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【更科雫500枚突破記念シナリオ】更科太郎先生危機一髪! 愛用の○○○○○を探せ!

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【更科雫500枚突破記念シナリオ】更科太郎先生危機一髪! 愛用の○○○○○を探せ!

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「ん〜……更科太郎先生が何か探してるみたいだなぁ」

 パンダのきぐるみを着て垂ぱんだとなった朝霧 垂(あさぎり・しづり)は、胸の前で腕組みをし、そんなことをつぶやきながら道を歩いていた。

「半狂乱になってまで探すなんて、よほど大切な物なんだろうなぁ」
「ピッ!」

 垂ぱんだの独り言に、茶室でぼーっとしていた垂ぱんだに事情を伝えた黄色いピヨ『に』が鳴いて応じる。
 その声の様子からして、垂ぱんだの言葉に同意しているのだろう。

「きっと困ってる」
「ピッ!」
「とすると、やっぱ、探すの手伝ってやらないとな!」
「ピッ!」
「よし! やろうぜ、みんな!」

「「「「「「「「「「 ピ! 」」」」」」」」」」

 総勢10匹のピヨが、振り返った垂ぱんだに向かって敬礼し、同時に鳴いた。
 みんなやる気満々だ。
 それは顔つきを見れば分かる。
 
 ちなみに
 右上にいる黄色のピヨが『い』、特技は簡単な絵が描けることだ。
 左上にいる濃桃色のピヨが『ろ』で、特技は力持ち。ピヨくらいなら持ち上げられる。ピヨぐらいと侮っては駄目だ。自分と同じ体積を持ち上げられるのはすごいことだ。
 左上にいる水色のピヨが『は』、特技は見たものの髪型を真似できること。(なぜに髪型?)
 左にいるのがまたもや黄色のピヨ。さっきの『に』で、バランス感覚に優れていて、丸い物でもうまく乗れるのが特技。
 そして真ん中、水色のピヨが『ほ』、見た人100人中100人がほれぼれする丸さ! すっごく丸い!(これって特技?)
 そのとなりにいる、やっぱり黄色のピヨが、『へ』。このなかで好奇心旺盛なピヨだ。
 まだまだいくぞ。左下の黄色いピヨが『と』、よくじっと自分以外の者のことを観察している。
 やはり左下の緑色のピヨが『ち』、何かやりたがっている努力は買うけど、いまいちまとまらない様子。
 下にいる灰色のピヨが『り』、タバコを吸っているところからも分かるようにハードボイルドを気取ったキャラだ!
 そのとなり、薄桃色のピヨが『ぬ』、何かとちょっかいを出したがるのが玉にキズ。
 最後が黒色のピヨで『る』、こいつは真似したがりで、いつも垂と同じ行動をしようとする。


 なんか途中で特技とか関係なくなってるけど、まあそういうやつらで、全員1人残らず垂の大切なピヨたちだった。


 彼らを後ろに従えて、垂ぱんだはずんずん歩いて行く。
 とはいえ、どこ行くというあてはなかった。
 なにしろ何を探しているのかすら分からない状態だ。

「殴られて気絶している更科太郎先生をたたき起こすわけにもいかないし……」
 うーーーん……、と頭を抱える。

 そのまま、何のあてもないまましばらく歩いて探してみたが、当然のことながら、とりたててこれという成果はなかった。
 せいぜいが、垂ぱんだとピヨの行進を見た子どもが狂喜して、
「うわー! あのパンダのおねーちゃん、ひよこ連れて歩いてるー!」
「さわらせて! だっこさせて! お願い!!」
 と寄ってきて、もふっていっただけだ。

 やっぱりだめか……そう思いかけたとき。


 ピヨ『い』が何かを受信した!


「ピヨピヨピーーーーーッッ!!」
「ん? どうした? 『い』」
 どうやら更科家から、新たな情報が送られてきたらしい。
 ぱぱぱっと紙に書いて、大急ぎ垂ぱんだにそれを掲げる。

 しかし残念ながら、『い』の特技は「簡単な絵が描ける」程度。
 それと完成度はかなり別物だった。

 フリーハンドで描かれたつたない四角と棒を見て、垂ぱんだが返せたのは
「お、おう……?」
 のひと言だけだったという。


※                  ※                  ※



 ほぼ同時刻。
 佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)佐野 悠里(さの・ゆうり)親子、それにレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)の4人もまた、犯人を捜して町を歩いていた。
 ピヨ1号2号3号をおともに愛娘と2人手をつないでお散歩していた途中で、ルーシェリアはジャイアントビッグピヨからの連絡を受け取ったのだ。――正確には、受け取ったのはピヨ1号2号3号たちだけど。

「大変! ママ、更科先生が大変なことになってる!」
「本当ですねぇ〜」
「更科先生にはこれまでいろいろとお世話になってきてるもん! この子たちだってくれたし!
 今度は悠里たちが更科先生に手を貸す番だよ!」
「そうですねぇ〜」

 悠里の切羽詰まった気持ちが表れている声に対し、ルーシェリアはのほほんと返しているように聞こえるが、これは彼女独特のしゃべり方であって、決してその気がないわけではない。むしろ反対。

「普段からピヨたちにはお世話になってるですし、その生みの親と言える(?)更科先生のピンチとなれば、これはもうお手伝いしないわけにはいかないですぅ。
 悠里ちゃん、一緒に探してくれますかぁ?」

 母からの言葉に、悠里は元気よく「うんっ!」とうなずく。
「ありがとうございます〜」
 頼もしい娘の姿が見られたことがうれしくて、ルーシェリアはにっこり笑った。

「それでママ、何をしよう?」
「とにかく犯人の手がかりを掴まないとなので、聞き込みをしましょう〜」

 そうして悠里と2人、オレンジとイエローのぴよぐるみ姿で探索を行っていたところ、やはり同じくジャイアントビッグピヨから事情を聞いたピヨを連れたレティシア、ミスティの2人と行き合わせたというわけだった。

 同じ目的なら一緒に動いた方がいいと、4人が意気投合したところで、ジャイアントビッグピヨから追加情報が入った。



「盗られたというのは、タブレットだったのですかぁ」
 悠里の頭の上でぽよんぽよんトランポリンのように飛び跳ねている、赤いリボンをつけたオレンジ色のピヨ1号からの伝達に、レティシアが言う。
 ちなみにレティシアも麗茶牧場の桃色のぴよぐるみを着ているので、ぴよぐるみ姿の3人がぽてぽて歩く姿は、後ろから見るとカラフルな卵がゆらゆら揺れながら歩いているという、なんともシュールな光景である。

 1人だけ普通の格好をしたミスティは、その光景に複雑な表情をしながらも黙って後ろをついて歩く。

「ひどい! 更科先生から絵を描く道具を奪うなんて! 絵を描くことは先生にとって、すっごく大切なことなのに!」
「そうですねぇ〜。そんなことをする人は、ぎったんぎったんにしてやりましょうねぇ〜」
「うんっ! そうする!」
 どうやら悠里は本気で腹を立てきっているようだ。

「絶対、絶対そうしてやるんだからっ!」
 奮起し、いても立ってもいられないというように駆け出す。

「あ、悠里ちゃん。いきなり走ったりすると危ないですよぅ」
 レティシアが注意を喚起するが、少しばかり遅かった。
 角を曲がった直後、悠里は反対側から歩いてきていた者とぶつかって、ぴよぐるみを着ていたせいでぼよーんとはじき飛ばされる。
 そしてこれまたぴよぐるみを着ていたせいで、ぼいんぼいんと地面を跳ねて転がった。

「悠里ちゃん!」

 ルーシェリアはあわてて地面にひっくり返って手足をじたばたさせている悠里のもとへ駆け寄る。

「すみません、大丈夫ですか?」
 ルーシェリアと同じくらい、あせってあわてている声が、角の方からした。
 見れば、鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)とそのパートナーの常闇 夜月(とこやみ・よづき)だった。
 おそらく貴仁とぶつかったのだろう。貴仁は心配そうにひっくり返った悠里を見ていて、自分もそばに膝をつくべきか思案しているようだ。
 反して夜月はいかにも他人事という顔でけろりとしている。
 そしてその頭や肩の上では、1匹のオレンジ色したピヨと、黄色のピヨ6匹がいて、やはり夜月たちと同じようにぴよぐるみを着てピヨになっている2人を興味津々顔で見ていた。

「悠里ちゃん?」
「うん。全然へーき。どこもなんともないよっ」
 ルーシェリアに引っ張り起こされた悠里は笑顔で言う。本当に何ともなさそうだ。これもぴよぐるみを着ていたおかげだろう。
 そして貴仁を見て、ぺこりと頭を下げた。
「いきなり飛び出しちゃったりしてごめんなさい」
「……いえ。おけががないようでほっとしました」
 悠里の様子に、貴仁もようやく安堵する。

「あのぅ。
 もしやあなたも、更科先生の失せ物探しをされてるんですかぁ?」
 少し離れたところから全体を見ていたレティシアが、夜月の連れているピヨたちを見て訊いた。
「ええ、まあ。
 ということは、あなたたちもですか?」
 訊き返してはいたが、返答は貴仁も分かっていた。
 3人のぴよぐるみの格好、それにそれぞれがピヨを連れているのを見れば一目瞭然だ。

 目的が同じと知って、レティシアはルーシェリアにしたように同行を申し出、貴仁は快く了承した。

「聞き込みをそれなりにすれば、犯人はすぐ見つかるでしょう」
「そうですねぇ〜」
 貴仁の言葉に、レティシアもうなずく。

 しかし貴仁の狙いは、さらにそこから先にあった。
 ジャイアントビッグピヨから最初の連絡が来たときは純粋に、更科太郎のために探索を始めた貴仁だったが、盗まれたのがタブレットだと知ってから、ちょっとよこしまな考えが忍び入ったのだ。

(犯人から回収できたら、数日(無断で)お借りしましょうかね。なに、ほんの数日ですよ。最後にはちゃんと先生にお返しします。
 なんだったら、その場でこの改造HCである常世思金【MODE魔障壁】につないで、使ってみてもいいですね)

 そのためには、他の者に見つけられ、更科家へ運ばれる前に手に入れなくては。
 ここで彼らと一緒に行動するのは、彼らの行動を見張る分にもちょうどいい。

「それにしても、ひどいやつもいたものですね。いくらタブレットがほしいからって、ひとの物を盗むのは犯罪です(でも俺はちゃんと最後には返しますし、更科先生から盗むわけでなく、強盗犯から盗むわけですから。こらしめる相手は犯人なので、俺はなんにも悪くないですね)」
 にっこり。

 腹黒貴仁は罪悪感のかけらもなく、笑顔でレティシアたちと会話しながら歩いて行く。
 それをうすうす感じ取っているのは夜月だけだ。

(まったく……貴仁様ったら、何かよからぬことを考えているみたいですね……。
 まあでも、タブレットを探すのと、犯人を探すのが先決ですわよね。それがなければ何も始まりませんし)

 ため息をつく夜月に、心配そうにピヨがじっと見つめる。
 ちなみにリーダー格のオレンジ色のピヨが【夜月専用カラーピヨ】、ほかの黄色のピヨたちは【1Pカラーピヨ】【2Pカラーピヨ】【3Pカラーピヨ】【4Pカラーピヨ】【5Pカラーピヨ】【6Pカラーピヨ】と呼ばれている。同じピヨだが、微妙に浮かべる表情や縛っているゴムのカラーが違っていて、見分けるのは簡単だ。

「心配してくれるのですね。では、もしも貴仁様が何かしでかしそうになりましたら、よろしくお願いしますね」
「ピイッ!」
 夜月からのお願いに、ピヨたちは勇ましく手に持った携帯用ゲーム機を掲げる。

 彼らの使える技は【ゲームをして遊ぶ】からの【他のピヨを巻き込んでの順番のことで喧嘩】なので、この事態に具体的に何ができるかまったく想像がつかないのだが。
 夜月は「任せて!」というふうに胸を張るピヨたちのかわいらしさに「ふふっ」と笑う。
 そして少しだけ安堵して、ピヨたちとともに貴仁たちの後ろについて歩き出した。


 その一連の様子を、見守っていたのがミスティである。
 レティシアの見守り役がすっかり板について、影が薄くなったというか存在感が希薄というか。
 そのおかげでだれにも意識されることなく、それぞれの表情やら仕草やらを観察できていたミスティは、なんとなく、貴仁のうさんくささにも気づけていた。

「レティったら、あんなに簡単に信用して……。
 本当に、フォローする身にもなってほしいわよ。
 かといって、レティもピヨたちも放ってはおけないですし。陰ながらみんなのフォローをしていきますよ……」
 ――はぁ……。

 ため息をつき、首を振りつつミスティは一番後ろをひっそりと歩いて行ったのだった。