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【真相に至る深層】第二話 過去からの螺旋

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【真相に至る深層】第二話 過去からの螺旋

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1:そして幕は切って落とされ


 海中都市ポセイドン遺跡の中央神殿、大聖堂の中央にある魔法陣。
 各員が調査に出ている最中のことだ。
「すまないね」
 氏無春臣の第一声に、クローディス・ルレンシア(くろーでぃす・るれんしあ)ディミトリアス・ディオン(でぃみとりあす・でぃおん)の二人は顔を見合わせると軽い苦笑を浮かべて「今更」と口を揃えた。
「危険は承知で話を受けたんだ。報酬さえ弾んで貰えば文句はないよ」
 あっけらかんとクローディスは言うが、パートナーのツライッツ・ディクス(つらいっつ・でぃくす)が僅かに顔をしかめているあたり、幾らか強がっているのだろう。氏無は複雑な顔で「……もしかしたら」と独り言のように苦く漏らした。
「その場しのぎの為に、最悪な手段を取るかもしれないんだよ」
 珍しい絞り出すように吐き出されたその言葉が、何を意味しているか判らないはずも無いが、二人は再び判っている、と声を揃えた。
「何の覚悟もなくここに立っているわけじゃない」
「あんたの仕事も判っているつもりだ」
 クローディスの言葉にディミトリアスが後を引き取る。
「あんたには守らなければならないものがある。それが個でないだけだ」
 その言葉に一瞬更に顔を歪めた氏無は、溜め息を吐き出した。
「……もう少し、嫌がったり怖がったり、責めてくれた方が可愛げがあるのにねぇ」
 わざとらしく冗談めかした氏無にクローディスは笑った。
「怖くない訳じゃないが、信じているんだ」
「何を」
 首を傾げる氏無に、クローディスは契約者たちに視線を向けた。
「他力本願な話だが、どんな困難だろうと……彼等が何とかしてくれるだろう、とな」
 だが、そう口にしたクローディスは不意にどこか遠くを見るような目で、小さく唇を動かした。
「…………きっと、未来が、ここに繋がる……」
 その声にディミトリアスが眉を寄せたが、その言葉の本当の意味をまだ、誰も理解してはいないのだった。



 そして、現在。
 氏無とツライッツ、二人に阻まれたスカーレッドの大鎌が、ギチギチと音を上げる。男性二人はともに非力では無いし、ツライッツに至っては人間より遥かにその腕の力が高いはずなのに、理性を飛ばしているらしいスカーレッドの力はそれを上回っているようで、段々と両者の幅が狭まっていく。表情を変える二人に、スカーレッドは目を細めた。
「邪魔ヲするナ人間。我が主ノ所望だ。ソの二匹を寄越セ。悪いヨうにはしナい」
「お断りします!」
 ツライッツが声を荒げたが、スカーレッドはまるで反応を示さず、柄の持ち手を変えるとそのまま強引に腕を捻らせて鎌を回転させ、ツライッツの腕をふりほどくと、そのまま回転させた大鎌を薙払おうとした、瞬間。
「させないわ!」
 目にも留まらぬ早さで、二人の前に飛び込むと同時、振り抜いた大剣がスカーレッドの一撃と激突して相殺し、スカーレッドを僅かに下がらせた。ルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。僅かに出来た間で具象化されたロイヤルドラゴンが、再度薙ぎ払われたスカーレッドの真空派を防ぎ、弾け消える。それを振り返りもせず構えを取ったまま、ルカルカは口を開いた。
「過去から何か来る……ってことは、巫女や都市の力を呼び込む事が出来れば、逆に害のあるものだけを過去に押し返すことも出来る筈!」
「いや」
 対して、下がった氏無は首を振った。
「過去は過去だ……あくまで現在に残ってる過去の残滓が、干渉してるだけなんだよ。因果が繋がっちゃいるが、時間が繋がってる訳じゃない」
 続く声は感情を殺したように淡々と、事実だけを告げていく。
「状況が再現されているだけで、今起きていることは過去からの延長線上にある現在だ。接続を切ることは出来るかも知れないが、過去が消せる訳じゃあない。過去を押さえ込もうと言うなら、結果的には封印と同じだ」
「……でも!」
 反論しかけたルカルカを「待て」とダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が止めた。
「議論しながた戦えるある相手じゃないぞ」
 その言葉通り、一瞬距離を取ったスカーレッドの攻撃は止んでいない。
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)叶 白竜(よう・ぱいろん)がその間で前に出て応戦中だ。
「もし憑依されているが故のあの力なら、スカーレッド大尉の身体がもたない」
 そう言われてしまっては、ルカルカも議論だけを続けては居られない。軽く眉を寄せると、ダリルの加速援護を受けながら前線へと戻ったのだった。