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リアクション
その少し前。
衣裳部屋に、子供達が集まっていた。
「んーと……カナはかわいいおようふくがいいな〜。おひめさまのふく、ようせいのふく、てんしのふく……まよっちゃうの!」
5歳のかなちゃん(遠野 歌菜(とおの・かな))は、気に入った服を集めて、迷っていた。
「みんな、かわいいです」
3歳のなーちゃん(ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと))は、後ろでにこにこかなちゃんやお着替えをするお友達とお洋服を眺めている。
「うん♪ えへへ……ぜんぶをきちゃおっかな〜♪」
かなちゃんは、妖精の服を着て、御姫様のティアラをつけて、天使の羽をつけて。
それ以上は一緒には着れなかったので、また後でお着替えしようと決めて。
「それじゃ、おかしもらいにいくのー。ふつーにもらうだけだと、ものたりないの」
ふふふっと笑みを浮かべて、お友達に手を振って、先に衣裳部屋から出て行った。
「かわいいふく、いっぱいです」
なーちゃんはかなちゃんを見送った後も、にこにこ皆を眺めつづけていた。
「きぐるみとかもたくさんありますね。かわいいですね」
「ねー」
なーちゃんと同じように、大人しそうな女の子、あれなちゃん(アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす))も、にこにこ眺めている。
「ん? おきがえしないの?」
魔女の衣装に着替えた5歳のあおいちゃん(秋月 葵(あきづき・あおい))が、にこにこしているだけの、なーちゃんとあれなちゃんに話しかけた。
「よかったらいっしょに鈴子ちゃまのところにおかしもらいにいこうよ♪」
あおいちゃんもにこっとして、2人に言う。
「わたしは、ここでいいんです」
「みんなたのしそうですねー」
あれなちゃんとなーちゃんは壁際でやっぱりただにこにこしているだけだった。
「でも、なーちゃんはいったほうがいいですよ」
あれなちゃんは、言いながら周りを見回して。
「えっと……あ、これ。なーちゃんににあいそうです」
フリルとリボン沢山の、御姫様のドレスを選んで、なーちゃんに見せた。
「はい、かわいいです」
あれなちゃんに進められたので、なーちゃんはドレスを着てみた。
「やっぱりとってもにあってます。えっと、後ろむすびますね」
あれなちゃんは、なーちゃん背中のリボンを結んであげた。
ピンクと白のドレスは、なーちゃんにとっても似合っていて、鏡を見たなーちゃんも、あれなちゃんもとっても嬉しそうだった。
「ありがとですー」
なーちゃんはよろこんで、あれなちゃんにぎゅっと抱き着いて、ぽっぺにちゅーをした。
「はい」
あれなちゃんはちょっと照れながら、なーちゃんの手を引っ張った。
「パーティやるそうですよ。なーちゃんもおかしあつめにいってください」
そうして、なーちゃんをあおいちゃんの方に押した。
「あれなちゃんもくるですか? おきがえはどうします?」
なーちゃんが首を傾げてあれなちゃんに聞いた。
「わたしは……あとでいきますよ。このこもまだですし」
そう言って、あれなちゃんが目を向けた先には、隠れるようにむっつり立っているるいふぉんくんの姿があった。
「ア〜レナ〜! いっしょにおかし食べようぜ〜!」
突然、ドアが開いて、ヒーローっぽいマントに、目にマスクをつけた5歳の男の子、やすゆきくん(大谷地 康之(おおやち・やすゆき))が姿を現した。
「たた、えっとたたきあげ仮面! とうじょー!」
「やすゆきちゃん?」
あれなちゃんの顔にぱっと笑みが浮かぶ。
「おっ、アレナはっけんー。おかしもらってきたぜ!」
やすゆきくんは、隅の方にいたあれなちゃんを発見すると、鈴子お姉さん(桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ))からもらった、クッキーをあれなちゃんにみせた。
「はんぶんこしよーぜ。っと、おひめさまと、すみっこのこもいるから、4ぶんこな!」
そう言うと、やすゆきくんは、クッキーを半分に割って、半分のクッキーをさらに半分にして、あれなちゃんとなーちゃんと、すみっこの男の子に渡した。
「ありがとです。わたしのぶんも、やすゆきちゃんにあげたいですけど……まだ、おかしもらってなくて」
「ん? あれなきがえてないじゃん。きがえてもらいにいかないと、もらえないんだぞ。きがえて、みんなとあそぼうぜ?」
「えっと」
戸惑っているあれなちゃんに、やすゆきくんは笑顔で言う。
「おれはあれなも、きがえしてたのしんでほしい。だって、そのほうがぜってぇ楽しい!」
「でも……はずかしくて。みんなのこと、みてるのたのしい、し」
「なにかきないと、みんなをみにいけない。だから、はい」
あかずきんちゃんの衣装を着た4歳のゆぅちゃん(早川 呼雪(はやかわ・こゆき))が、あれなちゃんに、白いドレスを差し出した。
「おそろい」
ゆぅちゃんは、持っていた籠の中から、ドレスを着た縦ロールの人形を取り出して、一緒にあれなちゃんに渡す。
「かわいいのは、だめなの」
あれなちゃんはちょっと照れて、ドレスをなーちゃんに渡した。
「ん? あれなちゃんにきてほしいですー」
なーちゃんはすぐにあれなちゃんにドレスを返した。
なんで駄目なのかなと、首をかしげた後。
ゆぅちゃんは、今度は王子様の衣装を、隅っこにいる目つきの悪い男の子――るいふぉんくん(金 鋭峰(じん・るいふぉん))に差し出した。
「おうさまのふく」
「……」
るいふぉんくんは、むっつりした顔のまま、その服を受け取った。
「はずかしくないって! あれながみんなに楽しんだりよろこんでほしいならいっしょに楽しもうぜ!」
やすゆきくんは、あれなちゃんに仮装するように勧め続ける。
「あれなも楽しんでくれたらおれやみんなもうれしい。みんながよろこべばあれなもうれしい。そうしてみ〜んなしあわせだぜ! だかられっつごー!」
「えっと……えっと……やすゆきちゃんがきてくださいっ」
あれなは、なーちゃんに渡したドレスを、今度はやすゆきくんに押し付けた。
「お、おれはこういうの、にあわないぞー。ヒーローだしな」
「……そう、ですね」
でもでもと、あれなちゃんはもじもじしている。
「まっしろのふくも、かわいいです。あかいふくも、せなかにぬのがついてるのも、かわいいです」
なーちゃんは白いドレス、赤ずきん姿のゆぅちゃん、ヒーローっぽいやすゆきくんを見ながら、にこにこ笑顔。
「それ、着ないのでしたら……かしてくれますか」
お着替えに入ってきた、5歳のこうちゃん(瓜生 コウ(うりゅう・こう))が、あれなちゃん達に言った。
あれなちゃんがゆぅちゃんを見ると、ゆぅちゃんはこくりと頷いて、こうちゃんに白いお姫様ドレスを貸してあげた。
「こんなふうに、きるんです」
あれなちゃんはゆぅちゃんから受け取っていたお人形さんをこうちゃんに見せると、こうちゃんはじっとお人形さんを見ながら、お着替えをしていく。
白いドレスを着て、リボンを結んで。
長い手袋をはめて、キラキラした石が沢山ついたティアラを頭に着けて。
こうちゃんはあっという間に、可愛いお姫様に変身した。
「おひめさまになりました。つぎは……」
こうちゃんは持ってきていた絵本を手に、部屋の中を見回す。
(えほんのおひめさまのように、おどりたい……)
だけれど……お相手の、王子さまっぽい人はこのお部屋には今はいない。
「ま〜だきがえてないのか」
小さな子が1人、部屋に入ってきた。
黒髪黒目、ぼさっとした感じの髪型。
ふにっとしたぱんださんの着ぐるみをきたその子――3歳のしづりちゃん(朝霧 垂(あさぎり・しづり))は、『びしっ』とるいふぉんくんを指差しながら、言う。
「おまえな〜、むかしから『ごうにいっては……あれ? なんだっけ??』……まぁいいや、とにかくな、じぶんがいまいるばしょのるーるはまもらないとだめなんだぜー!」
「それをいうのなら、ごう……ごう……ごう……」
るいふぉんくんも途中でわからなくなり、もごもごしだす。
「とにかく、それきるのか? きないのか。それならこれを……」
ぱさっとしづりちゃんが取り出したのは、ぱんださんの着ぐるみ。……何故かこっちのぱんださんは、目つきが悪い。
「!! ……!!!」
るいふぉんくんはその、ふにっとしたぱんださんをみると「いやだ」と、クローゼットの中に隠れてしまった。
「じゃ、そっちきろよ。まっててやるから。はやくしないとぱーてぃはじまちゃうだろ〜」
「ん〜〜〜〜〜〜」
るいふぉんくんは眉間に皺を寄せて考え込んでいる。
「んーと。いいふくはうえのほうにあるんだよ」
しづりちゃんの後ろから、ひょっこり顔を出したのは、悪魔の服を着た3歳のるかちゃん(ルカルカ・ルー(るかるか・るー))。るいふぉんくんを探してやてきたのだ。
椅子を一生懸命運んで、のっかって、クローゼットの扉を開く。
そして中に入っていた洋服をばさばさ、床に落とした。
「にあうふくあるかなー」
ぴょんと飛び下りると、るかちゃんは魔王の服や、軍服をとって、るいふぉんくんに合せてみる。
「どっちもにあうな」
にこっと笑みを浮かべると、ぷいっとるいふぉんくんは顔を背ける。
怒っているのではなくて、照れているのだとるかちゃんにはわかって。
「いっしょにきがえよー」
ぱっとるかちゃんは着ていた服を脱ぐ。
「よし、きがえるぞ!」
「や、やめろ……じぶんで、できる……」
無理やり、しづりちゃんが着替えさせようとすると、るいふぉんくんは自分で仕方なくというように、お着替えを始めた。
選んだのは、ちょっと悪い感じの王子の服だった。
るかちゃんも、るいふぉんくんに合わせて王子の服を選んだ。るいふぉんくんよりちょっと地味な服を。
「さあ、どこにいく?」
お着替えを終えて、るかちゃんがるいふぉんくんに尋ねる。
「……おかし、もらいにいく。おなかすいた」
そう言うるいふぉんくんのお腹がぐるるるっと鳴った。
「よーし、もらいにいこうぜ!」
しづりちゃんがるいふぉんくんの手を引いて、衣装部屋から出ようとする。
「さいしょは、だれがあいてだー!」
るかちゃんは、2人の前に出て、先陣を切ってドアを開けた。その時。
「いたー!」
「はっけんはっけん」
かおるくん、ほくとくんが部屋に入ってきて、るいふぉんくんを発見した。
「るいふぉん、どこー……?」
そして自分の名前を呼ぶ声に、るいふぉんくんはそわそわしだす。良く知っている声、のようだ。
「ここにいるよ」
かおるくんがいうと、るいふぉんくんを呼んでいたひばりちゃんや、らどぅくん……と、らどぅくんにくっついている子たちもどたどたと現れた。
「みつけた、あそぼー!」
ぱっとひばりちゃんが笑顔を見せると、るいふぉんくんはしづりちゃんの後ろに隠れてしまう。
「なんでかくれるんだよ?」
しづりちゃんはるいふぉんくんを前に出そうとするが、るいふぉんくんは抵抗する。
「お、おれは、るいふぉんだが、おまえのさがしてるるいふぉんじゃない」
「ん〜? きみ、しゃしんのこにまちがいないから、あたしがさがしてるこだよー!」
言ってひばりちゃんは、るいふぉんくんをしづりちゃんの後ろから力づくで引っ張り出した。
「さ、めーりん先生のところいこー。ケーキくれるんだって」
るいふぉんくんをひっぱって、嬉しそうに歩くひばりちゃん。
「……」
るいふぉんくんも抵抗をやめると、ひばりちゃんの手を握り返してきた。
「おかしをもらいにきた子はいちれつにならんでねっ。わりこみはだめだよ」
梅琳の側では、二本三つ編で魔女ドレス姿の5歳のれんげちゃん(董 蓮華(ただす・れんげ))が、皆を並ばせていた。
「けんかしないの。みんなおともだちだよ」
じっとしていられなくて、小突き合いを始める子供達には「めっ」と叱った後笑顔を見せて。
泣いている子供は、撫でて手を繋いで宥めてあげたり。
れんげちゃんはお姉さんとして、頑張っていた。
梅琳のケーキは大人気で、彼女のところには沢山の子供達が集まっている。
「お手伝いをしてくれた子優先よー。なくなっちゃっても、お家でお菓子も沢山作ってるところだから、パーティまでには用意できるわよ」
梅琳はパーティの準備をしながら、子供達にそう説明をしていた。
「あっ」
れんげちゃんが、戻ってきた子供達と、るいふぉんくんに気付く。
「おかえりなさいっ」
皆にそう言った後、れんげちゃんはるいふぉんくんの前に走って、屈んだ。
「きゃー、かわいいっ」
そして、れんげちゃんは思わず声を上げた。
「そのおようふく、すごくにあってる……っ」
年長のれんげちゃんには、彼が慕っている金団長であることがわかっていた。
大好きな団長の小さくても素敵な姿をみて、幼いながらもドキドキしてしまう。
じっと睨むように自分を見ているるいふぉんくんの前で、れんげちゃんは髪の毛を解いてみせた。
「れんげですよう。ただすれんげ、ほらほら」
れんげちゃんはドレス摘んで御挨拶。
「ただす……」
わかったというように、るいふぉんくんはこくんと頷いた。
「えっとそれじゃ、パーティはじまるまで、みんなであそぼうか」
「そうだね、いこう!」
れんげちゃんはるいふぉんくんと手を繋いでいるひばりちゃんと頷き合うと、一緒にるいふぉんくんの手を引いて、皆のところに走りだす。
そして、梅琳にご褒美のケーキをもらってから。
「なにしたい?」
前に回り込んでるかちゃんがるいふぉんくんに尋ねると。
るいふぉんくんは周りを見回した後、柿木を指差した。
木には沢山の柿がなっている。
「かきとりか。よぉし、のぼろう!」
真っ先にるかちゃんは木のぼりを始める。
「いっしょにのぼる?」
するすると登って、るかちゃんはるいふぉんくんに手を差し出した。
こくんと頷いて、るいふぉんは小さいながらも、柿の木に頑張って登りだす。
「よーし、あたしはここでかきうけとるよ」
「もしものときもだいじょうぶ。うめとめる、ぜったい!」
ひばりちゃんとれんげちゃんは、木の下で見守る。
るいふぉんくんは小さいけれど、運動神経がよく、るかちゃんといっしょに枝の上にのぼって、美味しい柿を2つ。ひばりちゃんと、れんげちゃんの分を落したのだった。
それからるかちゃんが、自分とるいふぉんくんの分を採ってから、2人はジャンプをして地面に下りた。
着地で転んで、ちょっと足をすりむいてしまったけど。「めーよのふしょう」と言い合って、皆で笑ったのだった。
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