蒼空学園

リアクション

結果発表


　試合会場の中継映像は、しばらく真っ白な画面が続いたが、唐突に解説席の映像に切り替わった。映し出されるのは、当然ラブ・リトルと高天原　鈿女の二人である。
「えー、先ほどの大爆発で設置されていたカメラのほとんどが吹き飛んでしまったみたいです」
「あの戦艦は、まるでこの時のために爆薬でも積んでいたみたいな準備の良さでしたね」
「え？　あ、うん、わかった。えっと、時間が押しているので、順位発表をこちらで行いたいと思います。今回の得点の計算は、空京野鳥の会の皆さんによって行われました。皆さん拍手ぅー！」
　映像に、白衣に眼鏡でフィールドワークをするには向いてなさそうな集団が、片手に数取機を持ってずらりと並ぶ。
「それでは、さっそく五位から発表していきましょー！」



　第五位、フィーニクス・ＮＸ／Ｆ。
　パイロット、イーリャ・アカーシ（いーりゃ・あかーし）、ジヴァ・アカーシ（じう゛ぁ・あかーし）。
「獲得点数は２８７点、フィーニクスが堂々の五位に入賞しました」
「非常に丁寧な立ち回りが印象的でしたね。勝てる相手には性能で、そうでない相手には相手の弱点を見抜いての無駄の無い立ち回り、中でも同じ参加者の乱入が援護となったのは、故意なのか偶然なのかは是非本人に尋ねてみたいところです」
「さり気なく機体に大きな損害なく無事生還しているのもポイントですね。では、次は第四位の発表です」



　第四位、テンペスト。
　パイロット、鳴神　裁（なるかみ・さい）、ドール・ゴールド（どーる・ごーるど）、物部　九十九（もののべ・つくも）、黒子アヴァターラ　マーシャルアーツ（くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ）。
「イコンの大会に出場してきたパワードスーツ、テンペストが第四位です。獲得点数は３６１点。途中で撃破したパワードスーツ小隊が、小隊全滅で１５０点扱いでなければもっと上位だったかも！」
「パワードスーツの中でも、尋常ではない速度が強みでしたね。ただ、一度にまとめて通常機を撃破しての大量得点ができず、後半での戦艦１、乱入１の撃破が得点の過半を占めています」
「得点制ではなく、サバイバルだったら小ささと速さでもっと上を狙えたかも？」
「そうかもしれません。ただ、色々と無理をしている様子なので、長期戦にどこまで耐えられるかはちょっと未知数ですね」
「なるほど。それでは、次は第三位の発表です！」



　第三位、ＨＭＳ　セント・アンドリュー。
　パイロット、ローザマリア・クライツァール（ろーざまりあ・くらいつぁーる）、ホレーショ・ネルソン（ほれーしょ・ねるそん）。
「イコン大会に颯爽と現れた戦艦、セント・アンドリューが３９０点を獲得しての第三位です！」
「参加者側の唯一の戦艦というのもありますが、最大の注目ポイントは、乱入機の撃墜数ゼロでこの得点を獲得したという事ですね」
「３９隻の戦艦を次々と撃墜していったわけですね」
「見所はやはり、二隻の乱入戦艦を相手への大立ち回りでしょう。相手の連携が取れてないと見るや、相手を翻弄し、特に伊勢に何度もＡＩ戦艦との衝突を行わせて六隻を無力化しています。ＡＩの挙動を前半戦に掴んでいた観察眼のなせる業でした。残念ながら、衝突での無力化は得点にならないため、三位となってしまいました」
「トドメを刺した一撃でポイントが入るので、轟沈させた伊勢のポイントも鳴神さんに攫われているんですよね」
「それでもこの獲得点数は戦艦としての意地を見せた形になりましたね」
「それでは、続いて第二位、いってみましょー」



　第二位、アーコントポウライ。
　パイロット、三船　敬一（みふね・けいいち）、白河　淋（しらかわ・りん）、コンスタンティヌス・ドラガセス（こんすたんてぃぬす・どらがせす）、レギーナ・エアハルト（れぎーな・えあはると）。
「またしても入賞をもぎ取ったのは、イコンではなくパワードスーツ小隊。３９７点を獲得したアーコンポウライが第二位です」
「テンペストとは対照的に、小隊としての力を存分に発揮していましたが、やはりこの入賞はラッキー機を撃墜したというのが大きいですね」
「必死で逃げ回っていた大熊さんが、最後に見せた猫の物まねをものともせずに撃破していたのは、戦場の非情さがひしひしと伝わってきましたねー」
「心折れてたものね……。また、この小隊は乱入機との戦いに巻き込まれなかったのも最終的な獲得ポイントの上昇に寄与しているみたいです」
「文字通り、最後の一秒まで点数を稼ぎ続けたわけですね」
「しっかりとした役割分担と、支援機の偵察によって敵を探してうろうろしないで済んだのも、得点を積み重ねられたのでしょう」
「さて、次は第一位、といきたいところですが、運営からの特別賞の発表です」



　特別賞、トレーロ、ゼフィロス、ソプラノ・リリコ。
　パイロット、大久保　泰輔（おおくぼ・たいすけ）、讃岐院　顕仁（さぬきいん・あきひと）。高崎　朋美（たかさき・ともみ）、ウルスラーディ・シマック（うるすらーでぃ・しまっく）。ロレンツォ・バルトーリ（ろれんつぉ・ばるとーり）、アリアンナ・コッソット（ありあんな・こっそっと）。
「試合開始から、終了まで徹底して小隊として行動していた三機の合計獲得点数は、７２２点。各機、コンスタントに２００点以上を稼いでいます」
「この小隊の面白いところは、並み居る強敵機の多くを、その性能を発揮させて撃破していった事ですね。強敵機はバランスを欠いた機体も多かったですが、これらの長所を発揮させ、どうやって攻略するかを毎回確認しているようでした」
「大会参加前のインタビューで、実践訓練のつもりで参加する、と答えていましたが、それを有限実行した形ですね」
「ＡＩ機のプログラムを行った技術チームも多くのフィードバックが得られたので是非お礼をしたいとの事です」
「この特別賞は、そのお礼の一つという事ですね。それでは、ついに第一位の発表です」



　第一位、アンシャール。
　パイロット、遠野　歌菜（とおの・かな）、月崎　羽純（つきざき・はすみ）。
「獲得点数、４２２点。アンシャールが一位をもぎ取りました。凄い得点ですねー」
「はい、このうち３００点は戦艦乙の撃墜数です。序盤から、獲得点数の多い戦艦に狙いを定めて稼ぎ続けたのが、結果を引き寄せた要員でしょう」
「前半戦の貯金が生きた形ですね」
「そうですね。それにほとんどの参加者が、乱入機に備えて十五分から二十分の当たりで戦闘を回避し始めたのに対して、アンシャールは乱入機が出てくる直前まで戦い続けていたのが獲得点数に表れていますね」
「乱入機のレイと戦う直前に三隻の戦艦乙を撃墜して獲得点数トップに出て、あの乱戦の中で百機以上の通常機を撃墜……凄いですね」
「通常機が集まれば集まるほど、戦慄の歌の効果を多数に発揮させる事ができるのが、最後の大量撃破に繋がったようです」
「なるほど……なになに？　うん、わかった。それでは名残惜しいですが、実況はみんなのアイドルラブちゃんと」
「解説の高天原でお送りしました」