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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 フェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)は、シェリエ・ディオニウス(しぇりえ・でぃおにうす)を誘ってお月見の祭りにやって来た。
 パラミタとは違った月見ができると聞いてシェリエを誘ったまでは良かったのだが。
「カップルばっかりだね……」
 シェリエは、周囲にカップルが多いことを気にするように、キョロキョロと見回した。
「というわけで私が今からシェリエの恋人だ。さぁ、ドーンと甘えるといい」
「ふふ、ありがとう」
 シェリエは、冗談めいて言うフェイの気遣いを嬉しそうに受け止めた。
 だが、フェイは内心、本気でもあった。
「舟から月見をしよう」
 そうフェイが提案したのは、周囲にカップルがいないからでもあり、シェリエと二人きりになりたいからでもあった。

「パラミタで見る月と、何となく違うわね」
 月明かりに照らされたシェリエは、綺麗だ。さきほどからフェイは、周囲の景色を見ることもできず、シェリエに見とれていた。
「……シェリエはやっぱり、将来恋人ができたらこういうイベントに来てみたい?」
 フェイは、シェリエのことばかり見つめていたことを悟られないように、そう呟いた。
「え? そうね……うん。素敵な恋愛をして、お月見とかのイベントを楽しめたらいいなって思ってるわ」
 楽しそうに笑うシェリエを見て、フェイは胸の奥がズキと痛んだ。
(……その時、隣にいるのはきっと私じゃないんだろうな)
 フェイは、空を見上げる。
(シェリエは私にとって、あの空に浮かぶ月だ。淡く光る姿はすごく魅力的で、こうして目に見えて手を伸ばせば届くかなって思って手を伸ばしても絶対に届かない。
 ……湖に浮かぶ月だって、手を伸ばせばゆらゆら揺れるだけで手にできない)
 シェリエは、フェイの想いを知らないまま、じっと月を眺め、舟に揺られる感触に身を委ねている。
(それと同じように私はシェリエと恋人にはなれない。だってシェリエは女の子で私も女だ。……そうわかっていても、どうしようもないぐらい好きになっちゃったんだ)
 フェイは、改めて自分の想いを認識する。
(でも、伝えることなんてできない。もしこの想いを伝えたところできっと拒絶される。そうしたら今みたいに一緒にいられなくなる。それだけは絶対に嫌なんだ……)
 そう考えると、フェイの目に涙が込み上げて来た。だが、今は目の前にシェリエがいる。今はまだ泣かないように……と、フェイは涙をこらえた。
「どうしたの? 大丈夫?」
「……ちょっと、月を見過ぎて目が乾いた」
 今日の月は、一時も目が離せないぐらい綺麗すぎるから。
「こうして見ると、本当に月が綺麗ね……」
 池の月を見つめて呟くシェリエと、フェイは目を合わせられないまま、水面の月を見つめていた。