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リアクション
第5章 町長の娘
「フハハハハハハハハハ!! 第5章にしてやっと登場だ!! 聞け、ステラレの街のアホ盗賊ども!! 我が名はハデス!! 秘密結社オリュンポスの天才科学者であるぞ!!」
ハードなバトルがあちこちで展開される中で突然現れたドクター・ハデス(どくたー・はです)は、顎が外れるのではないかと思えるほどのけたたましい笑い声をあげて、ステラレの街の悪漢たちを睨みつけていた。
「な、何だこいつ!?」
その空気無視のハイテンションぶりは、百戦錬磨の盗賊たちでさえも思わずひいてしまうほどだった。
「わからんか。無理もない。なにしろ、オリュンポスは秘密結社なのだから!! 神のみぞ知る存在なのだからな!! 聞け、荒廃したこの街を、これよりオリュンポスの秘密の拠点とする!! 逆らう者は粛正するぞ!!」
ハデスは、盗賊たちを堂々と睨みつけていった。
「な、何をいってやがる!! この街は、俺たちのもんだ!! てめえなんぞに明け渡すものか!!」
盗賊たちは、怒りに我を忘れて、ハデスに詰め寄った。
「ちょ、ちょっと兄さん!! この街を支配だなんて、何考えてるんですか!!」
高天原咲耶(たかまがはら・さくや)は、例によって、兄の言動にツッコミを入れずにはいられなかった。
秘密結社の存在を堂々とバラすのは自己破綻だし、「神のみぞ知る」などと嘘八百を並べるなどは、もはや耐えられるレベルではなかった。
「ハデス様。ご命令を!!」
アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)は、ハデスの前にひざまずいて、ひたすら従順の姿勢を示している。
「うむ。街の支配は後でもできるとして、さしあたって問題なのは、この街にきている契約者どもだな。我が部下、咲耶、アルテミスよ! 契約者どもを迎え撃つのだ!!」
ハデスは、いまにも襲いかからんばかりの盗賊たちを無視して、命令を下した。
「ざ、ざけんなあ!!」
「後でもできる」といわれた盗賊たちは、ついに我慢の限界に達した。
いっせいに武器を持って、ハデスにうちかかる。
「ハデス様!!」
アルテミスは、警戒態勢に入った。
そのとき。
「う、うわああああああああ!!」
盗賊たちの悲鳴があがった。
ういんういんういん
巨大な触手に身体を絡め取られて、盗賊たちが次々に空の彼方へと放り投げられていく。
触手に覆われた、その存在は。
「みよ、我が発明品を!!」
ハデスはくわっと目を見開いて叫んだ。
ハデスの発明品(はですの・はつめいひん)。
それは、まさに、悪夢の中に出てくる、できそこないのおもちゃのような存在だった。
「ぴっぴー。はです様、お守りシマス。しゅっしゅ、しゅっしゅ、しゅっしゅ、ぽっぽーぴー」
カオスな音をたてながら、発明品は不気味にうごめいていき、街で救助活動にいそしむ契約者たちを襲おうとした。
「はあ。兄さん、私たちもやるんですか?」
咲耶は、ぽかんとして尋ねた。
「二度はいわんぞ。しっかり武勲をたててまいれ」
ハデスは、咲耶の肩をぽんぽんと叩いていった。
「かしこまりました。アルテミス、吶喊します!!」
アルテミスは、剣を片手に、突進しようとした。
そのとき。
「ぴきゅぴきゅぴきゅ。ちーちーどかんどかん!! ターゲット、確認」
発明品は、突如、くるりと向きを変えて、触手を伸ばし、咲耶とアルテミスに襲いかかってきた!!
「えっ、どういうことですか? またシステムエラー? 兄さんのプログラムは穴だらけじゃないですか!!」
咲耶は、真っ青になった。
が。
すぐに、首をうちふって、恐怖を振り払う。
「逃げてはダメですね。この発明品がみんなに迷惑をかける前に、始末しなければ!! アルテミスちゃん、ここは一緒に闘いましょう!!」
咲耶に促されて、アルテミスは一瞬迷ったが、
「わかりました、咲耶お姉ちゃん! この発明品は、ハデス様にも牙を剥きかねない危険な存在です。ハデス様の命令には背くかたちになりますが、ここで始末しましょう!!」
そういって、咲耶とともに、発明品に向かっていくことにしたのである。
「お、おい、何をしているか!! 仲間割れをしている場合では……おわあっ」
思わぬ展開に焦ったハデスの頬を、いつの間にか側にまできていた盗賊たちが殴り飛ばしていた。
ぼごおっ
「あ、あがあっ」
ハデスは、少し鼻血を吹いただけで、意識が遠くなるのを感じた。
肉弾戦は、彼のような天才科学者には過剰な負担となるのだ。
「ハデス様!!」
アルテミスが、ハデスの様子に気をとられた刹那。
しゅわあああああああ
発明品が、触手の先から酸のようなものを吹きかけてきた。
酸を浴びた、咲耶とアルテミスの服が、ドロドロと溶けていく。
「きゃ、きゃあ! 何ですか、これは!!」
咲耶は、みるみるうちに肌が露になっていくのを感じて、顔が真っ赤になっていった。
「咲耶お姉ちゃん!! きゃあ!!」
アルテミスも、悲鳴をあげた。
酸を浴びて穴が開いた衣服の中に、触手が情け容赦なく潜りこんできた。
触手は、アルテミスのお尻を撫でまわし、隙間という隙間に入りこもうとする。
「ふう。くっ」
思わぬ攻撃に、アルテミスは妙な気持ちになるのを覚えた。
「おっ、みろよ。ストリップショーが始まるようだぜ!!」
盗賊たちは、ハデスを殴るのをやめ、口笛を吹きながら咲耶とアルテミスの艶姿に見入った。
「い、いやああ!! スースーします!!」
咲耶は、ほとんど原形をとどめていないスカートをおさえて身悶えた。
「おっひょー!! 青リンゴだぜ!!」
盗賊たちは、露になった咲耶のお尻がほんのり青白くて、幼さを残しているのをみて、狂喜した。
それは、触りたくて、たまらなくなるお尻であった。
さらに。
「みろよ、こっちのケツは白いぜ!!」
触手によって、パンツをまるごと脱がされてしまったアルテミスの無様な姿をみて、盗賊たちは思わず悶絶しそうなほど興奮した。
咲耶と違って、アルテミスの肌はどこまでも白かった。
そのお尻は、ぬめぬめとした液体に濡れていて、異様になまめかしかった。
「み、みないで下さい!!」
「くう、無礼な!!」
咲耶とアルテミスは顔を真っ赤にして、視線の矢から身体の大事な部分を隠そうともがいた。
「連れてけー!! ヒャハハハハハハ!!」
盗賊たちは、歓喜の声をあげた。
「ここは……?」
リネン・エルフト(りねん・えるふと)は、目を覚ました。
牢獄の中にいるようだった。
下着一枚にされて、足は、鎖につながれていてる。
盗賊たちにここまで連れてこられたのだということが、何となく理解できた。
すぐ側には、バニーガール姿の桜月舞香(さくらづき・まいか)が横たわっていた。
舞香は、下着姿にはされず、バニーガールのままでいるようだ。
「あっ、ここはどこ?」
ようやく目を覚ました舞香がいった。
「つかまったようだわ」
リネンは、暗い声でいった。
きっと、仲間が、救出にきてくれる。
そう信じたかった。
「うう……」
白石忍(しろいし・しのぶ)も、意識を回復させた。
忍の場合は、全身が炭をかぶったように汚れていたが、下着だけは、きれいなものだった。
しかもその下着は、サイズが大きいように思えた。
盗賊が、下着だけ履かせたような感じだった。
「ここは? つかまったんでしょうか。うう。こんな姿、恥ずかしいです」
忍は、両腕を身体にきつく巻きつけていった。
そのときになって、リネンは、気づいた。
自分たちの周囲にも、牢獄の中に、黙ったままうずくまっている多数の女性たちがいることに。
みな、死んだような目で床をみつめて、ぼうっとしていた。
リネンたちにも関心がない様子だった。
そこに。
「や、やめて下さい!! 乱暴にしないで下さい!!」
「咲耶お姉ちゃんを無礼に扱わないで下さい」
咲耶とアルテミスも連れてこられた。
2人とも、新しい下着を履かせてもらっているようだ。
ハデスもその館には連れてこられているようだが、牢獄は別なようだった。
「オラ、入れ!!」
盗賊たちは、下卑た笑いを浮かべて、下着姿の咲耶とアルテミスを鑑賞しながら、その背中を押して、牢に入れた。
「またつかまったのね」
リネンは、ため息をついた。
そのとき。
「ヒー!! もう我慢できねえ!! ボスには内緒で、いただこうぜ!!」
盗賊たちは、興奮きわまって、咲耶とアルテミスに襲いかかろうとした。
「きゃああ」
咲耶とアルテミスは悲鳴をあげた。
「やめて!!」
リネンは、盗賊たちを止めようとした。
「もう、バニーも怒るわよ」
「乱暴しないで下さい」
舞香と忍も、咲耶とアルテミスを守ろうとする。
だが。
「うぜえんだよ!! お前らからいじめようか?」
リネンたちを突き飛ばして、盗賊たちはにらみつける。
「ううっ」
鎖に拘束されているリネンたちは、思うように反撃できず、悔しさに唇を噛んだ。
そのとき。
「もう、その辺にして。ボスにいうわよ」
牢獄の奥にいた、髪の長い女性がいった。
ひときわ美しく、白い肌をしていて、また、頭もよさそうな女性だった。
だが。
「その身体は……」
舞香は、すぐに気づいた。
牢獄にいるにしては異様になまめかしいその肢体は、日々男性に抱かれている結果のものだということに。
経験により磨き抜かれたその肢体は、ひときわ男性をひきつける色香に満ちていた。
盗賊たちがその女性にがっつかないのは、ボスという存在のせいだろうか。
「うっ!! そうか。またな」
盗賊たちは、その女性を忌々しげに睨みつけると、何もせずに去っていった。
「ありがとうございます」
咲耶とアルテミスは、その女性に礼をいった。
「私はサヤカ。盗賊たちに殺された、この街の町長の娘よ」
その女性は、そう自己紹介を始めた。
「町長の?」
リネンは、目を丸くした。
「そう。ここは、町長の館、つまり、私の家につくられた牢獄なの。いま、この館は、盗賊たちのボスが自分のものとして使っているわ。そのボスが、私の父を殺したのよ」
サヤカは、暗い口調でいった。
その場にいた女性たちは、瞬時に悟っていた。
サヤカは、そのボスの「女」なのだ。
父の仇に身体を開く心境を思いやると、リネンは暗澹たる想いがした。
でも、なぜ?
全員が、同じ疑問を抱いた。
「ボスは、街の人たちをいっせいに虐殺して、全滅させるつもりでいたわ。私が奴の気をそらして、最悪の事態を回避しているのよ」
女性たちの視線の意味に気づいたサヤカが、いった。
サヤカは気丈にも、身体を張ってボスをコントロールしようとしているのだ。
内心では、燃えあがるような屈辱に耐えながら。
リネンは、ステラレの街の悲劇の一端を目にしたような気がして、いよいよ気が沈んだ。
「私たちは、どうなるんですか?」
忍が、気になることを聞いた。
「盗賊たちに、抱かれるわ。おとなしくしていれば、傷をつけられることはないわ。あまり乱暴なら、私が注意することもできるし」
サヤカは、淡々といった。
咲耶とアルテミスは、顔を見合わせていた。
これからずっと、牢獄に監禁されるのだろうか?
そうしたら、周囲の女性たちと同じように、自分たちも暗く沈んだ表情になっていくに違いない。
「おい、ボスがきたぞ!! 顔をあげろ!!」
盗賊たちが、牢獄の中に声をかけた。
リネンたちは、顔をあげた。
小山のような巨体の大男が、その身体には狭い牢獄の中に、ねじ入るように入ってきた。
「フフフ。新しい女か。たまには、サヤカ以外にも抱いてみたいものだな」
唇を歪ませて笑みを浮かべながら、その男はいった。
サヤカに聞こえているにも関わらず、男はそういっていた。
サヤカは、牢獄の床を黙ってみつめていた。
「あの、兄さんはどうなったんですか?」
咲耶は、気になっていることを聞いた。
「あの、イカれた科学者か。お前たちとの交渉の切札だから、大事につないであるさ」
その男、ボスは、ニヤッと笑っていった。
慈悲のかけらもない笑いだった。
「交渉、ですか」
咲耶の言葉に、ボスはうなずいた。
「そうだ。俺のメイドとしておとなしく働くなら、あの科学者は生かしておく。拒否するなら、殺す。簡単な話だろう」
ボスは、いった。
メイドになる。
それが、どういうことなのか、咲耶にはいまいちわからなかったが、きっと、いかがわしいことをされるのだろうとは思った。
「わかりました。ハデス様の安全と引き換えに、メイドをさせて頂きます」
咲耶の想いをよそに、アルテミスは、即答で答えた。
結局、咲耶もメイドになるのを承諾せざるをえない。
「それじゃ、後で部屋に呼ぶとしよう。とりあえず、いまは、このおもちゃで、いじめてやろうか」
ボスは、部下の盗賊たちに命じて、あるものを牢獄に入れさせた。
それは。
ういんういんういん
ハデスの発明品だった!!
「きゃ、きゃああああああ!!」
咲耶とアルテミスは悲鳴をあげた。
発明品の触手が伸びて、咲耶とアルテミスをとらえてきた。
「さあ、いつまで耐えられるかな? 助けて欲しかったら泣いて『許して下さい』を繰り返すんだな」
ボスは、悲鳴をあげる2人をいやらしい視線でみつめていった。
ういんういんういん
発明品は、情け容赦なく触手を伸ばして、2人を追い詰めた。
触手にとらわれた2人は、それぞれ、徹底的に身体を撫でまわされる。
「う、ふう」
熱い吐息をつき始めた2人の反応を、ボスは楽しくてたまらないといった様子でみつめていた。
そのとき。
「ボス。今日は、もう寝ましょう」
サヤカが立ち上がって、ボスの手をとっていた。
「うん? まだ早いんじゃないか。ああ、そうか」
ボスは、サヤカの目が何かを訴えているのをみて、うなずいた。
「本当に、好きモノなんだな。まあ、俺はその方が楽しいが」
ボスは豪快に笑って、サヤカの肩をつかんだ。
「ふふ。ボスと一緒に寝られるのが、私の楽しみです」
サヤカは、愛想笑いを浮かべていった。
「はっはっは。お前は、本当に素晴らしい身体をしているからな!! このままでは、ボロぞうきんになってしまいそうだ!! ははははは」
ボスは、いやらしい笑いを浮かべながら、サヤカのお尻を叩いて、連れていった。
発明品も回収され、咲耶とアルテミスは解放された。
「サヤカさん、私たちを助けてくれたんですね」
咲耶は、いった。
「そうね。誘惑の仕方も知ってるようだし、頭のいい人だわ。あんなボスにはもったいないくらい」
リネンはいった。
「でも、いまごろ、サヤカさんは……」
忍は、ボスとサヤカが寝ている光景を想像していった。
「そこは、いわないのよ」
舞香は、忍を止めた。
舞香としては、何とかボスを誘惑して虜にしたかったが、サヤカの美しさには、なかなか、かないそうもなかった。
ボスが夢中になるだけのことはある女性だった。
「このままでは、すまさないわ。絶対に脱出するわ」
リネンは、いった。
その場の全員が、うなずく。
盗賊たちが楽しみにやってきたら、適当に相手しておこうと、リネンは思った。
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