リアクション
辻永 理知(つじなが・りち)は辻永 翔(つじなが・しょう)と夫婦で浴衣を着て、創世学園へと向かっていた。
「翔くん、やっぱり浴衣姿もカッコイイね。とっても似合ってる!」
「理知も、浴衣が似合っていて可愛いな」
お互いにお互いのことを褒め合って、何となく照れたりもして。
そんな何でもない時間が、理知はとても幸せだった。
理知と翔は小舟を借りて、ゆっくりと揺られながら池の上からお月見をすることにした。
「去年も小船を借りてお月見したよね」
理知は去年のお月見のことを思い出しながら、そう呟いた。
「前と同じように、団子を飾るのか?」
「そうしようかなっ」
理知は持ち込んだお団子を飾り、頭上の月を見上げた。
「……月を見上げる機会って少なくなってる気がするな」
「確かに、普段の生活の中で、あまり見上げる機会は少ないな」
「でも神秘的な雰囲気だよね。池に映る月も綺麗だし」
理知は水面で揺れる月を見ながら、微笑んだ。
「翔くんと一緒に見られて、良かったなっ」
「俺も、理知と一緒に見られて嬉しい。これからも一緒にお月見しような」
翔と理知は、お互いにどちらともなく微笑み合う。
「月が綺麗ですね」
理知は、その言葉がこの雰囲気には本当に合っていると思う。
「翔くん、愛してる」
いつもは「好き」と翔に伝える理知だったが、今日は「愛してる」と言いたかった。
それは、月の持つ不思議な力を借りて素直な気持ちを伝えたい、と思えたからだった。
「理知……俺も、愛してる」
翔の言葉に理知は驚くと同時に、どこからか沸き上がってきた愛おしさを感じた。
いつも照れてしまう翔が、「愛してる」と言ってくれたのも、月の力のおかげだろうか。
理知は、自然と体が動くように翔を抱きしめた。もっと触れたい、と、理屈ではなく、感じるのだ。
翔も、同じように理知の背に手を回す。
そして、月明かりの下で、理知と翔は長くて甘いキスをした。