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コーラルワールド(第1回/全3回)

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第3章 コーラルネットワーク
 
 
 水原ゆかりから聞いた話によると、都築中佐とテオフィロスは行方不明になる前に、イルミンスールへ行っていたらしい。
 という訳で、アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)アリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)清泉 北都(いずみ・ほくと)クナイ・アヤシ(くない・あやし)は、一路イルミンスールへと向かった。

 都築がメールを送ったというアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)に面会を希望すると、許可されて校長室に通される。
 その場には、校長エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の姿もあった。
「早速ですけどセンセイ、都築って人のこと憶えてマス?」
「ああ、教導団から話を聞きに来た中佐じゃろう。憶えておるよ」
 アキラの問いに、エリザベートは頷いた。
「彼、今行方不明になってるんですけど……」
「何と、そうなのか?」
 続く北都の言葉に、アーデルハイトは驚いた様子で言う。
 ここで話した後の彼ことは知らないらしい、と思いながら、アキラが続けて訊ねた。
「えっと、どんな話したんすか?」
「ふむ、そうじゃのう」
「ひょっとして、聖剣アトリムパスに関連したことですか」
 クナイが言葉を挟むと、「何じゃ、知っとったんか」と言う。
「その件に、僕達も関わりましたので……」
 北都の言葉に頷いて、アーデルハイトは話し始めた。
「その剣には、世界樹を活性化させる力があるらしいの。
 じゃが、闇雲に突き刺したところで何とかなるとは思えんし、パラミタ中の世界樹を一本一本回っていたら、手間もいいところじゃ。
 それで彼は、シャンバラの世界樹、イルミンスールに手掛かりを求めに来たんじゃよ」
 成程、とアキラは呟く。
 その肩の上で、アリスが情報をHCに記録して行く。
「いいんですかぁ。情報が拡散されちゃいますよぉ」
 エリザベートが指差す。
「ふむ、しかし、特に口止めされたわけでもないしのう。極秘任務とも聞いておらんし」
 アーデルハイトはそう言って、特に咎めることもなく、話を戻した。
「中佐は、コーラルネットワークを利用できないかと言っておった」
「コーラルネットワーク?」
 コーラルネットワークとは、世界樹同士の繋がりだ。
「イルミンスールを活性化し、コーラルネットワークを使って、他の世界樹も同じように活性化させる、ということ、かな」
 北都の言葉に、アーデルハイトは頷く。
「その通りじゃ。結論から言えば、それは不可能と答えたよ」
「どうしてです?」
 クナイが訊き返す。
 アーデルハイトはちらりとエリザベートを見て、エリザベートはぷう、と頬を膨らました。
「有体に言ってしまえば、イルミンスールが他の世界樹達から舐められているから、じゃな」
 イルミンスールの力を聖剣によって活性化させたとして、その力をコーラルネットワークを介して受け取る、というようなことを、他の世界樹達はしないだろう、とアーデルハイトは説明した。
「でも、そんなこと言ってる時じゃないんじゃねーの?」
 アキラが言う。
「そうじゃな。
 世界が、もっと切羽詰ったような状態になれば、或いはな。
 じゃが、残念ながら、今、現在の段階では無理じゃ。
 イルミンスールもそう言っておったそうじゃ」
 ちら、と全員がもう一度、イルミンスールのパートナーであるエリザベートを見た。
 エリザベートはぷいと顔を逸らしながら、ぶつぶつと文句を言っている。
「それじゃ、都築中佐は……」
「うむ。それをやるならば、ユグドラシルを中心にすべきだろう、という結論に至っての」
 だが、ユグドラシルに適当に剣を突き刺したところで、活性化が成るわけではない。
 ユグドラシルがそれを受け入れるかという問題もあるし、そしてユグドラシルの核は、エリュシオン国家にとっても重要な深層部分であり、容易く赴くことのできる場所ではなかった。
「だがとにかく、エリュシオンに手掛かりを探しに行く、と言っておったよ」
「連絡が途絶えたのは、だからか?」
 シャンバラでは、多くの場所で電波が届き、主要都市に行けば携帯やHCが使えるが、他国ではそうは行かない。
 教導団も、それで、暫く様子を見ていたのだろう。
 話はそれで全てらしく、礼を言って、四人は校長室を後にした。

「コーラルネットワークか……」
 廊下を歩きながら、北都は考え込んだ。
「そうすっと、次はエリュシオンのユグドラシルに行ってみるか」
 なるべく都築に近づくべく、アキラはそう決断して、近くの窓から身を乗り出すと、連れて来ていたジャイアントピヨを探す。
 校舎を乗せていない枝にとまって、ポカポカ日向ぼっこをして待っているピヨを見つけて、
「おーい、下に下りておけよー!」
と声を掛けた。ピヨに乗って、エリュシオンまで行くのだ。

「北都、これを」
 クナイは、北都に持っていたハンカチを渡した。
「今の内に渡しておきます。どうぞ持っていてください」
「うん」
【禁猟区】の施されたハンカチを、北都は頷いて受け取る。
「あのお二方……特にテオフィロス様は元龍騎士ですし、そう簡単に消息不明になるとは思えません。
 連絡がとれないでいる状況で考えられる、最悪の事態……それを考えると、気を抜けません」
「油断はしないよ」
 北都は頷く。

 そして、四人はそれに遭遇したのだった。