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今日は、雪日和。

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今日は、雪日和。

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 ■ 雪の1日 ■



 何か寒いと思ったら、窓から見える外は雪。それもかなり積もっている。
「そら寒いわけだ」
 布団の中からそれを見て、アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は納得する。
 こんな寒いのに布団から出たり出来ない。
 幸い今日は休み。布団の誘惑を振り切らなければならない理由も無い。
 アキラはぬくぬくと惰眠をむさぼった。この幸福感は何物にも代え難い。
 体温でほんわりと温まった布団にくるまって、再びとろとろと眠りかかったそのとき。

「アキラ、まだ寝ておるのか」
 ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)が呆れた口調で部屋に入ってきた。
「いい加減に起きるのじゃ」
「今日は休みなんだから、ゆっくり寝かせてくれよー」
 アキラはもぞもぞと布団に潜り込む。
「お父さんはもう雪かきに出掛けておるというのに。貴様も少しはお父さんを見習って手伝うのじゃ」
「えー、お父さんがしてるんなら、任せておけばいいじゃねーか」
 起きたくない一心でアキラは激しく抵抗したが、
「何を怠けたこと言っておるんじゃ。ほれ起きんか!」
 遂に実力行使に出たルシェイメアに、力業で無理矢理たたき起こされてしまったのだった。


 この家で1、2を争う早起きは、なんといってもぬりかべ お父さん(ぬりかべ・おとうさん)だ。
 怠惰とは縁のないお父さんは、今朝も起きて外が大雪なのを確認したら、すぐに身支度を調え自主的に雪かきに出掛けた。
 まずは玄関から外、ペット小屋までの道の雪をかいて通れるようにする。そのうちにセレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)がやってきて、お父さんが作った道を通ってペットの様子を見に行った。
 ペットといっても、巨大生物を含む大所帯。普通のペット小屋とは規模が違う。
 広大なペット小屋にも関わらず、セレスティアはその全体が暖まるようにと暖房をがんがんたいた。
 これだけ広いと暖房代もばかにならないけれど、そんなことは気にしない。
 雪が降れば人が寒いようにペットも寒いだろう。寒い思いをして震えてたりしたら可哀想だ。
 それに燃料代よりも病気の治療するほうがお金がかかるのも事実。
 ペットが元気に過ごしてくれるのが、ペット自身にとっても財政的にも良い。
「みんな元気にしてますか?」
 餌をやりながら、セレスティアは1匹1匹の様子を見て、様子のおかしい子がいないかどうかを確かめる。
 寒さに弱い子もいるけれど、体調を崩している子はいないようだ。
「もうすぐ暖房が効いてくるから待ってて下さいね」
 身体をさすりながら声をかけると、セレスティアは順番にペットの様子を観察していった。

 その間もお父さんは着々と雪かきをしていった。
 どっしりとした身体の所為もあって、お父さんの動作はゆっくりだ。
 けれど腰を据えて、大量かつ確実に雪をかいてゆくから、お父さんが作業をした後はきれいに雪が取り除かれている。
「うわー、きれいになってるな。俺の出番は無いんじゃね?」
「いいからやるのじゃ」
 まだ布団が恋しいアキラが逆戻りしようとするのを、ルシェイメアが断固として止めた。
「こんな寒い中雪かきかー」
 アキラはまだ抵抗していたが、不意に思いつく。
「こんなんみんな火術で溶かしゃーいーじゃねーか」
 これは名案だと、アキラは早速雪を火で溶かしていったけれど。
 ぱっと見は、雪が溶けていい感じなのだが、溶けた雪が再び凍り付き、氷となって足下を滑らせる。ふんわりした雪は水分を含んでじゅくじゅくと重くなり、溶けたところはどろどろ、再凍結したところはガチガチ、という厄介さ。
「あれー、っかしーなー」
「貴様は雪かきの邪魔をしに来ておるのか?」
 ルシェイメアにもつっこみを入れられ、アキラは仕方なく地道に雪をかく方法に切り替えた。
 始めるまではぶつぶつ言っていたけれど、いざやり始めるとアキラは黙々と雪をかく。
 そんなアキラがさぼったり妙な行動をしたりしないよう見張りながら、ルシェイメアも雪かきをした。

 ざくざくと雪をかき、かいた雪はお父さんが集めて川まで持ってゆき、そこに落として処分した。
 家の前の道の雪をかき終えると、今度は近所の家の雪もかく。
 それも一段落つくと、ルシェイメアは一足先に家に帰り、アキラとお父さんは公園で子供たちと遊んだ。
 雪を集めてかまくらや雪のすべり台を作ったり、大小の雪だるまを作ったり。
 お父さんが家に戻った後も、アキラは遊び疲れるまで子供たちと雪で遊びまくった。


 それぞれのタイミングで家に帰ってくると、あとは皆のんびりと思い思いに家の中で暖かく過ごした。
 子供たちと思い切り遊んだ所為か、こたつでぬくぬくしているうちにアキラはいつしかうとうと夢の中。
「こたつで寝ると風邪を引くじゃろう。部屋に布団を敷いたから、はようそちらで寝るのじゃ」
「う、ん……」
 ごしごしと目をこすりながらアキラは自室へと戻ると、布団に潜り込んだ。
(せっかくの休みだったのになぁ……)
 1日、雪とたわむれているうちに終わってしまった、とアキラは朦朧とする意識の中でそんなことを考える。
 特に何をしたというわけでもなく1日が過ぎてしまったけれど……これはこれで楽しかったからよしとしようか。
 まだ暖まりきっていない布団の中。
 閉じたまぶたの裏に、ちらちらと降る雪の幻影を見ながら、アキラは心地よい眠りへと引き込まれてゆくのだった――。