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リアクション
「ノイエはさすがに、気合が入っているな?」
騎狼部隊は、機動性を生かし幾名かが道中や周辺の警戒に就いている以外は、のんびりと後詰に追従している。勿論、任務になれば迅速な対応は可能だろうが。
林田 樹(はやしだ・いつき)は孤児院の皆に挨拶を告げてきた。(預けられていた獣人兵の一部も従軍している。)
――「じゃあ、またな。次にあうときは、一回り大きくなる頃かな?」
「樹様、出立時間が迫ってますので、急ぎましょう。こたちゃんも準備OK?」
ジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)、緒方 章(おがた・あきら)、林田 コタロー(はやしだ・こたろう)らも勿論、林田と共に出発する。
「じゃ孤児院のみんな、元気でね。
僕は樹ちゃんを守りながらコンロンへ向かうよ」
「わーい。洪庵師匠?いいねぇ」「いつきちゃんをまもりながらだって!」「ちゃっかりだね??」
「いーだろ? ……早くそういう人を見つけると良いよ」
「じにゃ、こたもおっけーらお!」
こたろーは、樹の騎狼の頭のうえに乗っかる。
「じゃ、しゅっぱつしんこー、なのれす!」
……といった次第だ。
「まぁ、まずは騎狼に乗りながら、てくてくのんびりと陸路移動を行う予定だ。移動速度は早めの方なので、陸路組から離れない程度に、のんびり辺りの景色を眺めながら……と」
東側各校の近隣地域を抜ける等の不安要素に、安心はできないものの、士官や兵らにとって久々の遠征でもあるので、(皆この先の不安をどこかにかかえてはいるものの)外へ出て遠い地へ行く気分は心躍らせるものでもある。とくに中軍のノイエ・シュテルン等は軍隊然とした行軍であったが、それ以外は第四師団らしくちょっと修学旅行な感じでもある。
「で、樹様?」
ジーナが語りかけてくる。
「いつまで騎狼部隊の雇われ御三方の名前を教えていただかないんですか?
このままずーっと名無しさんの予定なんですか?
ワタシは呼びづらくてしようがありません!!」
「……」
黒羊郷探訪から南部戦記にかけて、もとはイレブン・オーヴィルとの交流から騎狼部隊の主要な仲間になった面々だ。この老人らのように、南部地域でもともと傭兵やなかには食い詰めをやっていたような者も、師団の兵力に加わっている。
「良いですか、この機会です、親睦を深めて下さいましっ!」
「……分かった、ジーナ。
この爺達の話し相手をすれば良いんだな?」
え、えーっと、お前は、なんて名前だ?」
「よう。この旅でも、よろしく頼むわ。まだ名前も言ってなかったのう。
ジジーユと申す」
「ジジーユ。か……(ちなみにイレブンのスライムはジユー)。
うん。よろしくな、爺さん」
結局癖で外見呼びしている林田。
「へえ、そういう名前だったんだ。
今まではどこで何をやっていたんだい?」
騎狼のうえからティータイムでお茶を勧めつつ、緒方も話しかける。
「もう何十年かもわからん昔は、南部の豪族に仕えた時期もあったぞい。
そのあとは諸国放浪したことも……しかし、コンロンはわしでも初めてじゃわい。
おお。おお。かえるくん……こたくんも、よろしくの」
「ねーたんねーたん、じーじのなまい、なんてーの? じじーゆ?
じじーゆしゃんれすね? よろしくおねまいしますれす」
そのやりとりを横目に、ジーナ、
「コンロンですか。それにしても、コンロンには何があるんでしょうね?」
「コンロンか……」「うむ」
騎狼部隊の兵らも、皆、この遠征の行く末を思う。
「……。
温泉があったら、まったりしっぽり入浴したいです」
それは……実にいい。
「餅抜きで」
「温泉ねぇ、療養所はいくらあっても足りないもんね……って、僕抜きかいっ!」
「ってこら、ジーナもアキラも何ケンカしてるんだ?
……はぁ?! ……いや、違っ、どちらも、そういった関係では、ないっ!
色恋沙汰とか、何だとか、そういうもんでは……ああもうっ!!」
騎狼兵らも、林田のやり取りをニヤニヤ見つめる。「林田さん。いいなぁ」「緒方殿もうらやましいことだ(?)」
林田は、恋愛話は苦手なのであった。緒方としては、ツンが多めなのでもう少しデレの方を出してもらいたい? 「い、痛っ……」手が出る前に。
「今回の出兵は、ノイエや獅子からも多くがあちらに行っているように、武装飛空艇が出る」「ああ」「これまでより、火力が主体となる戦になれば、俺達の前線での任務も減るのだろうか」「第四師団といえば騎狼部隊あり。と言える面があったが、どうだろうな」こんな話も聞かれた。「そうなれば……俺達は」「温泉か」「うむ。温泉だな」
「おんしぇんれすか?
こたは、おんしぇんより、おんしぇんたがも(温泉卵)、たべたいれすー。
う! じにゃも、あきも、けんかめー!!」
更に後方……
「ふむ……林田も、和気藹々さではノイエに負けていない。こいつらも、ある意味、ノイエにも龍雷にも負けていないが……」
きゃっきゃ、うろちょろと、騎狼に乗ってはしゃぎ回るルー・ラウファーダ(るー・らうふぁーだ)や、あっちいったりこっち行ったりのクー・キューカー(くー・きゅーかー)。「クッ。クッ。クッ。クッ。キュー。キュー」
「ハハハ」そんな二人をあっちへ行くなこっちへ行くなと注意しながらも、ルケト・ツーレ(るけと・つーれ)も楽しそうだ。
「はァ」
そしてデゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)。
のんびり旅をする。一応、後方警戒のためというのが建前だがな。なんだか、騎狼部隊の中でもさらに孤狼になってきた気がするな、最近。……。
それはともかく……
「デゼル」
「ルケト。……ああ」
「どうした? 今回は、第四師団の武将待遇じゃないか。大きな手柄でも狙っていってみれば?」
「そうだなぁ。やはり戦いは起こるか。
どんな戦いになることか……それにもよるだろうがな」
新星や、騎狼部隊に守られつつ、大岡少尉の指揮する輜重隊。
ここにも、教導団の初々しい新人。
「輸送科の佐野 葵(さの・あおい)です!」
佐野? と言えば……
実際、そのようである。葵は、兄を連れ戻すためにパラミタへ来た。兄が教導団にいると聞いて入学したが、同時期に兄が空大に進学して入れ違いに……。もと教導団で、その後、空京大学に進学した男と言えば第四師団においても様々なシナリオにおいても闇商人として活躍したあの男。
葵の目的は叶うのか、ともあれ、特に軍事知識や技術があるわけでもないので苦労している、とのこと。
「まだ来たばかりなので配属とかは決まっていませんが、今回はよろしくお願いします!」
ポニーテールでまだ幼い少女の彼女。これは教導団の兵も嬉しかったに違いない。本人はその幼い外見を気にしているのだが……。
率先し彼女を手伝おうとする男性教導団員らをちょっとはた迷惑に思いつつも、荷馬車にできるだけの食糧・弾薬・医薬品その他消耗品等の物資を詰め込んだ。
彼女のことを妹のように可愛がる、パートナーのルナ・レイトン(るな・れいとん)も遠征に同行し、荷馬車の一つを運転している。
もともと遺跡巡り等一人旅をしていたヴァルキリーなので旅慣れてはいるが、さすがにコンロンは初めてだという。「蛮族なんかに見つからないといいけど、さすがにこの規模で移動してたらそれは無理よね……そのときは、しっかり葵のことを守るわ」
葵は葵で、騎凛教官のことがちょっと気になっていたりした。「……っ百合的な意味じゃないですよ。同士的な意味で(見た目と年齢があってない!)」
さて、その騎凛教官は百合園のあるヴァイシャリーで今頃……?
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