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パラ実分校種もみ&若葉合同クリスマスパーティ!

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パラ実分校種もみ&若葉合同クリスマスパーティ!

リアクション

「パッフェル。ボクは学んだんだ、リーアさんが絡むと必ずトラブルが起きると」
 ネージュが作った料理を食べながら、桐生 円(きりゅう・まどか)パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)に言った。
「トラブル……?」
 パッフェルは辺りを見回してみるが、特にトラブルは起きていない。
「よく見てよ、こんなに寒いのに何故か薄着の人が多い」
「……確かに」
 若葉分校が用意したケーキやお菓子は、魔女のリーア・エルレン(りーあ・えるれん)に協力してもらって作ったものらしい。
「見えた地雷は回避しないと」
「……体、温かくなる、だけなら、いいんじゃない?」
「うーん」
 考えながら、円はテーブルの上に置かれたチキンやサラダ、クッキー、プリンを見る。
「風邪、ひかないために。円、どうぞ……」
 パッフェルがプリンをスプーンですくって、円の口に近づけた。
「ありがと、パッフェル。それじゃ少しだけ」
 食べてみたら、そのプリンは柔らかくて甘くてとっても美味しくて。
「もうすこしだけ! 少しだけ! ちょっぴっとだけ!」
 と言いながら、円は結局1個全部食べてしまった。
「温まってきた。パッフェル! ボクが駄目になったらとめて……」
 コートを脱ぎながら円がパッフェルを見ると、パッフェルはリーアが作ったと思われるケーキをもぐもぐ食べているところだった。
「パッフェルも食べ過ぎは駄目だよ! パッフェルを独り占めしたいし、ね」
 少し焦りながら円が言うと、パッフェルはこくんと首を縦に振った。
「体を温めるために食べるのでしたら、こちらの方が安全ですよー」
 ドン ドン ドオンと、円とパッフェルの前に何かがおかれていく。
「腕によりをかけて、ケーキ作ってきましたー。私が」
「い、一緒に作れればよかったんだけど……」
 得意げな顔の ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)の隣には、苦笑している桜井 静香(さくらい・しずか)の姿もあった。
「くっ、これも地雷、地雷だ」
「…………」
 パッフェルの影に隠れるように円は怯える。
 パッフェルはそのロザリンドがケーキと言っていたものを、不思議そうに見ていた。
「なんだか強いお酒の匂いが……あ、ロザリンドさんに、円さん……何を召し上がっているんです?」
 近くのテーブルにいた雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)が顔を向けたきた。
「リナさんと鈴子さんじゃないですか! 今から私が作ってきたケーキを食べるところです。ご一緒にいかがですか? 私が1人で作ったので安全ですよー」
 にこにこ微笑みながらロザリンドが言い、リナリエッタと鈴子をそのテーブルへと招いた。
「こちらはジンジャーケーキです。身体が温まるように、生姜を入れました」
 それは中には包丁でスライスした生姜が入っており、上には紅ショウガが乗った斬新なケーキだった。
「もう一つは、ブランデーケーキです。ちょっと柔らかくなってしまいましたが、しっとりしていて美味しいですよ」
 中にブランデー1瓶分入った、ぐっちゃりしたケーキだった。
「はい、円さんあーんして」
「う、うう……」
 しかし、1口くらいは付き合いとして食べなきゃダメだよねと、円はパッフェルの腕をつかみながら口開けて、ロザリンドの温まるブランデーケーキを食べたのだった。
「うっ、まずっ!?」
「まず? まずなんですか、円さん?」
 真剣な目ですごむように尋ねてくるロザリンドに、本当のことが言えず円は言葉とケーキを飲み込む。
「まず……くはないよ、普通だよ! きっと!」
 脂汗をかきながらそう答えると、ロザリンドは微笑で。
「そうですか。美味しく作れるようこれからも頑張りませんと! こちらも是非食べてみてください」
 張り切りながら、ロザリンドはジンジャーケーキをパッフェルの皿に乗せた。
「ええっと、こ、こういうのもいいけど、アレンジよりもっと基礎を大切にするといいよ、ロザリンドさん」
 静香が頑張ってアドバイスしている。
「パッフェル、一つ学んだよ。大人の人付き合いって我慢する事だよ……」
 円は密かに大きくため息をついた。
 ジンジャーケーキの方も、食べないわけにはいかなそうだ。
「ちょっとした事を我慢することで普段のコミュニケーションが円滑に……あっ、ジャリっていった。美味しくない、美味しくないよう」
 涙目になっていく円を不憫に思い、パッフェルも食べるのを手伝うが。
 すぐに手を止めてしまう。それはそれは素晴らしい味だった。
「さ、リナさん、鈴子さんも召し上がれー」
 ロザリンドはリナリエッタ、鈴子の皿にも強制的に乗せた。
「ほ、ほら、ロザリン、他の子もほしがってるよ、あげてきなよ!」
 円が言うと、ロザリンドは「そうですね」と立ち上がった。
「さあ、皆さんも!」
 そしてロザリンドは周辺のテーブルにいる人達に配って回りだした。
「……被害を少なくするため、戴いておきましょう」
「え、ええ……」
 鈴子とリナリエッタは小声でそう相談すると、スープやサラダと一緒に、ロザリンドのケーキを少しずつ飲み込んでいった。
(でも、鈴子さんにお酒は飲ませられない……!)
 リナリエッタはブランデーケーキをなるべく自分が食べたり、誤って落としたりして、ジンジャーケーキの方を鈴子に任せようとした。
 しかし。
「落としてしまったのですか? まだ沢山ありますから平気ですよー」
 すぐに気付いて、ロザリンドがケーキをまた一切れ皿に乗せてくれる。
「お、おほほ、クリスマスにはケーキいいですわねえ。
 実は私も作ってきたんですわよ」
 リナリエッタは自衛のために鞄の中から、とっておきのケーキが入った箱を取り出した。
「実はこうみても料理勉強中なのよね。で、料理のレシピっていっぱいあるじゃない。普通の料理だけじゃなく、薬膳とか……。それでね、二日酔いに効くというケーキを作ってみたの」
 箱を開いて、中に入っていた緑色のケーキを取り出した。
「じゃーん、ピーマンケーキ!」
「ごほっ、げほっ」
 途端、ちびちびロザリンドのケーキを飲んでいた円が咳き込んだ。
「この緑は抹茶じゃなくて、ピーマンなのよ。苦みと甘みと生クリームが暴力的に胃を刺激してお酒の力をなんとかかんとかって書いてあったわ!」
「ケーキとピーマン、合うのでしょうか」
 鈴子は不安げな顔をしている。
「合うんです、多分。味見してませんけれど! じゃ、皆でたべましょうね。ほらほら円さん、あーんあーん」
「いらない!」
 一切れフォークで刺して、円の方に向けるけれど、円はパッフェルの後ろに隠れて断固拒否。
「ロザリンドさんのケーキは食べたのに、私のはいらないだなんて。しょっくだわあ。あ、もしかしてこういうことは、パッフェルさんとしたかったのかな。ごめーん」
 リナリエッタはパッフェルにフォークを預ける。
「じゃ、パッフェルさんやってやって!」
 そうパッフェルを煽ると、パッフェルは緑色のケーキが刺さったフォークを円へと向ける。
「う、うう……っ」
 円は必死にふるふると首を左右に振る。
「パッフェルのケーキがたべたよぅ」
「わかった……帰ったら作る」
 言って、パッフェルは手に持っていたケーキをぱくっと自分で食べた。
「う、うん!」
「ピーマン、ケーキを」
「え!? ピーマンは入れなくていいよぉ」
「大丈夫……美味さ、重視で作る、から」
 リナリエッタのケーキを味わいながらパッフェルは言った。不味くはなかったが、円にこれは無理そうだった。
「二日酔い対策には必要なのに〜」
 リナリエッタは残念そうに、ケーキを自分の口に運んだ。
「そういうのじゃなくて、普通の胃腸薬、胃腸薬は〜」
 鞄をがさごそしだした円の耳に、ロザリンドの声が届いた。
「円さん、ツリーの飾りみましたよー。
 いいですかー。
 銃とか弾とかー。
 百合園女学院の生徒はー。
 私みたいにー、か弱い乙女ばかりなのですよー。
 なのにー。
 危ない事沢山してー」
 ロザリンドが絡みはじめた。
 彼女の前にはいつの間にかブランデーの瓶とグラスがある。
 喉が渇いたと、静香がいない間に飲み始めてしまったのだ。
 ちなみに静香は、ロザリンドが各テーブルに差入れして回ったケーキの対応に回っていた。中毒等の害者が出ないよう、百合園の校長として、恋人として、注意を呼びかけねばならない、から……。
「残って待つ方の身にもなってくださいよー。
 私もできることなら、皆さんと一緒に前に出ておきたいのですよー。
 そう、一緒に笑って泣いてがいいのー。
 私も前に出たかったのー。
 円さん聞いてますー?」
 ゆさゆさ、ロザリンドが揺すっているのは――丸椅子だった。
 揺すられすぎて、足が折れかかっている。
「あ、ウェイターさーん。
 ちょっと軽めのお酒を大ジョッキで一つお願いしまーす」
 焦点の定まらない目でロザリンドが注文をすると、運悪く通りかかったウェイトレスが気付き、「大ジョッキ一つ、かしこまり〜♪」陽気に答えて、酒を取りに向かってしまった。
 ロザリンドはブランデーを飲み干して、グラスをテーブルにガツンと置くと、円な丸椅子を叩きながらまた話しだす。
「いいですかー、円さーん。
 亜璃珠さんみたいに大怪我したりしないでくださいよー。
 リナさんも円さんも、大事な人が悲しまないようにー。
 パワードスーツを着て守る。
 分かりますー?
 パワードスーツが一番なのですよー」
「だれかー! だれかー! 校長! 校長連れてきて!」
 円は大声で助けを乞う。
 何故かこのテーブルには、誰も近づいてこなくなっていた。
 ロザリンドは、ケーキを強引に進めながら、パワードスーツの素晴らしさについて、円、パッフェル、リナリエッタ、鈴子――むしろ椅子やテーブル、食器達に延々と説いていく。
「ですよねー、静香さんもそう思いますよねー」
「え?」
 呼ばれて急いで戻ってきた静香は何のことだかわからず、とりあえず「うん」と頷いた。
「ロザリンドさん、もう十分楽しんだよね。あとは2人だけで過ごそうか、僕にプレゼント持ってきてくれたんだよね。嬉しいなあ〜。さあ、行こう行こうよあっちへ!」
 静かは頭をぺこぺこ下げて皆に謝りつつ、ロザリンドの腕を引っ張って、どこかへ連れて行ったのだった。
「く、クリスマスくらい楽しく過ごしたいですわあ。喉が渇きましたわね、鈴子さん」
 リナリエッタはほっと息をつき、ぶどうジュースを飲み干した。
(ん? ……あれ? ぶどうジュースを頼んだはずなのに!)
 それは、濃厚な赤ワインだった。
 アルコール度数激高なブランデーケーキを食べていたこともあり、リナリエッタはくらくらしてしまい、ふらっと鈴子の方に倒れかかる。
「……リナさん」
 勿論鈴子の方も。
「では、楽しいお話しをしましょうか、私達も2人きり!で! リナさんがツリーに飾っていたもののこととか! 今晩はどんなイケメンさんと過ごすつもりなんですか? プランを聞かせていただきますわよ、ふふ」
 軽く酔っているようで、冷たい笑みを浮かべながらリナリエッタを引っ張って立たせる。
「鈴子さあん〜。なにをぉ〜。やあめーてぇええええ」
 黄色い声のような叫び声を上げながら、リナリエッタも鈴子にどこかに連れて行かれてしまった。
「ふはあ……」
 ぱたん。
 円は気が抜けてテーブルにつっぷした。
「嵐、去った」
 そんな円の頭をパッフェルが優しく撫でる。
「はあ……ありがと、パッフェル。あ、あのね」
 皆が戻ってくる前に、と。
 円は鞄の中から、真っ白なリボンを取り出す。
「これ、クリスマスのプレゼント。
 今日はともかく。今年は落ち着いたいい年だったね。
 また、今後ともよろしくね」
「ありが、とう。これからも、よろしく……円」
 パッフェルはリボンと円の手を握りしめて、引き寄せて。
 円を大切そうに抱きしめた。