リアクション
卍卍卍 「感謝いたします、ハイナ殿。空京への旅路、私がお守りいたしまので」 飛空艇の中では、重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)が要人ガードとして控えている。 ハイナは「礼にはおよばない。葦原明倫館総奉行として責務を果たしているだけだから」と答えた。 「それより、肝心のシャンバラ政府との交渉は、立案者の武神殿にやってもらうでありんす。主の心配をしたほうがよいでありんすよ」 「と、いいますと?」 「以前に改革を断行しようとした楠山大老が暗殺されたように、開国を良いように思わない連中も大勢いるでやんす。シャンバラとの交渉の進み具合によっては、武神殿も用心することに越したことはないでありんすよ」 「……マホロバで命を狙われると申されるか」 ハイナが返事をしないことがその答だった。 リュウライザーも黙りこみ、彼女は明日の葦原の行方を思案しているようだった。 卍卍卍 空京。 そこはシャンバラにとって大事な拠点である。 シャンバラ政府もこの場所にあり、マホロバから幕臣がやっていたということに一同驚きを隠せなった。 なんせ、これまで正式な国交らしきものが行われてこなかったのである。 極東に浮かぶ謎のベールに包まれた国。 神秘的な黄金の国マホロバ。 そんな認識が独り歩きしているくらいであった。 そのような場所へ牙竜は葦原明倫館総奉行とやってきたのだ。 そこで、彼は以下のような協定を申し出た。 一、世界樹イルミンスールから世界樹・扶桑へのコーラルネットワークを利用した生命力の供給 一、扶桑への付け火犯人の国際手配と処罰 一、扶桑火付けにより弱まったことで被害拡大した基金や疫病への支援のために蒼十字の派遣要請 一、マホロバで戦っている他校生イコンの修理のための物資と人員の派遣 直ちに審議が開始されるが、それはまる三日かかるという事態に陥った。 大きな問題として、マホロバが国際的にまだ公式に認めてれていないということがある。 これまで政治の表舞台に出てこなかった国である。 ただ、扶桑という世界樹の存在は確認されており、パラミタ全体の問題で考えれば、由々しき事態であるという見解になった。 結果として、シャンバラ政府とは通行通商条約を結ぶという合意至った。 内容は主に、マホロバの鎖国政策をできるだけ緩和し、一般のシャンバラ人やマホロバ人に対して海外へ渡航を認めること。 輸出入の制限を緩和すること。 そしてマホロバ国内で犯罪を犯した者を国際手配犯としてシャンバラ政府も対応すること、であった。 そしてもう一つ――重要なことがあった。 「コーラルネットワークですね」 武神 雅(たけがみ・みやび)が神妙な顔つきで、リュウライザーからの連絡を聞いている。 リュウライザーは会談の成功だけを伝え、彼女たちに無用な心配をかけさせまいとしていた。 「今、イルミンスールではアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)様が不在だって聞いてるけど……」 雅の目配せに龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)も相づちを打つ。 「とりあえず、八咫烏(やたがらす)を派遣してこのことを各地に伝えましょう。心配するのはそれからよ」 灯の支持で黒い影の忍者軍団がほうぼうへ散っていく。 彼女たちはそれをいつまでも見つめていた。 やがて意を決すると、雅が灯に言う。 「……私たちも行こう。扶桑の元へ」 |
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