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第15章 たまにはレストランで

「たまには外食ってのもいいよね?」
 空京に実習に来ていたミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は、パートナーの和泉 真奈(いずみ・まな)と、イシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)と共に、ランチタイムに繁華街を訪れた。
 普段は学食ですますか、持ち回りで作ったお弁当を持ってきているのだけれど、たまには外食もいいかなと思って、ミルディアは皆を誘ったのだ。
「まぁ、たまには外食も良いのではないでしょうか」
 真奈は元々昼食はとらないのだが、今回はミルディアに誘われたので付き合って一緒に食べることにした。
「あのお店だよ。たまにの外食がファーストフードじゃ面白くないし、そこそこなところにしたの」
 ミルディアが皆を連れてきたのは、ビルの3階にあるレストラン。
 美味しい洋食が食べられるお店だ。
「結構いいお店だよね〜。こういう店ならディナーのが良かったなぁ〜」
 入口のメニューを見ながら、イシュタンが言った。
「こういうお店って、ランチでも美味しいのは確かなんだけど、どうせたまにしか行けない外食なら、やっぱりディナーの方がなぁ〜」
「じゃ、今日はやめてまたいつかディナーに来る?」
 ミルディアが不服そうなイシュタンにそう尋ねると、イシュタンは首を左右に振る。
「ううん、今日行く。またいつかが当分先になりそうだから〜」
 くすっと笑って、ミルディアはイシュタン、それから真奈と一緒にレストランへと入った。
「ん?」
 入ってすぐ側の席に、ミルディアは見たことのある人物の姿を見つけた。
 一人でドリンクを飲みながらぼーっとしているあの女性は確か――。
「雅羅、さん?」
 ミルディアが声をかけると。
「ごめんなさい」
 雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)が突然謝罪してきた。
「どうしたの? なんか元気がないみたいだけど……1人? ご一緒してもいいかな?」
 四人掛けの席に一人で座っていた雅羅に聞くと、雅羅は少し戸惑いつつ「はい」と頷いた。
「こんにちは〜」
「よろしくお願いしますね」
 イシュタンと真奈も挨拶をして、席に着く。
「ご飯まだだよね? 一緒に食べよっ」
 ミルディアが明るく声をかけると、雅羅がふっと息をつく。
 ミルディアとイシュタンはハンバーグランチを。
 真奈と雅羅は軽めの温野菜スープランチを頼んだ。
「落ち込んでたみたいだけど、なんか失敗しちゃったのかな?」
 ミルディアが雅羅に尋ねる。
「友達とランチの約束をしてたんだけど……ここに来る途中、事故に遭ったみたいで来れなくなっちゃったの。怪我はないらしいんだけど、私の“災厄体質”のせいかなって」
「そんなわけないよ」
 ミルディアは明るく言った。
「あなたが一緒の時に、だったら、気にするのはわかるけれど、一緒じゃなかったんでしょ? 絶対関係ないって! それに、あなたが気にしている以上に、友達は気にしてるんじゃないかな? 事故のこともショックだし、あなたにそう思わせてしまっていることもね」
 だから、今度会った時には謝ったりせずに、ちゃんとお友達を励ましてあげないとね! と、ミルディアは雅羅に元気に言うのだった。
「そう、ね。ありがとうございます」
 雅羅の顔が、少し晴れた。

「ホント、飛空艇とかとは違って、風に乗って空を泳いでる感じで、楽しいの!」
 食事をしながら、ミルディアは最近パラミタでも流行っている、スカイスポーツのパラグライダーについて、皆に話していた。
「やってみたいとは思うけれど……別の飛行具も用意しておかないとね、私の場合」
 雅羅はスープを飲みながら、苦笑気味に笑った。
「うん、ちゃんと用意してやれば大丈夫だって。お勧めだよ」
「ミルディアさんは、パラグライダーの競技とかも出てるの?」
「あ、そこまではやってない。レジャーとしてやってみただけ、かな。あたしは楽しいものとか、流行ってるものとかはとりあえずやってみるんだけど、実際に定着するのって少ないんだよね」
「特にスポーツは、何でもやってみる方ですよね、ミルディは」
 サラダのミニトマトを口に運びながら、真奈が言った。
「うん、どれも楽しいんだけどねー。あと、スイーツにもとっても興味があって」
「それも凝ってるってわけじゃないよね。美味しいものを食べるのが好きって感じで。流行りのスイーツとか、服とか、遊びのスポットとかは私の方が知ってるかなぁ〜」
 イシュタンは、ハンバーグを小さく切って、自分の口に運ぶ。
 マナーは、2人にしっかり習っているので、百合園生らしい上品な振る舞いで食べていく。……ちょっともどかしくもあったけど。
「最近人気のお店はね〜……」
 食べながら流行りのお店や、流行りの遊びなどについて話して、イシュタンは楽しそうに微笑む。
「やっぱ人生遊ばないと! 最高に楽しんでこその人生だよね♪」
 イシュタンの言葉に、雅羅は「そうね」と笑みを見せた。
「遊んでばかりでは、駄目ですけれどね。でもこういう時は、存分に楽しまないともったいないですよね」
 真奈はデザートのメニューを広げて、ミルディアに渡す。
「さあ、デザート頼もう! 何にしよー、全部食べたいね」
「ふふ、ええ。楽しまなくちゃね……」
 デザートの品数はとても豊富だった。
 雅羅はミルディアと一緒にメニューを見て、チョコレートパフェにしようかなと呟いた。
「それじゃ、フルーツ&チョコレート、アイス&プリン、デリシャスキングサイズパフェを頼もう!」
 ミルディアが楽しそうに言う。
「ミルディ、そんなメニューありません」
「えー、オーダーメイドOKって書いていあるから、きっと作ってくれるよ」
 大丈夫! と。
 ミルディアはオーダーメイドでパフェを頼んで。
 届いた大きくてボリュームのあるパフェを、4人で食べたのだった。