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リアクション
第4章 襲われる女性たち
「いよいよステラレの街上空に接近、ね。我ながら、ここまで来れたなんてすごいわ」
リネン・エルフト(りねん・えるふと)は、アイランド・イーリの窓から迫る街の情景を目にして、そう呟いた。
「さすが空賊団ですわ。自画自賛ですけれどね」
ユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)も、リネンの傍らから眼下を一瞥して、呟く。
「まっ、ただでさえ天候が悪いのにそこを敢えて突っ切って空から接近しようだなんて考えるのは、オレらぐらいだろうぜ」
フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)は、ニヤッと笑っていった。
早く降下して、人間のクズ同然の盗賊どもを抹殺して歩きたい。
そんな気持ちが募るので、フェイミィはうずうずとしていた。
「みんな、気をつけてね。いままで、この街を解放しようとした試みがなかったわけじゃないのに、全部失敗してるってことは、何かあるってことだから。失敗した連中は全員死んでるから、何があったか聞けないし」
操縦席で計器を睨んでいるヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)が、そういった。
いいながらも、ヘイリーの目は緊張を解かず、計器の表示を睨み続けている。
「確かに不安はありますわ。けど、みんな、やる気満々ですよね? 救助者の治療も必要ですし、今回はあたしも降りていいですか、ヘイリー?」
ユーベルが、ヘイリーに尋ねた。
「いいわよ、ユーベル。イーリは任せといて」
ヘイリーは快諾した。
タシガン空峡の義賊として知られる「シャーウッドの森」空賊団の団長は、今回は司令部の役を務めることとなった。
「暴風雨は突破できても、街の上空を飛んでいるあの魔物の群れを抜けるのは容易ではないわね。上空で待機中も、ヘイリーによく周囲を警戒してもらわないといけないわ。私たちは、予定どおり降下ね」
同じく、副長であるリネンがいった。
「それでは、さっそくいってきて。どうやら、街の入り口付近ではもう激戦が始まっているようだから。ここの盗賊たち、すごい人数」
ヘイリーは、地上の様子を観測していった。
「了解。それじゃ、いこうぜ」
フェイミィが、待ってましたとばかりに降下スタンバイに入る。
そのとき。
「ちょっと待ったー!!」
拡声器を通じて大空中にとどろきわたる、豪快な叫び声が空賊団の飛空艇を揺さぶり、ヘイリーたちを振り向かせた。
叫び声は、地上にいるローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)から放たれていた。
ローグは、すさまじい形相でヘイリーたちの船を睨みつけている。
同時に。
「なに、あれは? いつの間に接近してきたんだろ」
ヘイリーは、予想もしなかった脅威に身をこわばらせた。
イーリがいるのと同じ空中を飛翔して、イコンが、近づいてきているのだ。
味方?
いや、違う。
どうみても、相手は臨戦態勢だ。
しかも、こちらへの。
「ナイスタイミングで登場、だよね」
フルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)は、応龍弐式【爆撃型】の操縦席でニッコリ微笑んでみせた。
「とりあえず、指示が出たら無差別攻撃開始、ですね。別に空賊団だけを狙うわけじゃないんですが、ちょうどあそこにいますし、とりあえず撃墜させてもらいましょうか。もちろん敵ではありますし」
フルーネと一緒に搭乗しているユーノ・フェルクレーフ(ゆーの・ふぇるくれーふ)がいった。
「聞け、偽善者ども!! 空賊団も要するに盗賊だろが!! 報酬なしでやるとか、自分たちも盗賊退治をやるとかっていっても、結局同じだろ。盗賊はしょせん盗賊なんだから、容赦なく攻撃させてもらうぜ!! おっと、もちろん、他の盗賊たちも同じだぜ。無差別攻撃なんだからな!! よーし、いっけー!!」
ローグは、上空の飛空艇を指さして絶叫しながら、ついにゴーサインを仲間に出した。
「攻撃開始、だな。くれぐれも気をつけるのだ。敵は空賊団のみではなく、無数にいるのだから」
蛇矛の形態でローグに装備されているコアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)がいった。
「それじゃ、いくよ!!」
ローグの合図を受けて、フルーネたちの乗る応龍弐式が、リネンたちのイーリに接近しながら、攻撃を仕掛けてきた。
「くっ!! 回避だ!! 若干くらったか?」
ヘイリーは舌打ちして、イーリを旋回させた。
ぐわーん
相手の攻撃がイーリに炸裂し、震動が船内にわきおこった。
「やってくれるわね!! 盗賊を討つとかいって、無差別攻撃するってことは、敵味方お構いなしってことじゃない。あいつらこそ偽善者だわ」
リネンは、歯ぎしりしていった。
「とんだ邪魔が入りましたわね。降下はどうしましょうか?」
ユーベルが尋ねた。
「予定どおり決行して。どのみち、この船はこれ以上街の上空にいられないから。敵はあれだけじゃない」
ヘイリーは、必死で舵を切りながら、リネンたちにいった。
フルーネたちの応龍弐式以外にも、街の上空を飛びかっていた怪鳥や飛龍といった魔物たちが、こちらに押し寄せつつあった。
リネンたちが街に降下した後は、いったん街から離れて待機するしかないと、ヘイリーは状況判断していた。
「なに、心配することはない。降下したら、盗賊たちと一緒にローグたちもやっちまえばいいってことだぜ」
フェイミィが、降下スタンバイの姿勢を崩さずにいった。
「そうね。いくわ」
リネンは、うなずいた。
「それじゃ、いったん高度を下げるよ。健闘を祈ってる!!」
ヘイリーは、イーリを危険な街に近づけると同時に、指を鳴らした。
パチリ
それが合図だった。
「やっはー!! この瞬間を待ってたぜー!!」
フェイミィが、真っ先に降下していった。
「着地したら、すぐに戦闘よ。気を引き締めて」
「わかってますわ。やる気満々は変わりませんもの」
リネンの言葉にユーベルはうなずく。
本当は、ユーベルは、治療よりも、闘いをやりたいのだ。
女性を陵辱するような連中への怒りは、フェイミィだけではなく、ユーベルの中にも燃えているのである。
「たああああああああ!!」
駆け声とともに、リネンとユーベルの2人は街に降下していった。
「よし、ただちに、後退!!」
ヘイリーは、イーリを再び上昇させ、急速旋回させると、早急な離脱をはかった。
「みんな、あたしは船を守ってるから! 必ず帰ってきて!!」
ヘイリーは、祈るような心境だった。
「うわー、やられた!!」
フルーネは、悲鳴をあげた。
応龍弐式を操縦して後退したイーリを追おうとした刹那、空中を飛翔してきた魔物の群れに襲われたのだ。
「空賊団にかまいすぎましたか。これ以上街の上空で闘うのは難しいようですね。街の外に戻りましょう」
ユーノがいった。
「うん、ここからは離れるけど、とりあえず、不時着になるかも」
フルーネは、機体の制御に全神経を集中させた。
ごごごごごごご
機体は、煙をあげながら街の上空を離れ、危うい回転運動を示しつつ、街の外に不時着した。
ず、ずーん
着地の衝撃に、フルーネとユーノは耐える。
「とりあえず、損傷箇所を修復しなくちゃ。どのくらい時間がかかるかわからないけど」
フルーネは、ユーノとともに機体を降りて、ダメージチェックを始めた。
「やれやれ。ローグの健闘を祈りましょう」
ユーノは、ため息をついていった。
「くっそー、懲りずに降りてきやがって!! 迎撃だ!! 襲ってやるぜ!!」
ローグは、街に降下してきたリネンたちに徹底攻撃を仕掛けようと、蛇矛と化したコアトルを構えて、駆け出した。
と。
そんなローグに、盗賊たちが襲いかかってくる。
「てめえ!! 一人で乗り込んでくるなんて、いい度胸だ!!」
盗賊たちは、街にやってきた新参者に敵意を剥き出しにしていた。
「バーカ!! 一人じゃないぞ!! それに!!」
ローグは、蛇矛の切っ先を盗賊たちに向けて、振りまわした。
カキン
盗賊たちの剣が矛に弾かれ、刃が欠ける。
「げえっ、何だかすげー武器を持ってるぜ!!」
盗賊たちの顔が、真っ青になる。
「俺は一人で百人力なんだよ!! だから空賊団だって怖くねーんだ!! 無差別攻撃だからな!! お前らも地獄へ送ってやらあ!!」
ローグの矛が、数人の盗賊たちの胸を串刺しにして貫き、鮮血をしぶかせる。
盗賊たちは、攻撃が単調すぎるので、いっぺんに複数やられてしまったのである。
「あぎゃあああああああ」
「どけ!! 邪魔だ!!」
悲鳴をあげる盗賊たちの身体を蹴り飛ばして、ローグはリネンたちの方へ向かった。
「ゲスどもが!! 死ね!! とっとと逝け!!」
フェイミィは、金の戦斧を振りまわして、襲いくる盗賊たちを血祭りにあげていった。
どの盗賊も、フェイミィの姿をみるや否や、下卑た笑いを浮かべながら襲ってくる様子がまた、フェイミィを無性に苛立たせるのだった。
明らかに、フェイミィを倒し、動けなくさせた後のことを考えている顔だった。
昔の記憶がチクリとよみがえるので、余計嫌だった。
こういう奴らは、死んだ方がいい。
自分だけではなく、この世のためにも、心底そう思うフェイミィであった。
「ちみゃ!!」
一人の盗賊が、フェイミィの斧に脳天をかち割られ、脳漿をしぶかせながら倒れていく。
いい気味だ、とフェイミィは思った。
殺せば殺すほど、昔受けた傷が和らいでいくようにも思った。
「みつけたぞ、空賊団!!」
ローグが、そんなフェイミィに襲いかかってきた。
「いま、イライラしてるんだよ!! どこまでも敵対するというなら、殺すぜ」
フェイミィは、ローグの矛をたくみにかわしていった。
「ほざけ!! その威勢のいい口をきけなくさせてやるぜ!!」
ローグは、すさまじい気炎をあげながら、フェイミィに襲いかかってきた。
ただの野蛮人ではない。
相手が、戦士としてそれなりの研鑽を積んだ存在であることが、フェイミィにはわかった。
だから、手を抜けない。
「この斧が、何だかわかるかい? 天馬のバルディッシュっていうんだ、知ってるか?」
フェイミィは、金の戦斧を振りあげて、ローグに斬撃を放った。
「知らねーよ!!」
答えながら、ローグは危ういところで身をかわす。
二人の戦士は、互いの隙を狙って、睨みあった。
「どうせ、この後でリネンも襲うんだろう。それなら、いま、倒さなくちゃいけないな」
フェイミィは、ローグに本気で討ちかかった。
「ちいっ」
ローグの額に汗がにじむ。
攻撃を避けるのだけで精一杯だった。
これが、空賊団の力?
「いや、負けるものか!! しょせんは相手は盗賊だ!!」
ローグは、吠えた。
2人の戦士の闘いは、いよいよ激化した。
「囲まれたわ」
リネンは、ユーノとともに立ち往生していた。
予想を越える数の盗賊が、自分たちに押し寄せてきていた。
盗賊たちは、リネンとユーノの身体を交互に鑑賞して、興奮しているようだった。
身の毛のよだつ、ケダモノどもといえた。
「フェイミィはどうしたのかしら」
リネンは、仲間の所在が気になった。
ローグとフェイミィはまだ闘っているが、リネンはそのことを知らない。
リネンの当初の計画には狂いが生じてきていた。
「へっへっへ、手合わせお願いしますぜ、お嬢さん方!!」
盗賊たちは、いっせいにリネンにつかみかかっていった。
「リネン!!」
ユーノは、剣を振りまわした。
ユーノに斬られた盗賊たちが、次々に倒れていく。
鮮血が、あちこちから吹きあがった。
ケダモノを殺せたのだから、ユーノの意気は上がっていた。
「は、離せ!!」
リネンは、盗賊たちに全身をおさえこまれて、もがいた。
盗賊たちが、まずリネンを襲おうと決めたことが、ユーノには幸いを、リネンには不幸をもたらした。
「リネン!! いま行きますわ」
ユーノは、リネンの救援に向かおうとした。
「待って。あそこで女性が襲われているわ。私よりも、あの人を先に助けて」
リネンは、ユーノにいった。
リネンのいったとおり、盗賊たちが、近くの建物の中から一人の娘を引きずり出して地面に押し倒し、好き放題やろうとしているところだった。
「いや。やめて!!」
娘は、気も狂わんばかりの悲鳴をあげていた。
「わかりましたわ」
ユーノは、ただちにその娘を救出にかかった。
いっさい手加減せず、周囲の盗賊たちを斬り伏せ、絶命させる。
「大丈夫?」
ユーノは、地面に倒れたままぐったりしている娘に声をかけた。
娘の衣服はビリビリに破かれ、露になった肌には爪や歯でつけられた傷が無数にあった。
短時間の間に、ここまでやられるとは、凄惨な光景であった。
ユーノは、娘の治療にとりかかった。
「ショックだったと思うけど、心配いりませんわ。傷は治りますし、盗賊たちも、あたしたちが撃退しますわ」
ユーノは、娘に優しく声をかける。
娘は、徐々に回復していった。
そのとき。
「そういえば! リネンは!!」
ユーノは、リネンの姿を探した。
リネンの姿も、その周囲にいた盗賊の姿もなかった。
リネンは、連れていかれたのだ。
「くっ! 必ず助けにいきますわ!!」
娘の治療を優先しながらも、ユーノは心中で仲間の救出を誓うのだった。
「さあ、ケダモノだらけの街にやってきたわ。誰からフヌケにしてやろうかしら?」
桜月舞香(さくらづき・まいか)は、超ハイレグレオタードにハイヒールのバニーガール姿で街を歩きながら、あちこちに色目を使い、腰を妖しくくねらせた。
街に突入した生徒たちは入り口付近で盗賊たちと激戦になり、また、上空からリネンたちが降下して、ローグたちが妨害しようとしたことで、情勢は全体として乱戦気味になり、混沌としてきていた。
盗賊たちは、闘争本能の赴くまま、というか何も考えずにただ逆上して生徒たちと闘っていたが、闘いに参加せず、普段と同様に街を徘徊して適当に略奪してまわっている連中もいた。
舞香のターゲットは、そんな連中だったのだ。
「ああ、闘いの音がして怖いわ。誰か守って!!」
舞香は、谷間を自ら揺らしながら叫んだ。
すると。
「へっへっへー、姉ちゃん、いい格好してんなー? 守って欲しいのか? うん? じゃあ、一緒に来いよ」
本能の赴くまま行動している盗賊たちの一人が、さっそく釣られてきた。
盗賊は、舞香の肩を無造作につかんで、うなじに指を這わせる。
「はあ。野獣のように荒々しくて、頼りになる方だわ」
舞香は熱い吐息をついてみせると、盗賊に身体をすり寄せた。
「お、おおぉ!?」
ストレートな展開に、盗賊は、すっかり有頂天になってしまった。
「ま、守ってやるからさ、お尻を触らせろよ」
「いいわ」
舞香はうなずいて、自らお尻を盗賊の腰にこすりつける。
がしっと、盗賊はそのお尻をつかんだ。
舞香はびくっとしてみせた。
盗賊はますます興奮して、舞香をいそいそと路地裏へ連れ込んでいく。
「は、はあはあ、ここなら大丈夫だ。いま、俺が、心の底からの安心を与えてやるぜ!!」
盗賊は、血走った目でそういうと、舞香をきつく抱きしめて、唇を重ねようとした。
「う、うふううう」
甘く応じる構えをみせた舞香の膝が、跳ねあがった。
「ぎゃ、ぎゃあああああ!!」
急所を蹴られた盗賊の悲鳴が、暗い街角にこだました。
「うふふ。チアガールのハイキックはいかが?」
舞香は冷酷な笑みを浮かべながら、倒れ伏した盗賊の喉を斬り刻んだ。
ぶしゅううううう
鮮血が吹きあがる。
「あら。汚れちゃったわ」
返り血を拭いながら、舞香は次の標的を探して歩いた。
舞香を食べたいという野獣は、たくさんいるはずだ。
と。
舞香は足を止めた。
誰かが、監視している!?
異様な気配に、舞香は警戒態勢に入った。
「確かに、いい身体だな。少しばかり乱暴なところがあるようだが、たっぷりお仕置きしていうことを聞かせてやろう」
どこからか、囁くような声がした。
「誰!?」
舞香は、剣を振りかざした。
次の瞬間。
いつの間にか背後に忍び寄っていた全身黒ずくめの盗賊が、舞香を羽交い締めにした。
「離して!!」
もがく舞香だが、周囲に続々と他の盗賊が集まってくる。
「馬鹿め。盗賊の全てが、ノータリンだと思ったか?」
嘲笑う声と同時に、手刀が舞香の首筋に振り落とされた。
「ぐ……」
舞香の意識が、闇に沈んでいく。
「へへへ。よし、運べ」
気を失った舞香の身体を怪しく撫であげながら、黒ずくめの盗賊は仲間たちに指示を出した。
まさに、よだれの出そうな獲物だった。
「こ、これはひどい!! みなさん、病気で倒れていますね。それを、誰も手当てしないなんて!! 死んでも構わないということですか?」
白石忍(しろいし・しのぶ)は、街角に倒れ伏している、本来の街の住民たちの惨状をみて、愕然とした。
ステラレの街。
その窮状は、想像を絶していた。
「お嬢さん。悪いことはいわん。この街には関わらん方がいい。何かしようとしたところで、わしらは、もうダメじゃ。早く街を出るのだ。でないと……」
寝たきりの老人が、忍を見上げて、息も絶え絶えな口調でいった。
「そ、そんな、見捨てるようなこと、できません!!」
忍はそういうと、人々にヒールをかけ、応急処置を施し始めた。
「よせ。こんなことをしてくれても、何も見返りは出ないし、長くとどまればかえって不幸になるだけだ。遅かれ早かれ、この街は滅亡する。占拠している盗賊たちも、略奪するものがなくなれば、去っていくか、飢えてこの街と一緒に滅びるだろう。とどまっていれば、あんたも……ごほっ!!」
手当てを受けていた中年の男性は、しゃべりながらむせて、血を吐いた。
「静かにしていて下さい。今回は、私のほかにも多数が救援にきています。一人では無理でも、みんなでやれば!!」
忍は、死にかけている人々にせっせと軟膏を塗ったり、包帯を巻いたりした。
「少なくとも、お嬢さん、あんたは行くべきだ。あんたはけなげで、美しいし、色っぽいところもある。だから……」
「えっ?」
一人の老人の言葉に、忍は照れたような表情になったが、その手は住民のケアを続けている。
「ここの盗賊たちが放っておかないのだ。いままでこの街を解放するためにときたまやってきた戦士たちもいたが、男はみな殺しにされ、美しい女性の戦士がいた場合は、その戦士は……つながれて……ぐふっ」
別の老人は、ガクガクと身体をふるわせながら言葉を紡いでいたが、ついに、途中で力尽き、唇を閉じて、全ての動きを停止した。
「あ、ああっ!! しっかりして下さい!!」
忍は、その老人を必死で介抱したが、既にこときれてしまっていた。
「死ぬんだ……みんな……同じように……」
誰かがそういい、絶望に満ちたため息が、その場に漂った。
「ダメです!! 私は、絶対にそうさせません!! みなさん、希望を持って下さい!! 私が、力いっぱいケアしますから!!」
忍が叫んだ、そのとき。
「じゃあ、俺たちも、ケアしてくれよー」
いやらしい声がして、忍は心臓がドキンと高鳴るのを覚えた。
がしっ
忍の手が、毛むくじゃらの手につかまれる。
盗賊たちが、忍の周囲を取り囲んでいた。
「い、いや! やめて!! 離して!!」
忍は、悲鳴をあげた。
盗賊たちの手は、遠慮なしに忍の身体をまさぐり、衣の下に這い込んでくる。
「へへへ。どうだい、こうされてる気分は?」
盗賊たちの下卑た笑いは、忍に嫌悪感しかもたらさなかった。
「い、いやぁ!!」
泣き叫ぶ忍の頬に、平手打ちが飛んだ。
「だからさぁ、ケアしてくれよ!! 俺たち、お前をみていてさぁ、たまらなくなっちまったんだからよ!!」
忍の胸元にぎらつく視線を据えながら、盗賊たちは、彼女の衣を左右からつかんで、強く引っ張った。
「ほーら、せーの!!」
「みえちゃうぞー、へっへっへ」
ビリビリビリビリ
盗賊たちは、忍の衣をひと息に引き裂いて、その肌を露にさせてしまった。
その瞬間。
生まれたままの姿にされた忍は、恥ずかしさで頭が真っ白になるのを感じた。
「きゃ、きゃああああああ!!! いやああああああああ!!」
悲鳴とともに、炎の術を発動させられる。
ちゅどどどどどどーん!!!!
大爆発が、その場に巻き起こった。
「ぐ、ぐぎゃあああああああ」
悲鳴をあげて、盗賊たちは爆炎の中で息絶えた。
爆発の炎が衰えると、そこには、全裸でうつぶせに倒れ、お尻を天に向けている忍の姿があった。
そこに。
「おっ、うまそうなお尻が転がってるぜ。ちょっと焦げてるけどな」
別の盗賊の団体がやってきた。
「洗ってから楽しもうか。運んでいこうぜ。へっへっへ」
盗賊たちは、嬉々として、失神している忍を担ぎ上げて、そのなまめかしい身体を鑑賞して悦に入りながら、どこかへ運んでいった。
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