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第2章 ネコトラック突入

「敵のイコンの数が減ってきたぞ。これで、他の人たちも街に近づきやすくなった。一刻も早く街の入り口に誰かが突入できるよう、俺たちもはりきらなくちゃな」
 アサルトヴィクセンに乗って、上空からステラレの街周辺を視察しながら、柊恭也(ひいらぎ・きょうや)がいった。
「そうだね。幸いにも今回は、やる気満々だからね」
 同じく、アサルトヴィクセンに搭乗する馬岱(ば・たい)がいった。
「ああ!! 同情する余地のない悪党揃いだからな!! それじゃ、ゴミ掃除といこうか!!」
 吠えて、恭也は機体を降下させた。
 じゅううううううううう
 ぼおおおおおおおおおおん
 降下しながら、アサルトヴィクセンの荷電粒子砲が地上の敵機に向けて火を吹いた。
「あ、あぎゃああ!! な、なんだ、上からか!!」
 アサルトヴィクセンの攻撃に驚いた盗賊たちのイコンは、右往左往して避けようとする。
 だが。
 ちゅどーーーん!!
 ちゅどーーーーん!!
 被弾した何機かが爆発し、炎を吹き上げる。
「た、助けてくれー!!」
 うめいて、盗賊たちのイコンは逃げ惑う。
「ほら、これでも逃げられるか!!」
 叫びながら、恭也は多弾頭ミサイルも地上に展開させた。
 どご、どごーん
「おわああああああ。あちいいいいい」
 盗賊たちは、いよいよ激しい烈火にさらされた。
「一機も逃がすつもりはないよ。全員ここで死ぬんだから」
 馬岱は、地上で爆発・飛散する敵のイコンを、まばたきもせずにみつめながらいった。
「そろそろ、地上戦のデータも収集させてもらおうか」
 恭也は、機体を着地させた。
「て、てめえ!! のうのうと降りてきやがって!! みんなでやっちまえ!!」
 生き残った盗賊たちは、口々にわめきたてながら、いっせいに恭也への機体へと自分たちの機体を詰め寄らせていった。
「数で攻めることしかできないのか? ほら、死にたくなけりゃ殺してみせろぉ!」
 アサルトヴィクセンは機晶ブレード搭載型ライフルとレーザーマシンガンをそれぞれ発射して、敵を牽制する。
「くっ!! 俺たちにとって、あの街は楽園なんだ!! 住民を絞れるだけ絞って、いい思いをしていられる街なんだ!! 今日もかえって、街の娘を抱いて楽しむんだよ!! どの娘も、俺たちの前に黙ってひざまずくしかないんだ!! お前らに邪魔されてたまるもんかー!!」
 盗賊たちは、口々に呪詛の言葉を述べながら、アサルトヴィクセンに自機を突っ込ませようとした。
「本当、最低の連中ね」
 馬岱が、吐き捨てるようにいった。
「まったく、罪のない住民を虐待して、よくそれを楽園だなどといえるな!! 何で被害者のようなことをいえるかわからんが、要するに悪いことをしているとも思っていないのか? ああ、もういい!! まとめて処分だぜ!!」
 恭也も、怒りに顔をしかめながら、再びの掃射に移った。
 じゅううううううううう
 ぼぼぼぼぼぼぼぼーん
 アサルトヴィクセンの荷電粒子砲が水平に射撃され、突っ込んでくる敵の機体を情け容赦なく焼いた。
「あああああああああああ」
「おおおおおおおおおおお」
 声にならない叫びをあげながら、火だるまの機体の中で盗賊たちはもがき、苦しみ、そして、爆発の中で息絶えていった。

「おお、あの荷電粒子砲の攻撃はすごいな。このままじゃ、あらかた倒されちまうぜ。俺たちの出番がなくならないうちに、やらせてもらおうか」
 十文字宵一(じゅうもんじ・よいいち)は、恭也の攻撃で火炎地獄と化した一帯を、颯爽と駆け抜けていった。
 まだ、敵は残っている。
 全滅を狙うなら、個別撃破を行うことも必要になってくる。
 生身でイコンと闘うことを決意している、宵一たちの出番であった。
「さっき盗賊たちが焼かれる前にいってたこと、お聞きになりましたか? 暴力で若い女性にいうことを聞かせて獣欲を満たそうとするなんて、絶対許せませんわ!」
 ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)は、感情の爆発を抑えずにまくしたてると、聖邪龍ケイオスブレードドラゴンにまたがって、いっきに上昇していった。
「珍しいな。ヨルディアが本気で怒るなんて。まあ、当然だが」
 ヨルディアの、普段のほんわかしたキャラからの豹変ぶりに驚きながらも、宵一はイコンに素手で立ち向かう覚悟を決めた。
「宵一、敵機のレーダーや通信網は、僕が撹乱しておいたでふ!! それじゃ、後は戦車に乗って、かっこよく遠距離から援護するでふよ!!」
 リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)も、興奮した口調でいいながら、戦車に乗り込んでいった。
「空から地上から、か。戦車なら大丈夫だろうが、先ほどの砲撃で、この地上はなかなか熱い。俺は、ヨルディアに続いて天翔けるとしよう!!」
 そういって、宵一はスレイプニルにまたがった。

「空を飛んで逃げようと思っても、そうはいきませんわ!!」
 聖邪龍にまたがったヨルディアは、上空にあがった盗賊の機体を追い求めた。
「げっ、ついてくんじゃねえよ!! 死ね!! ぺっ!!」
 プラヴァーで宙を移動し、地上に攻撃を加えようとしていた盗賊は、ヨルディアの接近に驚いて、唾を吐きかけようとした。
 だが、操縦席の中だったので、唾は、その中を飛んで、ディスプレイを汚しただけだった。
「くっ」
 盗賊は、歯ぎしりした。
 まさにバカであった。
「あなたたちに、空を舞う自由はありません!! 翼を剥奪しますわ!!」
 ヨルディアは、雷術を放った。
 黒雲がわきおこり、遥かな天空からの聖なる雷が、盗賊たちの機体をうちすえる。
 びりびりびりびり
「ぐ、ぐぎゃああああああ」
 雷撃を受けた衝撃に、盗賊は身悶えた。
 飛行能力を失ったイコンが、ゆっくりと、地上に降下していく。
「そのまま地上に戻すとお思いとですか? 裁きのときですわ」
 ヨルディアは、大地の術も発動させた。
 がばああああああああ
 盗賊たちのイコンが不時着しようとしていた地面に巨大な裂け目が走ったかと思うと、地中からせりあがってきた岩塊がイコンを挟んで押しつぶそうとした。
「ぐ、ぐぎょおおおおおお! 動けねえ!!」
 岩塊と岩塊に挟まれて身動きができなくなった機体の中で、盗賊たちはうめいた。
「それでは、また、来世でお会いしようと思いますわ!! 浄化の荒波!!」
 ヨルディアは、とどめに水術を放った。
 ざざざざざざざざ
 地面の奥底から吹き出した大量の水が、津波のように盗賊たちのイコンを飲み込み、地中深くへと引きずりこんでゆく。
「あ、ああああああああああ」
 どごおおおおおおん
 盗賊たちの悲鳴。
 そして、地中深くで爆発の音。
「制空圏は、渡しませんわ」
 多少怒りがしずまったのか、ヨルディアは、ニッコリ笑って呟いた。

「宵一!! 援護するでふ!!」
 リイムは、戦車の弾丸を放って、地上の盗賊たちのイコンを牽制した。
 宵一は、スレイプニルにまたがって宙を駆けながら、地上の敵機を撃墜しようとしていた。
 リイムは、そんな宵一のサポートに徹しようとした。
 リイムが戦車に装備させたイレイザーキャノンが、敵機の頭部を破壊し、その動きを鈍らせていく。

「リイム、応援感謝だ!!」
 叫びながら、宵一はスレイプニルを駆って、弱りつつある敵のイコンを追い詰めていく。
「き、貴様ぁ!! 生身で勝てると思っているのか!!」
 盗賊たちは、宵一の姿をみて、精一杯の罵倒をしようとした。
「思っているさ。これを聞け!!」
 宵一は、人魚の唄を歌い始めた。
「な、なんじゃこりゃあ!?」
 盗賊たちは、思わぬアクションに目を丸くした。
「はっはっは、歌えば歌うほど強くなる!!」
 歌いなら、素手で拳をつくって振りまわす宵一の筋肉が、みるみる盛り上がっていく。
 レゾナント・アームズの効能によるものだった。
 こうして、宵一はイコンと闘える力を身につけたのだ。
「いくぞ!!」
 宵一は、スレイプニルで敵機に接近すると、力強い拳の一撃を放った。
 どごおおおおおおおお
「あがっ」
 機体に衝撃がはしり、盗賊たちは呻いた。
「オラ、歯を食いしばれ!!」
 どごっ
 ぼごっ
 おごっ
 宵一の拳が、次々に敵機に炸裂した。
「やりたい放題やりやがって!! 正義面して暴力を振るっていいと思っているのか!!」
 盗賊たちは、宵一を呪った。
「当然の報いだろう。暴力で悪さをしたのはそっちだ!!」
 宵一は、平然と、拳を繰り出す。
「ちっきしょお!! ナメるなあ!!」
 盗賊たちは絶叫すると、機体を宵一に向け、いっきに突進させた。
 捨て身の特攻で、意地でも敵を倒す。
 盗賊たちは、最後の華をみせようとした。
「こっちこそ、クライマックスだ!! 百獣拳!!」
 宵一もまた、スレイプニルを高速で飛翔させ、突進する盗賊たちの機体に正面からぶち当たっていく。
「ぱおおおおおおおお」
「がおおおおおおおお」
 盗賊たちの目には、風を切って拳を突き出す宵一の周囲に、巨大な象やライオンの幻影がだぶってみえた。
 ばきどかぐしゃっ
 高速の拳が炸裂した瞬間、盗賊たちは、自分たちが突進する巨大な雄牛の角に貫かれたかのような、錯覚を覚えた。
 ばさばさばさ
 巨大な鷹が宙を舞い、自分たちに襲いかかったように思えた。
 ぐわあああああ、がぶっ
 あるいはまた、巨大なワニがその巨大な顎を開いて、盗賊たちをひと口で噛み砕いたように思えた。
 そして、現実は。
 どごおおおおおん
 盗賊たちのイコンは全身にひびが入ったかと思うと次の瞬間には砕け散っていた。
「あぎゃああああああああ。け、けだものは、けだものに殺されるのかぁ!?」
 断末魔の叫びをあげながら、盗賊たちは息絶えた。
「ご名答。因果応報の理だ! ぐっ」
 スレイプニルから地上に降りてそう呟いた宵一の身体に、激痛が走った。
「……これは!? 消耗が激しい。何とか勝てたが、これ以上は無理か」
 宵一は、うずくまった。
 中断されていた唄を歌おうとするが、長続きしない。
 体力が急激に低下し、視界が真っ暗になった。

「宵一、どうしたでふか!!」
 リイムは、宵一の異変に気づき、戦車を近づけようとした。
 ぐしゃっ
 そんなリイムの機体に、盗賊たちの機体がいっせいに近寄って、踏みつぶしにかかる。
 ぼおおおお
 戦車は、炎上した。
「はっはっは!! よそ見するからだぜぇ!!」
 盗賊たちは、嘲笑った。
「くっ、邪魔でふ!! 宵一が危ないんでふ!!」
 リイムは舌打ちすると、戦車を捨てて宵一に駆け寄った。
「宵一!! しっかりするでふ!!」
「どうかしたのですか?」
 必死で宵一を介抱するリイムに、ヨルディアが上空から声をかけた。
「宵一が倒れたでふ!! 何とかしないと」
 リイムが、途方に暮れた声でいったとき。

「ヒャッハー!! イコンどもがだいぶおとなしくなってきたぜ!! この隙に、街の入り口に突入だぁ!!」
 猫井又吉(ねこい・またきち)のトラックが、荒野を疾駆してきた。
 このトラックで、街の入り口に突っ込んで、血路を開く。
 それが、又吉のプランであった。
 突入後は、そのまま、トラックで盗賊たちをはね殺しながら、街中を破壊してまわるつもりだった。
「待ってでふ!! 宵一を乗せて欲しいでふ!!」
 リイムは、気絶した宵一を引きずりながら、又吉に声をかけた。
「うん? 何だぁ? ケガしたのか? まあ、荷台でよけりゃ乗れ!! その代わり、俺の運転は荒いからな!! 途中で放り出されても知らねえぞ!!」
 又吉は、トラックを止め、荷台を指していった。
「ありがとうでふ!!」
 リイムは、宵一とともに又吉のトラックの荷台にあがりこんだ。
「わたくしは、上空の敵機を牽制していますわ!! 早く、宵一様を安全なところへ!!」
 ヨルディアが、上空から声をかけた。
「うん!! トラックを出してでふ!!」
 リイムは、又吉に頼んだ。
「あ、ああ? 別に、安全なところへ行くわけじゃねえんだが!! まっ、いいか!! いくぜ!!」
 一瞬戸惑った又吉だが、再びアクセルを踏み込んだ。
 ぶおおおおおん
 トラックは、エンジン音を勢いよく響かせながら、大地を疾駆した。
 がたんがたん
 揺れる荷台で、リイムは宵一を抱きしめ、必死で介抱する。
「よーし、突入だぁ!!」
 街の入り口を封鎖する門を目にして、又吉のテンションはますます上がった。
 ぶおん、ぶおん、
 どごおおおおおおおおっ
「おい、おめえら、ここは出入り禁止だ!! いいか、この街は俺たちの……うわあっ!!」
 又吉のトラックが、門番の盗賊をはね飛ばして、門に突入する。
 ばりばりばり
 門を破壊して、又吉のトラックは、ついにステラレの街へ突入した!!
「よし、みんな、いくぞー!!」
 入り口の突破を知った他の生徒たちも、次々に街に入り込んでゆく。
 いよいよ、街の救助と、解放が始まるのだ。