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リアクション
【デザート】
ツァンダ。
この日何時もと違う場所での任務を終えたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、その足で『あおぞら』へと向かった。
「さて、仕事も終わったし、パラミタオータムジャンボ当選祈願で思いきり食べるわよ!」
席に着くなりそう言ったセレンフィリティから(去年も年末にそんな事言ってなかった?)と思いつつもやんわり視線を反らし、セレアナはきちんとメニューを眺めてから
「きのこごはん定食お願い」と注文した。
さて愛するパートナーが、このスピードで喉の奥に飯を『吸い込んで』どうして会話まで出来るのか、セレアナには心から不思議なのだが――、セレンフィリティとあおぞらの看板娘ジゼル・パルテノペー(じぜる・ぱるてのぺー)はカウンターごしの会話に花を咲かせていた。
「そっか、蒼空学園か。あそこは一番学園らしい学園だもんね。それにあそこの食堂の定食、どれもおいしいし、購買の焼きそばパンは……」
おまけに食事中に食べ物の会話が出来るのが、謎だ。理解し難い。
実はセレンフィリティはシャンバラの学校全ての食堂を制覇している。女子禁制の薔薇の学舎にすら俳優に施される特殊メイク技術顔負けの見事な変装で潜入を果たしていた。
その目的は専ら、彼女の飽くなき探究心――という名の食欲を満たす為だ。
そんな訳でセレンフィリティの頭には、各校のお勧めメニューが網羅されているのである。彼女のそんな楽しい会話に耳を傾けながら、ジゼルはカウンターの向こうで忙しく動き回るミリツァ・ミロシェヴィッチ(みりつぁ・みろしぇゔぃっち)へ視線を向けていた。
「――でも本当にね、ミリツァが蒼空学園を選んでくれて良かったなって思うの」
「お義姉さんだものね」
セレアナが微笑むのに、ジゼルもにこりと笑う。
「うん、単純に家族がってところもあるけど、それだけじゃなくて。
自分の居場所を認めて貰えたみたいで、それが嬉しいなって……」
「そうね、分かる気がするわ。
私も教導団が良い場所だって言って貰えたら嬉しいわよ。ね、セレン――」
セレアナが頷き、パートナーへ同意を求めようと瞳を動かした時だ。
ふとセレンフィリティの異変に気付き、セレアナはカウンターの下でセレンフィリティの太腿へ柔らかく手をおいた。
セレンフィリティがシャンバラ教導団を選んだ理由。それは彼女が持っていた自殺願望からなのだ。
愛する人が凍り付いた様は、セレアナの心を不安へと誘うが、彼女は言いかけた「大丈夫?」という言葉を飲み込んだ。
そしてゆっくりと、強張った表情ごと和らげるように手を往復させると、セレンフィリティは自らが見せていた陰に気付いたようだ。
その一瞬に気付いたのかは分からないが、ジゼルは包み込むような笑顔をセレアナへ向けると、ぱっと切り替えて顔を上げミリツァを手招きしている。その隙を使って、セレンフィリティは何時もの、陽気な表情へと戻る事が出来たようだ。
「決まってるじゃない! なんせあそこでは好きなだけ銃が撃てて好きなだけモノをブッ壊したりできるんだから!
さて、そろそろ食事に戻らなきゃね!
秋の夜長はじっくりと愛し合うんだから今のうちに精をつけないと!」
「もう、セレン!」
二人が見せた異変に
こうして呼び寄せられたミリツァが、学校見学の時の礼を二人にすると、セレアナは足を組み替えながらこう言った。
「いい、学校に入ったら勉強とかはほどほどにしてとにかく学生のうちにできることは何でもやりなさい。
極端な話、勉強なんて学校に行かなくてもできるのよ。
でも、学生時代にしかできないことは、学校を出た後じゃ出来なくなるのよ」
「有り難う。
先輩の貴重なご意見、有り難く頂いておくわ」
* * *
その一年後――。
再びツァンダを訪れた二人は、何時ものようにあおぞらへ顔を出していた。
「今日はお祝いだからね! 盛大に食べまくるわよー!」
「もう、セレン!」
何時ものやり取りを聞きながらくすりと笑い、ジゼルはにっと笑ってセレンフィリティに問いかける。
「そしてデザートは――?」
「勿論セレアナよ!!」
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