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リアクション
第13章 皆で幸せ
1月2日夕方。
参拝客の数が減ってきた時間。
「良かった空いてる♪」
遠野 歌菜(とおの・かな)はお目当てのカフェを覗き、席が空いていることを確認して目を輝かせた。
初詣は既に、伴侶である月崎 羽純(つきざき・はすみ)と共に済ませてあった。
でもまだ、お正月気分を味わっていたくもあり、このカフェの期間限定ケーキが美味しいという情報をキャッチしてしまったので、それなら是非行かねばと、羽純と一緒に訪れたのだ。
わくわくしながら店内に入って。
「あそこの窓際にしよっ、羽純くん。……あら?」
窓際の席に向かおうとした歌菜は、1人でソファー席に座っている女性に目を留めた。
「わぁ……こんな所で会うなんて」
「ん?」
デパートの袋や、屋台で買ったと思われるものを椅子の上並べ、テーブルの上には注文したスイーツを沢山ならべて、満足そうにしているのは―― バーゲンの主、エメネア・ゴアドー(えめねあ・ごあどー)だった。
「初詣ですか? それとも屋台めぐりに来たのですか?」
歌菜はそう声をかけて、近づく。
「福袋買いに来たついでに寄りましたー」
「ふふ、お願いごとは、今年も良い買い物ができますように、でしょうか。あ、あらためまして、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします!」
「あけましておめでとうございます。本年も、歌菜共々よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますぅ」
歌菜、羽純に倣い、エネメアも立ち上がって2人にぺこりと頭を下げた。
そして自然にそのテーブルで、一緒におやつを楽しむことになった。
「ここのカフェのケーキ、美味しいって評判なの。エメネアさんは何を頼んだのかな?」
「歌菜が雑誌で見つけて、是非食べてみようって話になってな」
「羽純くんも私も、スイーツは大好きだから、チェックに余念がないのです!」
羽純がメニューを広げて、歌菜と一緒に確認していく。
「仲良しですねぇ。私は紅茶だけです。バーゲン費用をとっておきませんと。でも、美味しいのですか、美味しいのですかぁ」
「これです。生地に、抹茶と蜂蜜、栗のやわ煮が入ってるの♪ 緑茶と一緒に食べると美味しいんだって」
「こっちの……生地に栗の入ったチョコケーキと、抹茶ケーキにチョコレートをコーティングした奴も美味そうだ」
「美味しそうですねぇ」
エメネアもじっと、メニューを覗き込んでいる。
「それでは、3個頼んで、食べ合いましょうか」
「さんせーです」
エメネアがにぱっと笑みを浮かべた。
「いただきます。ん、蜂蜜のほのかな甘みが上品で美味しい♪」
「こっちも、独特な甘みのあるまろやかなスポンジで、なかなか良い」
「これもとっても美味しいですよぉ」
届いた三種類のケーキと、お茶を飲みながら3人は笑い合い、互いのケーキも貰って食べていく。
「エメネアさんは、初詣で何をお祈りしたの?」
「(金)運があがりますように、ですぅ。お2人は何を祈願したんですかぁ?」
「私は……羽純くんと幸せな一年になりますように……って、お願いしました」
エメネアに答えた後、歌菜は羽純の顔を見る。
「俺が祈った内容は……秘密だ。人に話すと叶わない気がする」
羽純はすまし顔でケーキを食べる。
「不言実行の方がいいだろ?」
本当は、自分の願いも歌菜と同じだ。一緒過ぎて、話すのが照れくさくて言えなかった。
「そっか……羽純くんが何を頑張るのか、楽しみに見させてもらうわね」
「……ああ」
歌菜と同じなのだから、共に互いとの生活を大切に、楽しみながら過ごすことで達成できるはずだ。
「あ、このパフェも美味しそう……食べちゃおうかな……」
歌菜がメニューのトリプルチョコレートパフェに目を付けた。
「歌菜、そんなに食べ切れるのか?」
大きそうなパフェだ。カロリーもかなり高い。
「むー、なら! 皆で分けて食べればいいよね?」
歌菜が強請るような目で羽純を見る。
「皆でって……」
「食べますぅ!」
エメネアがフォークを上に向けて、強く頷いた。
「申し訳ない。付き合わせて」
羽純はふうと息をついて、歌菜に頷いた。
「すみません、追加お願いしますー♪」
給仕の女の子を呼ぶと、歌菜はその大きなパフェと飲み物のお代わりを注文した。
「む、このパフェ……美味いな」
「ホント、美味しいですぅ。チョコがコーティングされた、フルーツも沢山入ってますねぇ」
「アイスも三種類、贅沢ねぇ……それに、皆で一緒に食べると美味しいよね!」
「はい〜」
歌菜とエメネアが幸せそうな笑みを浮かべ、羽純もくすっと微笑を浮かべた。
今日は全て羽純と歌菜が奢ってあげることになった。
代わりにと、エネメアは店舗でもらったティッシュやラップ、クッキングシートなどの粗品を沢山、歌菜達にプレゼントしてくれたのだった。
「なんだか、お年玉貰った気分♪」
「ついでに、俺達も福袋買って帰るか? 飲食店の福袋がなかなか良さそうだ」
「うん、購入金額と同額のチケットと、ダイヤリーなんかが入ってるのよね!」
エメネアと別れた後、羽純と歌菜も新春のお買い物を楽しむことにした。
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