イルミンスール魔法学校

リアクション

　

　
　
「よし、一気に敵の旗艦を取るぞ」
　敵艦隊を追尾していたレン・オズワルドが、墜落した敵ヴァラヌス・フライヤーの残骸をアームで掴むと、それを盾代わりにして格闘式飛空艇アガートラームの船体前面に掲げた。そのままの体勢で一気にエナジーバーストで加速する。
　だが、敵艦隊先頭を進むスキッドブラッドへ辿り着く前に、敵戦艦が回り込んできた。わざと船腹をこするようにして格闘式飛空艇アガートラームを横から削る。
「くそ……」
　戦艦のフローターナセルと、格闘式飛空艇アガートラームのアームの一本を引き替えにされて、レン・オズワルドが唸った。レーザーマシンガンで敵戦艦を牽制しつつ、いったん後退を余儀なくされる。
　
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「いいかげん、諦めてくれないかなあ」
　敵ヴァラヌス・フライヤーのフライトユニットを、グラディウスの氷獣双角刀で使用不能にしながら、小鳥遊美羽が言った。墜落したヴァラヌス・フライヤーの脚を、地上近くにいるＳインテグラルナイトのコハク・ソーロッドとローゼンクライネが、イレイザーキャノンで破壊して動けなくする。
「またです、次来ます」
　ベアトリーチェ・アイブリンガーが小鳥遊美羽に注意をうながした。なるべく敵パイロットを殺さないように戦うのはいいが、さすがに一機撃墜するのに手間がかかる。
　同様の戦い方をしている柊真司のゼノガイストも手こずっていた。
　柊真司の卓越した空間把握能力と行動予測によって、敵の思いもよらぬ空中機動でヴァラヌス・フライヤーのフライトユニットをビームサーベルでピンポイントに使用不能にしていっているのだが、さすがにそんな機動ばかりをしていてはエネルギーが持たない。なるべく動きを少なくしようとはしているが限界はある。
　
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「まだ、動ける敵がおります」
　クナイ・アヤシが注意をうながす。
　地上で、墜落したヴァラヌス・フライヤーとレイピアで切り結んでいた清泉北都が、後ろから迫るアートゥラ・フィーニクスをウイッチクラフトピストルで撃った。
　同時に、クローで斬り裂いてこようとするヴァラヌス・フライヤーのセンサーの前でマントを翻す。一瞬視界を奪われて動きが鈍ったヴァラヌス・フライヤーのジェネレーターにマントのむこうからレイピアを突き込んだ。
　あおむけにヴァラヌス・フライヤーが倒れるところへ、高速移動で退きながらナパームを叩き込んで止めを刺す。シパーヒーをベースとしたアシュラムだからこそできる華麗な動きだ。
　一方のアートゥラ・フィーニクスの方は、ウイッチクラフトピストルを避けて後退した拍子に、エヴァルト・マルトリッツのヴェルトラウム・ツヴァイスと鉢合わせしていた。問答無用で、ヴェルトラウム・ツヴァイスがパンチでアートゥラ・フィーニクスを殴り倒す。
「地面の上でなら、こいつらも相手にならないな」
　起きあがってきたアートゥラ・フィーニクスの頭部を掴んで握り潰すと、エヴァルト・マルトリッツが拳を叩き下ろして敵を沈黙させた。
　
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『――さすがに残る敵は多くはない……はず』
　十七夜リオがフェルクレールト・フリューゲルに言った。
『――ヴァラヌスはかなり撃ち落としたし、地上で掃討してくれてるはずです』
　アートゥラ・フィーニクスとドッグファイトを繰り広げながら、フェルクレールト・フリューゲルが答えた。
　敵フィーニクスのカスタム機のスピードに確実についていけるのは、メイクリヒカイト‐Ｂｓｔぐらいだ。
　激しく位置を入れ換えながら、レーザーマシンガンとツインレーザーで撃ち合う。
『――もう一機。銀色！』
　レーダーに敵影を確認して、十七夜リオが精神感応で叫んだ。
『――リミッター解除！』
『――フルスロットル！』
　バリアブルウイングスラスターが後方をむき、一瞬にしてメイクリヒカイト‐Ｂｓｔが急加速する。先ほどまでドッグファイトを繰り広げていたアートゥラ・フィーニクスに一気に追いつくと、ビームサーベルで一刀両断にする。エナジーウイングが即座に前方をむいて急制動をかけた後、左右別々に稼働して機体を急反転させる。
『――リミッターオフ！』
　活動限界に達する前にリミッターを元に戻して、メイクリヒカイト‐Ｂｓｔがミサイルを発射した。接近してきていたアーテル・フィーニクスが、一瞬にして味方がやられるのを見て急旋回した。二機で挟み撃ちにしようと思ったのが、敵の懐に飛び込む形になってしまったのであせったのだ。
『――今よ』
　直進加速から旋回速度に墜ちた敵アーテル・フィーニクスを、十七夜リオがロックオンした。フェルクレールト・フリューゲルがレーザーマシンガンのトリガーを引く。
　ブースターパックをやられたアーテル・フィーニクスが、エヴァルト・マルトリッツの待ち構える地上へと墜落していった。
　
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「さすがに、毎回簡単には抜かせてはくれないか……」
　敵戦艦からのレーザーキャノンの攻撃をアンチビームソードで受けとめながら、紫月唯斗が言った。
「だが、今だ、シフ！」
　大型の魂剛に敵攻撃が集中しているのを確認して、紫月唯斗が叫んだ。
　いったん高空に移動していたシフ・リンクスクロウが、アイオーンのバスターレールガンで敵戦艦の砲塔を狙撃していく。
「今なのだ！」
　砲撃が弱まったのを見て、エクス・シュペルティアが紫月唯斗をうながした。
　敵艦の真下に魂剛を滑り込ませると、真上に突きあげた二式のレプリカを艦艇に突き立て、そのままファイナルイコンソードで艦艇を斬り裂きつつ駆け抜ける。
　防衛線を張っていた戦艦の片方が崩れた。
　
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「敵を追いつかせさせるな。温存していたアートゥラ・フィーニクスを出す。砲撃を開始せよ」
　スキッドブラッドのブリッジで、艦長が部下たちに命令を下していた。
　砲撃が開始されると共に、スキッドブラッドの滑走路からアートゥラ・フィーニクスと三機のアーテル・フィーニクスの編隊が発進する。
　それは、アトラスの傷跡の宇宙港からもはっきり見てとれた。
『我が名は星心合体ベアド・ハーティオン！　武装集団よ、武装を解除して投降するんだ！』
　言うなり、コア・ハーティオンが、星心合体ベアド・ハーティオンの右腕と一体化したハートビートキャノンを発射した。アーテル・フィーニクスの一機が直撃を受けて蒸発する。
　だが、そんなコア・ハーティオンの説得には当然応じず、アートゥラ・フィーニクスたちは編隊を崩さずにカタパルトを目指した。
「残っている人はいませんかあ。みんな、早く避難してくださーい」
　カタパルト近くでは、夢宮未来やセレスティア・レインが頑張って避難誘導を続けていた。
「未来ちゃん、ここも危険よ。二人とも早く避難して」
「はい」
　高天原鈿女に言われて、夢宮未来とセレスティア・レインがうなずいた。後は、アキラ・セイルーンがうまくやってくれるだろう。
「まったく、ハーティオンったら、何を手こずってるのよ」
　飛んでくる流れ弾を避けながら、高天原鈿女が唸った。
　そのコア・ハーティオンは、グレート勇心剣でアーテル・フィーニクスを正面から真っ二つにしたところだった。返す刀でアートゥラ・フィーニクスも狙うが、敵のスピードの方が上回っていた。
　すぐに後を追おうとするところへ、変形したアーテル・フィーニクスが襲いかかってきた。
　ビームサーベルで斬りかかられ、素早く後ろに飛び退きつつコスモハート・ブラスターを放つ。横に移動したアーテル・フィーニクスの翼が吹き飛んだが、敵のビームサーベルもハートビートキャノンをかすめていた。
「できる……」
　コア・ハーティオンがアーテル・フィーニクスに手こずっている間に、アートゥラ・フィーニクスがカタパルトに迫った。ブースターパックから、マイクロミサイルを一斉発射する。
　直撃を受けて、カタパルトの一部が崩落した。
「きゃあ！」
「何してるのよ。やられちゃったじゃない」
　崩れてくるカタパルトの破片が、高天原鈿女たちに襲いかかる。そのとき、一台のパワードスーツ輸送車両が彼女たちの眼前を通りすぎた。偶然か意図的かは分からないが、それが盾となって飛んできた破片を吹き飛ばす。
　パワードスーツ輸送車は、そのまま止まらずに走り去っていった。
　一方のアートゥラ・フィーニクスは、変形するとビームサーベルでなおもカタパルトを破壊しようと身構えた。だが、その機体が武者ガトリングガンで蜂の巣になる。
「これは、防げませんよ。攻撃してくるポイントさえ分かれば、一人だけでも当てることは可能です」
　カタパルトの上を走る第八式改・ボゥゲンシャウツンの中で、東朱鷺が言った。
　だが、やはり一人では狙いが甘かったのか、まだ動けるアートゥラ・フィーニクスが、再び変形して空から攻撃しようとした。そこを、やっと敵を退けたコア・ハーティオンのハートビートキャノンが撃ち抜いた。だが、ダメージを受けていたハートビートキャノンも小爆発を起こして使えなくなる。
「ダメージは与えたか。スキッドブラッドを前進させろ。コントロール施設を破壊する！」
　イコンがやられたのを確認すると、スキッドブラッドが直接突っ込んできた。砲撃でカタパルトを破壊しつつ、コントロールセンターを目指す。
　東朱鷺が第八式改・ボゥゲンシャウツンのイコンボウで迎撃を開始するが、到底それでは空母を止めることはできなかった。
「馬鹿な。施設を破壊するつもりか！？　俺の玩具に何をしやがる！」
　無事機動城塞オリュンポス・パレスから脱出して宇宙港に逃げてきていたドクター・ハデスが、敵の挙動を見て呻いた。敵は、明らかにカタパルトを破壊するつもりだ。占領して自分たちで利用しようとしてはいなかった。