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【ざんすか内乱】だいこんらんのだいこうや【第2話/全3話】

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【ざんすか内乱】だいこんらんのだいこうや【第2話/全3話】
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■□■3■□■「ここいらで手打ちにしようではないか」

 本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は、
 じゃたとともににざんすか、しゃんばらだいこうや達の手打ちの宴を提案する。
 「じゃたの言っていることはもっともだ。だから私はじゃたに協力するよ。
  確かに過去の遺恨があるかもしれない、
  しかし今はそれを持ち出して地祇同士で相争っている場合じゃないだろう。
  だから、ここいらで手打ちにしようではないか」
 涼介は、特技の調理で「オムスビ」をたくさん作って持ってきていた。
 「おにぎりとかにぎりめしとかライスボールとかいう食品ざんす!」
 ざんすかの発言に涼介は苦笑する。
 「今日は『おにぎり』ではなく『オムスビ』だ。
  『オムスビ』という言葉で表現しているのは縁や仲を結ぶという意味合いからだよ。
  ちなみに具は定番の鮭、梅干、オカカの他に
  シンプルな塩結びや豪華な天むすを用意している。
  好みや食べられない物がある者もいるかもしれないからね。
  あなた方も一暴れしておなかがすいた頃合だろう。
  さあ、これを食べてお互いに「ごめんなさい」をしたら、喧嘩は終了にしましょう」
 「もぐもぐ、争いはやめるじゃた。
  戦が始まるとごはんが減るのじゃた。
  昔からそうだったじゃた」
 じゃたはすでに食べはじめている。
 「まあ、これ以上、ここで暴れないと約束するのであれば、別にかまわぬぞ。
  言ったであろう。
  我はされたことはけして忘れないと。
  おまえが地球式のやり方で、和平を提案するなら、
  我もそれに応えるまで」
 しゃんばらだいこうやは穏やかな笑みを浮かべる。
 「うん、その笑顔の方がかわいいと思うよ」
 「じゃ、若輩者、無礼であろう」
 涼介に応えるしゃんばらだいこうやは、外見どおりの14歳の少女のようであった。
 
 一方、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)は作戦を実行しようとしていた。
 (じゃたをふたたび食べ物依存症に仕立て、
  それを機に暴走したじゃたをきまくやひらにぃにけしかけてみると
  うまくいくんじゃないかな?
  ただ、ざんすかやつぁんだ達に犠牲が出ても、結果オーライだよね?
  こうやって、表面上は和解してるように見えるけど、
  きまくやひらにぃはまた暴走しないとも限らないわけだし)
 ネージュは、醤油味の米菓子を大量に用意して、
 じゃたはじめ、お茶会に出席する者全員にふるまっていた。
 「おいしいあられとほうじ茶で、ほっと一息つきませんか?
  たくさん持ってきているから、遠慮しないでくださいね」
 「もぐもぐ、ばりばり、米はうまいじゃた」
 (オムスビでお米をたくさん食べてくれたのもよかったよね。
  これで、うまくいくといいんだけど)
 ネージュがそんなことを考えている横で、
 立川 るる(たちかわ・るる)は、
 しゃんばらだいこうやに話しかける。
 「ねえ、しゃやちゃん!」
 「しゃ、しゃやちゃんだと?」
 「しゃんばらだいこうやって長いから、頭とお尻をとってしゃやちゃん。
  この間、るるが天体観測した結果なんだけど、
  新しい星がたっくさんみつかったの!
  なんとその数14個プラス彗星2つ。
  思った以上に見つかってびっくりだよ!
  これはもう、この大荒野に天体観測所を造って、もっとしっかり観察するべきだよね。
  ってことで、地元の人の代表であるしゃやちゃんに許可をもらいに来たんだよ。
  天文学は文明社会に欠かせないし、
  それでなくても、しゃやちゃんはシャーマンなんだから、星占いもするでしょ?」
 「なにっ、新しい星が!?
  これは何かの前触れかもしれぬな」
 「たしかにたくさんお星様が打ち上がったねー。びっくりだよ。
  でも、たぶんぶっ飛ばされた人だと思……もごっ」
 るるは、パートナーの守護天使ラピス・ラズリ(らぴす・らずり)の、
 良心あふれる指摘を口を塞いで阻止した。
 「でしょー!
  うんうん、ここに天体観測所があれば、お互いにハッピーだよねっ。
  ついでに設立も手伝ってほしいなぁ〜。
  ラピスはしゃやちゃんにプレゼンするために、
  新しい天体観測所の設計図を描いてきたんだよねっ」
 「うん、僕、天体観測所の設計図をパラミタがくしゅうちょうに描いてきたよ」
 大好きな絵の話を振られて、ラピスの常識回路はあっさり機能停止した。
 「ほう、悪くないかもな」
 しゃんばらだいこうやは言う。
 前回、「るる彗星」のひとつになったカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)は、
 喪悲漢と丈夫な段ボールを使って、クマの被り物を作り、
 狼の毛皮を被っているしゃんばらだいこうやに親近感を得ようとしていた。
 「ボク、しゃんばらだいこうや様とシャンバラ大荒野を崇める信者として、
  ぜひ聖地を巡礼したいんです!
  しゃんばらだいこうや様の守護する遺跡の話を聞かせてください!」
 (なんか、この娘、おだてに弱そうだし、
  適当におだてて遺跡の場所を聞いて、
  こんなバイオレンス地帯とはとっととオサラバだよ!)
 そんなカレンの様子を見て、もうひとつの「るる彗星」で
 カレンのパートナーの機晶姫ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)は、言う。
 「カレン、それは普通のモヒカンではなく喪悲漢だぞ。
  そんなもので被り物を作って、パラ実生の怨念で呪われても知らぬぞ」
 「そういうジュレはなんの被り物にしたの。緑色のキリン?」
 「だいこうやが狼で、カレンが熊ならばと、
  我は、せっかくだからシャンバラの最強生物であるドラゴンの被り物を作ったのだが、
  材料が足りなくて角が作れなかったのだ。
  これはその、色が黄色ならキリンそのものだな。まぁ動物ならいいだろう」
 「我とシャンバラ大荒野を崇めるとは感心な娘よ。
  よし、教えてやろう。
  我の守護する遺跡とは、
  神子を選定する力を持つ偉大なるシャンバラそのものの地祇、しゃんばら復活のための場所なのだ」
 「えええ! めちゃくちゃ重要な場所じゃない!」
 カレンは身を乗り出す。
 ナナ・ノルデン(なな・のるでん)は、しゃんばらだいこうやに、貢物を差し出しながら言う。
 「しゃんばらだいこうやさん、
  一連の戦いでは非礼をお詫びいたします。
  この度は、しゃんばらだいこうやさんに断りもなく、
  ざんすかさん達が開戦してしまい申し訳ありませんでした。
  次からは、ちゃんとしゃんばらだいこうやさんにも開戦の御連絡を差し上げるよう、
  言って聞かせますので……今日のところはとりあえず、これをお納めになって御気を鎮めください」
 「なんだこれは。砂糖菓子の中に酒が入っているのか。
  気に入ったぞ。
  おまえの言うとおり、我にきちんと申し出た上で、
  しかるべき場所で戦を行うなら許さぬ我ではない」
 「シャンバラ大荒野産のウィスキーボンボン」を献上され、話が通じやすくなったところで、
 ナナのパートナーの魔女ズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)はたずねる。
 「じゃたが言ってた、
  大きな都市の精が貰っていた「丸くて光るもの」について聞いてみたいな。
  ざんすかとつぁんだは覚えてないようだけど、
  皆が皆、記憶の中から消えているのか……。
  それとも、ざんすかとつぁんだが忘れているだけなのか……」
 「丸くて光るものだと?
  古王国期のことであれば、我の生まれる前のことやもしれぬ。
  少し思い出してみよう」
 「あうあう、遺跡は遺跡は遺跡はあーでも光って丸いのも気になるっ」
 「落ち着くのだカレン。しゃんばらだいこうやは、
  遺跡のことはしっかり記憶しているはず。まずはこの話を聞こう」
 カレンをジュレは制止する。