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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 シャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)は、竹林の中にある東屋でセイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)が来るのを待っていた。
 シャーロットは、差し込む月明かりにハートの機晶石ペンダントをかざした。そして、このペンダントと対になるものを、セイニィの首にかけた時のことを思い出していた。
(あの時はセイニィへの想いが恋愛感情だと思っていませんでしたが、大切だという思いは今も変わりませんね……)
 シャーロットの脳裏に、様々な感覚が蘇ってくる。セイニィと過ごした時間のことや、セイニィに対して抱く感情についても……。

 そうこうするうちに、東屋の入り口にセイニィがやってきた。
「あ……」
 セイニィは、シャーロットの手にあるペンダントを見て、懐に手をやった。
 そして懐から出した手には、シャーロットのものと対になるペンダントが握られていた。
「月が綺麗ですね」
 シャーロットに言われて、セイニィは月を見上げる。
「そう思う気持ちも、分からなくもないわね」
 セイニィの言葉に思わずくすりと笑って、シャーロットは長椅子に腰掛けたセイニィを見つめた。
「ペンダント、持っていてくれたんですね」
「た、たまたま持っていたのよ!」
 シャーロットとセイニィは、黙って月を見上げた。
「……私の国の言葉で『I LOVE YOU』……つまり、『あなたを愛しています』という言葉を『月が綺麗ですね』と、日本のある作家は訳したそうです」
「ふうん……」
「太陽は自ら光を発し、月は太陽に照らされ輝きます。セイニィは太陽のように周囲を明るく照らせる人、なら私はさながら月でしょうか」

 お酒を注いだ杯に月を映し、シャーロットとセイニィは乾杯した。
 二人の間に、少しの間無言の時間が訪れた。
「どんな時でも、どこにいても。私は、あなたが一番大切。一番、愛しています」
 シャーロットの言葉を聞いて、俯きがちだったセイニィが顔を上げた。
「……『月が綺麗ですね』とは、言わないわ……」
「え……?」
「……でも、今まで、色んなところに何度も誘ってくれて、その度に気を使ってくれて、……その、本当に嬉しかったんだから。
 だから、これからも、何でも話せていつでも楽しくいられる存在でいなさいよね」
 回りくどいような言い方をしているセイニィだったが、セイニィなりに真っ直ぐ想いを伝えようとしていた。
「それは、つまり……?」
「……ああもう! どっちにしろあんたは特別な人だっていってるの!」
 そっぽを向いたまま、セイニィは小さい声で「……これだって、たまたま持ってたわけないでしょ。それくらい分かりなさいよ」と付け足した。
「一緒に出かけたり話したりできれば……その、幸せ、だから……」
 消え入りそうな声ではあったが、それはセイニィなりの精一杯の感情表現だった。
「だから、これからも、あたしの特別な親友でいてほしいのよ……!」
 セイニィの言葉は、長い間決めかねていた想いに決断をつけるような、はっきりとした声だった。