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お月見の祭り

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お月見の祭り
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(き、来てくれるかなー……こなかったら僕、道化だよなー……)
 湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)は、池の畔に呼び出したベルネッサ・ローザフレック(べるねっさ・ろーざふれっく)を待っていた。
 凶司は先日、片思い中のベルネッサにうっかり告白をしてしまい、今日はその日以来、初めてベルネッサを月見に呼び出したのだ。
(いや、でも……こなければ嫌いって言われずにすむ……)
「いや何考えてるんだ僕はッ!?」
「どうしたの?」
「うわあっ!!」
 心の中の声が口に出ていただけでなく、あろうことかタイミングでベルネッサがやってきたのだ。凶司は初っ端から動揺しきりである。
「こ、こんばんは……」
「こんばんは」
「あ、その……つっ、月が綺麗でしゅねっ!」
 思い切り噛む凶司。
「それで、今日はお月見するんでしょ?」
「あ、ええと、はい……」
 ベルネッサが来てくれるのか、嫌われていたり笑われたりはしないだろうかと、凶司は内心戦々恐々としていたのだ。
「それでは、行きましょう」

 多くの人が乗る大船の片隅に、凶司とベルネッサの姿があった。
「えぇと……先日は、どうもすいません」
 船の端だからか、他の人たちの感嘆の声や笑い声はそこまで騒がしくない。
「こういう静かなところは、苦手ですかね……?」
「そんなことないわよ。それで、話があるんでしょ?」
 凶司は、唾を飲み込んだ。
「その……この間、中途半端に切れてしまった気持ちの続きを話したいんです」
 ベルネッサは何も言わず、話の続きを促すように首を振った。
「……自分の事ばっかりですいません……ただ、その、ハンパにはしたくなくて」
 そう前置きをして、凶司は話し始める。
「僕はまぁ、こういうナリなんで……初対面だと割と距離置かれがちというか、嫌われがちというか、なんですよね。もちろんlコッチ(ハッカーとしての腕)で見直してくれる人が多数ですし、自信はもってますけど」
 そう言って凶司は、手でパソコンを打つ仕草をする。
「……そういうの抜きで、最初から僕を見てくれたのは……あなたが、その初めてで……」
 凶司の声はだんだんと消え入りそうになっていく。そんな凶司の様子を見ていたベルネッサが、ふう、と溜め息をついた。
「……凶司、まずは」
 そこまで言って、ベルネッサは凶司の顔を覗き込んだ。
「『あなた』とか『ベルネッサ』じゃなくて、『ベル』って呼んでちょうだい?」
「えっ、あ、はい」
 慌てて答える凶司に、ベルネッサはおかしくなったのか、ぷっと吹き出した。
「あなたのことは、もう少し時間をかけて考えさせて? 別にあなたのこと嫌いになったとかそういうのじゃないから、怯えないで、ね?」
「は、はいっ!!」
 凶司は、ベルネッサに嫌われていなかったということを受け止めるだけで精一杯だった。