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【●】葦原島に巣食うモノ 第一回

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【●】葦原島に巣食うモノ 第一回

リアクション

   十八
 少し時間を戻す。
 思い切り出遅れたゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)が洞窟にやってきたのは、カタルたちが最下層に辿り着いた頃だった。
「ん〜、今更行っても間に合わねェだろうしなァ」
 封印が成功するかは分からない。だが、どちらにせよ傍観しているのはつまらない。ゲドーは橋に機晶爆弾を仕掛けることを思いついた。戻ってくる契約者たちごと爆破するのだ。
 ゲドーが機晶爆弾を用意していると、そこに一人の侍が現れた。
「葦原藩が武家隠代 銀澄(おぬしろ・ぎすみ)です! 覚悟しなさい!」
 しばしぽかんとしたゲドーは、すぐにげらげらと笑いだした。
「何がおかしいのです!?」
「いやいや……あんまりストレートなもんだからよ」
 ひーひーと笑いを堪えながら、ゲドーは涙を指で拭った。
「それにしても、よくここにいたな? もしかして、置いてかれたとか?」
 無論、そんなことはない。ゲドーとは違う。
 銀澄のパートナー、樹龍院 白姫(きりゅうりん・しろひめ)が、【御託宣】で爆弾のことを知り、彼女に知らせてきたのである。他の人間に伝えなかったのは、何より封印を優先したからだ。
「引きなさい! 手加減は出来ませんよ!」
 ゲドーは「黄昏の大鎌」を構える。
 銀澄は鯉口を切った。
伍の太刀『桜枝垂』!
 刃が鞘の中を走る。ゲドーが鎌を振り下ろすより早く彼の肩を襲い、再び鞘へと戻った。
「ってェ!」
 ゲドーは痛みに持っていた機晶爆弾を落とした。よし、と銀澄は笑みを浮かべ、ゲドーは舌打ちして銀澄から離れた。
「しょうがねェ、今日のところは退いといてやるわ」
「それが賢明です」
「じゃ、な」
 ゲドーは【空飛ぶ魔法↑↑】で逃走した。
 銀澄は機晶爆弾を回収しようと、腰を屈めた。
 ――ット。
 矢が、爆弾に突き刺さった。
 閃光が弾ける。
「信じる者は救われるのですよ」
 シメオン・カタストロフ(しめおん・かたすとろふ)が、そう呟いた。


 相田 なぶら(あいだ・なぶら)カレン・ヴォルテール(かれん・ゔぉるてーる)は、明倫館の広場で怪我人の手当てを行っていた。
 避難の際に転んだ者、押し合って殴り合った者などはなぶらが、触手に食われかかった者はカレンが担当した。
 対人恐怖症のカレンには、口もきけないほどの重症患者の方が有りがたかったが、家族がやってきて何かしら質問する度に声がどんどん小さくなるので、しまいには「これかぶっとけば?」と誰かが紙袋をくれた。
 しばらくはそれで治療を続けていたが、銀澄が運ばれてきたときにはさすがにかなぐり捨てた。
「医務室へ運べ!!」
 ストレッチャーががらがらと音を立てる。カレンは走りながら、【命のうねり】や【キュアオール】を銀澄にかける。
「しっかりしろよ! 死なせないからな!」
 それを見送ったなぶらは、残る患者たちに向き直った。
「さあ、他の人たちは俺が診るよ」
 ふと、木に背を預け、その様子を眺めなているヤハルになぶらは気づいた。
「治療、しようか?」
 なぶらが声をかけると、ヤハルはかぶりを振った。
「僕はいい。もうすぐみんなが帰ってくるだろうから、そっちを優先してくれるかな?」
 封印は成功したとの連絡が、ハイナの元へは入っている。妨害をした者たちは、残念ながら取り逃がしたというが、カタルや契約者たちも何とか無事で戻ってくるようだ。
 分かった、となぶらは頷いた。
「ヤハルでありんすね?」
 ハイナが「風靡」を片手に近づく。
「この度はご苦労でありんした」
「総奉行も」
「訊きたいことは色々ありんすが、今は、やめておくでありんす」
「そうしてもらえると、ありがたいですね」
 ハイナの横顔は、決して晴れていない。犠牲は小さくなかった。葦原の町は、壊滅的なダメージを負っている。まだ分からないことも多い。
 何より、
「これで終わったでありんすか……?」
 彼女の呟きが、全ての不安を、そしてこれが始まりであることを予見していた――。

(続く)

担当マスターより

▼担当マスター

泉 楽

▼マスターコメント

この度はご参加ありがとうございます。泉 楽です。「葦原島に巣食うモノ 第一回」をお届けします。


今回のメインは、洞窟で化け物を封じること、町で触手を退治することの二つでした。
前者に於いては「最後までカタルたちと行く」という人がほとんどでしたが、さすがに全員というわけにはいきません。戦闘以外のアクション部分(カタルたちに質問する等)を参考に順番を決めました。町中での戦闘も、ほぼ同じです。
洞窟内の戦闘は、前半は忍者たちとのみ、後半はそれに幻術がプラスされています。なので、「せっかく幻術への対処法を用意したのに無駄だった」「用意してないので困った」という方には申し訳ありませんでしたが、上記の理由ですのでそこはご勘弁を。

洞窟に行った人は全員、カタルやオウェンと顔見知りになりましたが、最初に戦った人と最後までいた人で親密度に変わりはありません。全員、同程度の知り合いです(どちらにせよ、態度は素っ気ないですが、挨拶ぐらいはしてくれます)。

尚、次回「葦原島に巣食うモノ 第二回 〜第二回葦原明倫館御前試合〜」のジャンルはバトルとなります。お気を付け下さい。
それでは次回、御前試合でお会いしましょう。


NPCの追加情報
▼漁火
“女”の名前です。人の感情を読み、嘘を見抜きます。また、人を操る能力を有します。
PCに限らず、彼女の周囲を守る人間で自主的に仲間になった者(称号:漁火の仲間)以外は、全員、操られていると思ってください。いったん操られると、自力で目を覚ますことは不可能です。


3/9 PCの名前を修正しました。申し訳ありませんでした。