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リアクション
2.ブラヌに春!?
「こんにちは〜、繁盛してますか?」
パラ実生の屋台に、単独の華が訪れた。
「ぼちぼち。でもなんかびみょーーーーーーな気分だな」
訪れた女性――佐々布 牡丹(さそう・ぼたん)にそう言い、ブラヌ・ラスダーは大きなため息をついた。
「寒い中お疲れ様です」
くすっと微笑みながら、牡丹は水筒に入れてきた温かなコーヒーを注いで、ブラヌに差し出した。
「商品に手を出すわけにもいかないでしょうから……差入れです。コーヒー……大丈夫ですよね?」
「ああ、サンキュー! こっちに来いよ、ストーブあるぜ」
ブラヌが牡丹を屋台の中へと呼ぶ。
彼の足下には、機晶ストーブがあった。
「ありがとうございます。……それにしても、色々と怪しげな効果のある品物を売ってるんですね〜」
内側に貼られている、販売物の効果について書かれた紙を見て、牡丹は眉を顰めた。
「ちょーっと魔法薬が入ってるけど、ちょっとだけだぜ。地球の漢方薬みたいなもん」
「ふふ……でも『自分を好きにさせる』って言う効果の品物がないのには関心しました」
牡丹が笑みを浮かべながらそう言うと。
「自分で薬作れたら、そういうのも作ってたかもなー」
屈託なくブラヌは笑った。
「それで、ブラヌさん自身は恋人は……あぁ、ここで商売をしているという事で全てを物語っていましたね……ごめんなさい」
「うー……。てゆーか、てめぇだって、こんなところに1人でくるからには、いないんだろ」
「ええ、まぁ、私も機械ばかりいじってたもので、色恋沙汰には全く縁がなかったんですよね〜……」
「……」
並んでストーブに当たりながら、2人は少しの間沈黙した。
夜景を楽しんでいる恋人達に声をかけるのの無粋と考えて。
若葉分校生達ももう、大声をあげることはなくなった。
空には宝石をちりばめたかのような星が、ちらちらと、美しく瞬いている。
「……ねぇ、ブラヌさん」
牡丹が彼の名を呼ぶと、ブラヌは「ん?」と、牡丹に目を向けた。
「ブラヌさんっていつも女性と契約したがってましたけど、何でなんです?
純粋に契約すれば強くなれるからですか? そてとも彼女が欲しいからなんですか?」
「両方。契約者になって、強くなりたいし、彼女もほしいし。契約者になったら、一生契約相手と付き合うことになるだろ? なら、一生好きでいられる娘がいいじゃん!」
「そうですか」
遊びで付き合いたいというような、軽い気持ちじゃないんだなと牡丹は感じとって、彼女の顔に自然な微笑が浮かんだ。
「ブラヌさんと何度かイベント事をご一緒させて頂きましたけど、ブラヌさんって本当に一生懸命皆の為に頑張りますよね……まぁ、間違った方向へ頑張っちゃう時もありますけど」
「間違ってねぇって、パラ実的に! むしろパラ実生としては俺は優等生過ぎるくらいだぜ……ま、若葉分校生だしな」
ブラヌの言葉に、牡丹は首を縦に振った。
「私、そういう風に一生懸命になれる人って素敵な人だと思います……ですので、もし迷惑でなければ……」
牡丹は鞄の中から――星形に包装されたものを取り出して、ブラヌへ差し出した。
「これ……受け取っていただけますか?」
そして、まっすぐブラヌを見つめる。
「……何?」
「チョコレートです」
「俺に……? あ、分校生あてか」
「ブラヌさんに、です」
ブラヌは不思議そうな顔をしながら綺麗に包装されたチョコレートを受け取って、瞬きをしながら見つめる。
「それ、1人の女性を好きになる薬が入っているんですよ……効き目は人それぞれですが」
ちょっと恥ずかしげに、照れ隠しの様に牡丹は言った。
「あ、あのさ……」
「はい……」
2人は目を合せずに、お互い少し俯き、たどたどしくゆっくり話していく。
「ぎ、義理じゃないと思っていいのか?」
「……はい」
「お、俺が1人の……おまえのコト、好きになっても……迷惑じゃ、ないのか」
「迷惑だなんて、なぜ、そう思うのですか……。私の気持ちは、今、お話した通り、です」
ごくりと唾を飲んで、ブラヌは立ち上がった。
「そ、それなら、牡丹、お、俺と結婚を前提に……アチッ!!」
勢いよく立ち上がったブラヌは、ストーブの吹き出し口に触れてしまい慌てて飛び退いた。
「ブラヌさん、大丈夫ですか……!」
牡丹はすぐに彼の手をとって、火傷の具合を確認する。
肌に大きな変化はないようだった。
「だ、大丈夫。ちょっとびっくりしただけで……ははははっ」
きまり悪そうにブラヌが笑った途端。
「てめーら、なにいちゃつんてんだ〜!!」
「ブラヌー!! 抜け駆けはゆるさねぇぞォ!」
クレープ屋をやっていたブラヌの悪友たちが飛び込んできて、ブラヌはもみくちゃにされたのだった。
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