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乱入機、参戦


「どちらへ向かいますかぁ?」
 ミュート・エルゥ(みゅーと・えるぅ)の間延びした声が艦内放送でリネン・ロスヴァイセ(りねん・ろすヴぁいせ)に尋ねる。直接尋ねないのは、ミュートが船の中心で機晶脳化で艦と肉体を直結しており、ブリッジに姿は無いからだ。
「もちろん、会場の中央よ。その方が、お客さんも動きやすいでしょ。ハッチはもう開けておいて、好きなときに出ていけるようにしてあげて」
「りょぉ〜うかぁい♪」
 ミュートは全速を持ってガーディアンヴァルキリーを会場中央へ向けて進ませた。
 その道すがら、いくつもの光がGVのカタパルトから、あるいは甲板から飛び立っていく。それらは追加のエネミーイコン、そして乱入機の皆様方である。
 全長1.6kmに及ぶ巨大空母の本領発揮である。多くの乱入機が、この空母から会場に乗り込むのだ。残念ながら帰ってきても補給や修理はしてあげられないが、もともと乱入機が活動できる時間は短いので問題にはならないだろう。
 そろそろ中央につくだろうとしたところで、ミュートが迫り来る熱源を感知する。
「総員、衝撃に備えろ」
 感知から間もなく、GVに衝撃が走る。ミュートはすぐさま被害状況を確認、ダメージ自体はそれ程でもない。
 一方のリネンは外の様子を窺う、すぐさま彼女は外の雲の形が変形し、尻尾のように飛び出しているのに気付いた。
「雲の中から狙撃してきたというわけね」
 おおよその方角はわかるが、正確な位置はわからない。
「損害は軽微ですよぉ、航行に問題はありませんねぇ〜」
「妙ね。まぁいいわ、こちらからもお返ししてあげないと。ミュート、砲撃よ」
「あいあいさー♪」
 リニアカタパルトから爆弾を放り込んで爆発させ、雲を散らしていく。会場は戦艦が飛び回るには十分な広さはあるが、隠れるほどの余裕はなく、雲を散らすと先ほどの攻撃を仕掛けてきた相手の姿をすぐに見つける事ができた。
「流石に、乱入機には弱点は設定されていませんか」
 雲の中から姿を現したのは、ホレーショが操るHMS セント・アンドリューだ。この大会参加者の中で、唯一の戦艦相当機。
「ま、ぶつかるとしたらこうなるわよね」
 母艦としてカタパルトを積み込んだGVにとって、全うな火力担当艦とやりあうのは少し厳しいのだが、リネンには余裕があった。
「この大会は最強のイコンを決める大会。それに戦艦で参戦するなど無粋であります!」
 広域通信で割り込む声は、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)。その発信源は、戦艦伊勢であった。
「私達も戦艦で参戦してるじゃない」
 そうコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)のささやかな抗議に吹雪は、
「エネミーには戦艦が用意されているので全然問題無いのであります!」
 と、胸を張って答えた。
「しかし、相手にも戦艦が居るというのに、此方がイコンだけというのはアンフェアと言わざるを得ない。よって、我々はきみたちを叩くとしよう。」
 ホレーションは通信を繋げてわざわざ吹雪に宣戦布告を行った。
「ふっふっふ、ならばかかってくるであります!」
 伊勢はGVを守るように前進しつつ、砲塔の全てをセント・アンドリューへと向ける。さらに、敵戦艦を感知した独立思考AIである乙・甲の戦艦も向かってきていた。
「流石にこれだと、相手の方が艦隊って感じね」
「古来より少数が大軍に勝った逸話は枚挙に暇が無い。問題はないだろう」
 ローザマリアの呟きにホレーショは不敵な笑みを浮かべて答えた。



「えらい乱入者が多くないかこれ」
 シーニー・ポータートル(しーにー・ぽーたーとる)の監視するレーダーには、会場を横断する戦艦が二つ、そこから飛び立つ大量の未識別機が表示される。他のレーダー表示の機体と違って、光点が妙に大きいのは未識別気の正確な位置は教えないけどおおよその場所は教えてあげようという大会主催者の優しさだろう。
「さてラスト5分で大逆転いきますか!」
 幸い、すぐ近くに乱入機が一機孤立しているようだ。笠置 生駒(かさぎ・いこま)は覚醒したジェファルコン特務仕様で目標地点に向かった。
「……通常機しかおらんで」
 ぱっと見渡して、通常のエネミーイコンが十数機の姿しか見当たらないが、未識別の機体もこの中に居ると表示されている。
「狙撃仕様で隠れてるのかもしれない。一掃する」
 多くの乱入機は空母から降下しているが、空母の進路から外れた場所にも未識別機は発生したのを二人は確認している。別ルートからの進入も決してゼロではないという事だ。
「隠れられそうな起伏や障害物全部吹き飛ばすよ」
 多弾頭ミサイルランチャーが放たれ、周囲を爆破し破壊する。周囲に居たエネミーイコンも巻き込まれ、ぽつぽつと点数が入る。
「出てこうへんな……」
 爆煙が晴れる前に、それを突き破って通常機が近接戦闘を仕掛けてくる。だが、所詮は一点の通常機、特に策を弄するでもなくデュランダルで正面から叩き伏せた。
「っ、背後や」
 ジェファルコン特務仕様に背後に回りこんで片手に新式コーティングブレイド持ち肉薄しようとするクェイルが一機、通常のエネミーイコンであればこのまま突貫するのだろうが、気付かれた事を察するとウィッチクラフトライフルに持ち替えて近距離射撃を行った。数発が装甲を削り、機体にダメージが入る。
「この程度なら問題無い」
 試作型カットアウトグレネードをジェファルコン特務仕様が放る。炸裂、イコンの目を潰すグレネードだ。だが、クェイルは射撃を続行、センサーで判断するAIにはできない挙動だ。
 弾切れしたライフルを放り出すと、今度こそとクェイルは新式コーティングブレイドに手をかけ、切りかかる。ジェファルコン特務仕様はデュランダルを手に、ぶつかった。
「流石に、覚醒機相手だとパワー負けするわね」
「温存するべきじゃなかったんじゃない?」
 クェイルのパイロット、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は毒づきに、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がそう返す。
「あと一秒、よし下がるわよ」
 が号令をかけた時には、クェイルの片腕は押し負けた結果肘から先を失っていた。切られたのではなく、押し負けてへし折られたのだ。
「これじゃ、偽装としては弱いわね」
「ま、上手に立ち回るわ、壊しちゃダメなんだし」
 バーニアを限界まで吹かせて離脱。後部からは通常のエネミーイコン、そのどれもが旧式のクェイル、が六機。失った腕が見えないようにAI機の背後に回りこむ。
 これぞクェイル隠れの陣。
「それで隠れてるつもりなられてもなぁ」
 多弾頭ミサイルランチャーが、今度は地形でなはなくクェイルに向かって放たれる。六機のクェイルは一瞬で合計六点のポイントにへと変換された。
「あぁ、もうっ! こうなったらヴィサルガ・イヴァを―――」
「あ、それなんだけど、ごめんなさい。この子、対応してないみたいなのよ」
「へ?」
 超加速で接近するジェファルコン特務仕様のデュランダルが、クェイルを一閃した。