。おちてるいがぐりとかもみえねぇし」
 ログハウスから離れてしまっているせいで、明かりも届かない。
「よーし、かえるぞー! ぶらぬー! こっちこーい」
 らるくくんは大声をあげて、ぶらぬくん達を呼んだ。
「かいぶつおいはらったのかー?」
「すげー、おまえなら、おとなにもらくしょーでかてるな!」
 ぶらぬくんと友達達が駆け戻ってきて、木から下りたらるくくんを尊敬の目で見る。
「まかせておけー。それじゃ、イタズラしにいくぜ!」
「おー!」
「おおー!」
 らるくくんは、ファビオに発見されるより早く、ぶらぬくんたちを引き連れて皆のところに戻っていった。

「ひぃっ」
「うぁっ」
 がさっと音がした途端、飛び上がってまどかちゃん()はろざりんどちゃん(ロザリンド)に抱き着いた。
 円ちゃんを抱きしめ返しながら……寧ろ、自分の方からも抱き着きながらろざりんどちゃんは震えていた。
「か、かぜのおとみたいね。さ、さむいね」
「う、うん。あのさ……ここどこぉ、ろざりんかえりみちわかるー?」
「えーと、えー……と」
 辺りは真っ暗で、リーアの家の明かりは全く見えなかった。
「ど、どうしよう、くらいよ、おなかすいたよ、まどかさんおかしまだある?」
「あるよー。おなかすいたー、たべよー?」
 まどかちゃんは、ポケットに入れてきたお菓子を取りだそうとした。
 しかし、ぽけっとには、穴があいていて、詰め込んできたお菓子は、いつの間にかなくなってしまっていた。
「ひどいや、ぼくのおかしなくなってる、うわーん!」
 突然、まどかちゃんは大きな声で泣き出した。
「ま、まどかさん、まどかさん……だ、だいじょうぶですよ。きたみちをもどれば、おかしおちてるはずですから」
 でも、その来た道がわからなくて、ろざりんどちゃんはおろおろ辺りを見回す。
「もう、ぼうけんはいいー! かえりたいー!」
「か、かえりたくても、みちが……きしはすすむしかない。すすむしか……あっ」
 びくっとろざりんどちゃんは震える。
 森の奥から唸り声が、聞こえた。
 狼のような声だ。
「わ、わたしたちはつよいんだから、だいじょうぶ、だ、だ、だ、だいじょうぶ」
 ろざりんどちゃんはお鍋の蓋の盾を持って、まどかちゃんを背に庇おうとする。
「たいへんだ、たいへんだ。かくれるばしょー」
 まどかちゃんは、隠れられる場所を探すけれど……木の上くらいしかない。
「のぼれないよ、ろざりん……うわっ」
 またスカートが足に絡まって、まどかちゃんは転んでしまう。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。だいじょうぶ」
 ろざりんどちゃんは同じ言葉を繰り返しながら、しゃんがんで円ちゃんを起こそうとした。
「ぐるるるるるる……」
 鳴き声が大きくなる。
「ま、まどかさん」
「ろざりん……っ」
 ろざりんどちゃんは、まどかちゃんの肩を抱きしめながら。
 まどかちゃんは、ろざりんどちゃんの服を掴んで、震えていた。
 その時。
 ぱっと光が降ってきた。
「お菓子を落とした子? 良かった無事で」
 光と共に、ふわりと舞い降りてきたのは、ファビオだった。まどかちゃんが落したお菓子を辿り、この辺りにも迷い込んだ子供がいるのではないかと、探していたのだ。
「お……おそいよー!」
 ぎゃーと叫び声を上げるかのように、まどかちゃんは言って、わんわん泣き出した。
「ばかー! なんで、もっとはやくたすけないのさー!」
「もう大丈夫だよ。森の中に入ったら駄目だって言われてただろ? 大人の言う事聞かないと」
「うるさーい! ばかー! あほー! はげー!」
 ぎゃーぎゃー泣きながら、まどかちゃんはファビオに罵声を浴びせてる。
 ファビオは苦笑しながらも、まどかちゃんを落ち着かせようと、頭を撫でていた。
「君ももう大丈夫だからね?」
「き、きしはなかないもん」
 ろざりんどちゃんは、涙目になりながらも精一杯強がっていた。
「頑張ったね」
 と言って。
 ファビオはろざりんどちゃんに手を差し伸べて抱えると、大きな光の翼を広げて、空へ飛び立つ。
 高く高く空に昇ると、地上の光が見えた。
「おかしー!」
「おなかすいたよー」
 まどかちゃんとろざりんどちゃんは、地上の光に手を伸ばした。
 皆が、楽しく集まっている場所。パーティが行われているお庭は、かぼちゃのランプで飾られていてキラキラで。空から見たらすぐにわかった。

「料理もお菓子も、沢山ありますよ」
「温かいスープもありますよ」
 パーティ会場では、涼介お兄さんや、凛お姉さんが温かく子供達を迎え入れてくれる。
 泣いていた子もすぐに笑顔になって。
 皆で楽しく賑やかに、ハロウィンの夜を過ごすのだった。