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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)と小舟に乗って、お月見をしていた。
「今夜は、本当に月が綺麗ですね。風流です」
 去年、東屋から見上げた月を思い出しながら、陽太は舟の上から見える月を眺める。
 自宅で。空京のホテルで。仕事で赴く様々な場所で……いつも2人で行動している陽太と環菜だったが、小舟の上でニルヴァーナの名月を2人で堪能する時間は、今この瞬間だけしか味わえない。
 去年見た月と今年見る月も、同じだけれど違うのだ。
「…………」
 環菜は黙って、陽太と同じように月を見上げている。見とれているのだろうか、それとも何か別のことを考えているのだろうか。
 そんなことを考えるのも、陽太にとっては楽しかった。

「この間、海京のプールで舞花の友人のヴァレリアさんから『お二人は、理想の夫婦という感じがしますわ』と伝えられて……恥ずかしかったですけど、同時にとても誇らしい気分になれて嬉しかったです」
「そうね。その言葉に恥じないような、素敵な夫婦でこれからもいたい、と思うわね」
 環菜もその時のことを思い出したのか、少しだけ頬を緩める。
「そう思うと、舞花にもこの時代で友人や知り合いが大勢出来ているようで……先祖として微笑ましいですね」
 陽太は水面に映った月を眺める。
「鉄道事業のことも、まだまだ先は長いですが、それでも以前に比べてかなり軌道に乗ってきていて感慨深いです」
「一歩ずつ前に進んでいることが分かるのは、嬉しいことね。これからも頑張りましょう」

 それから陽太と環菜は、様々な話をしながら過ごした。ひとしきり話をした後で、陽太は月うさぎの餅を取り出した。
「いただいた月うさぎの餅を、半分ずつに分けて食べましょう。『このお餅を分け合って食べると永遠に結ばれる』という伝説があるそうですよ」
「素敵な伝説ね」
 陽太は月うさぎの餅を半分に分けると、環菜に差し出した。
「あと、飲み物も必要ですね」
 陽太はお茶を注いで、環菜に渡す。二人はお餅とお茶を楽しみながら、変わらず綺麗な光を放つ月を見上げた。
「やっぱり甘いものにはお茶の方が合いますね」
「そうね。体が温まるわ」
 ひゅう、と穏やかな風が水面を吹き抜けていく。
「風も少しずつ冷えてきて、だんだんと涼しい気候になって来ましたね。もう少し寒い時期になったら二人で温泉に行きませんか?」
「良いわね。温泉で温まってゆっくりすることも、大切だもの」
 微笑む環菜を、陽太はそっと抱きしめた。こうして夫婦で過ごす時間が、本当に愛おしかった。
「愛してます環菜」
「私も、愛しているわ」

 舟に揺られながら、陽太と環菜は改めて幸せを実感していたのだった。