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第12章 偽らざる本音

 1月2日日中。
 餅つきが終わった後も、空京神社は沢山の参拝客でにぎわっていた。
「美緒もやっぱり苦労しました?」
「ええ……沢山、入ってますわ」
 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)と、恋人の泉 美緒(いずみ・みお)は共に振袖で訪れいてた。
 化粧も上品に施してあり、年頃の日本人女性の美しさを共に醸し出していた。
 ただ、互いに胸が大きいため、着付けには非常に苦労をした。
 着物の中には、バスタオルやタオルが沢山巻かれており、少し窮屈だった。
「優子さんやアレナさんも、仕事でいらしているようですね……巫女服ですか。似合いますね」
「お2人とも、綺麗な黒髪ですしね」
 笑みを浮かべて、授与所で笑みを浮かべて対応しているアレナも、真顔でもくもくと掃除をしている優子も、神聖さを感じる綺麗な巫女さんだった。
 2人に挨拶をしてから、小夜子と美緒は拝殿へと向かい、賽銭をいれて祈願をした。
「美緒は何を祈願しましたか?」
「小夜子と、健康で楽しくすごせますように、ですわ」
「ありがとうございます。私は美緒とより幸せになれますように、とお祈りいたしましたわ」
 願い事を言い合って、顔を合せて微笑み合う。
「……そういえば今年、美緒は二十歳になるんですね」
「実感がないですけれど……」
「ふふっ、最初に会った頃と比べれば、見違えるようです」
「変わりましたか?」
 不思議そうに美緒が小夜子に尋ねる。
「ええ、でも美緒らしい純粋さは変わってませんね」
「小夜子は、よりカッコよく、魅力的になりましたけれど、優しいところ、変わらないです」
「優しい、ですか」
 小夜子の脳裏に、異世界での出来事が浮かんだ。
「……さて、屋台を回ってみましょう」
 ぎゅっと目を閉じて、追いだすと、美緒と一緒に屋台の方へと歩いて行く――。

 一通り屋台を巡って、食べたり飲んだり、楽しく話をした後で。
 小夜子は美緒を神社の裏へと誘った。
 互い以外、誰もいないその場所で、小夜子は美緒を、美緒は小夜子を見つめる。
「しばらく会えなかったけど、こうして美緒と新年を過ごせて私は幸せですわ」
「わたくしこそ……クリスマスも、新年にも、小夜子と会えないんじゃないかって、とっても不安でしたわ」
「……うん、ごめんなさいね。美緒。心配掛けちゃって……」
 ダークレッドホールに飛び込んだことについては、結果的に良かったとは思うが、大切な恋人に長い間心配をかけてしまった。
「……ダークレッドホールから異世界に飛ばされて、色々あったけど……美緒の存在が私の心の支えでしたわ。ありがとう」
「頑張っている小夜子の為に、わたくしは何もできませんでしたけれど、わたくしの存在がそんな風に小夜子の役に立てていたのでしたら……嬉しい、ですし。本当に良かったですわ」
 美緒の目が僅かに潤んだ。
 ああ、本当に。本当にとっても心配をかけたのだなと、小夜子の目頭も熱くなる。
「私の心の中で、美緒の存在はかけがえのないものなの……」
 目に少しの痛みを感じながら、小夜子は愛しい彼女に微笑みかける。
「美緒、今年もよろしくお願いしますね。頼りにしてますわ」
「小夜子、今年もよろしくお願いいたします。今年が終わる時も、支え合いながら、こうして一緒にいたいですわ」
「ありがとう。私も、勿論……」
 声を詰まらせながら、小夜子は美緒を抱きしめた。
 いつもは美緒を労り、愛しみながら、優しいキスをすることが多いけれど。
 今日は少し強く。力を込めて、愛しげに抱きしめた。
「美緒、美緒……。愛してる。もう、美緒のいない人生なんて考えられない……」
「小夜子、こうしてあなたの愛を強く感じることができて、わたくしは幸せです……。愛して、います」
 キスを交わして、強く抱きしめ合い。
 2人は、愛しい互いの激情を体中で感じあっていく。