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【借金返済への道】眠れるアイスタイガー

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【借金返済への道】眠れるアイスタイガー

リアクション

 洞窟内では、アイスタイガーに標準を合わせ、呪文も唱え終わっているのだが、なかなか火術を打つタイミングがつかめずにいる状況が続いている。
「こちらです!」
 ロージーが爆炎波で攻撃を仕掛けるが、軽やかにかわされてしまう。
 アイスタイガーはそのまま葉月の後ろに素早く回り込み、前肢で地面へと抑え込む。
「っ!!」
 300キロもある体重が葉月の体に圧し掛かる。
 ディフェンスシフトが無かったらと思うとぞっとした。
「葉月!」
 火術をスタンバイしていたミーナが叫ぶ。
 口を開きアイスブレスが放たれようとしている。
 刹那、アイスタイガーは背後から野太刀の光条兵器によって足元を切りつけられる。
「……やはり後を付けて来て……正解だったな」
 こっそり付けて来ていたクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)だった。
「私も戦います!」
 その後ろにいたユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)は光条兵器を出した為、服が破けていた。
 なるべく肌蹴(はだけ)ないように動き、クルードをフォローしている。
 ジュレールとアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)は同時に別方向から爆炎波をぶつけアイスタイガーへと当てる。
 苦痛の咆哮を上げ、葉月の体から飛び退る。
 葉月は体を引きずりながら、急いで火術チームのいる壁際へと走る。
「放てーーー!!」
 この瞬間を逃さず、ブレイズから号令がかかる。
 動揺していたミーナも我にかえり、なんとか火術を放つ。
 火術が集まりボールの様になった火の塊をイクレス・バイルシュミット(いくれす・ばいるしゅみっと)が蹴り飛ばす。
 しかし、未だ元気に動けるアイスタイガーが軽やかにその塊をかわす。
 火術の塊はアイスタイガーの後ろの壁へと激突し、その場所の氷を一瞬にして蒸発させてしまった。
 壁の土が露わになっている。
「フフハハハハ! 相手にとって不足はなし! 【ファイヤードラゴン】もう1度用意!」
 
ブレイズが号令をかける。
「ソア! もう1度詠唱だ」
 姫北 星次郎(ひめきた・せいじろう)が呆然となっているソアに声を掛ける。
「次はうまく当てられる」
 ケイもソアの背中を軽く叩き、励ます。
「は、はい! 頑張ります! 星次郎さん、ケイ、有難うございます」
 ソアは笑顔でお礼を言うと詠唱に入る。
 それを見て、安心した星次郎とケイも詠唱を始めた。
 火術を唱えている最中のルーク・クライド(るーく・くらいど)の少し前で、銃が地面に穴を開ける。
「な、なんだ!?」
 集中していた為、状況がつかめず辺りを見回す。
 アイスタイガーがその牽制によって後ずさりする。
 永夷 零(ながい・ぜろ)がルークの斜め後ろで銃を構えていた。
「有難う!」
「な〜に、良いって事よ。こんな風に人助けなんて侍・ウエスタン的だしな」
 ルークは短くお礼を言うと呪文に集中し直す。
「ブシドー・ウスタンとか言ってる間にやられちゃいますよ!」
 零の言葉に対して、一緒に火術チームを守っているルナ・テュリン(るな・てゅりん)からつっこみが入る。
 アイスタイガーは再度、狙いを付けるように動かない火術チームを狙っている。
 ルナはカルスノウトを持つ手に力が入る。
 アイスブレスが放たれる。
「いけません!」
 急に入ってきた2つの人影が盾になり火術組まで冷たい息は届かない。
 アイスブレスの攻撃が止むとそこには、少し肌蹴たユニの氷像が出来あがっていた。
 更に、それを庇うようにクルードも氷像にされている。
 その犠牲を目前にしながら琴音とアーチボルド、ファル、カレン、高月 芳樹(たかつき・よしき)、晶が呪文の詠唱を終える。
「ぐがぁぁぁぁ!」
 アイスタイガーは高く咆哮を上げる。
 その瞬間、アイスタイガーに近付いたミキは吸精幻夜を使い、アイスタイガーの体に牙をたて血をすする。
「冷たっ……うぇ……野生っぽい……」
 アイスタイガーの血の味は予想以上に壮絶な野生風味だった。
 技が効いてきたのか、少しふらふらしている。
 この瞬間を逃さず、
ブレイズが合図を送る。
「放てーーー!!」
 再び完成した火術の塊をイクレスが狙いを定めて蹴り飛ばす。
 見事に的中。
「ぐ、ぐがぁぁぁぁう!」
 ふらりふらりと中央の寝床へと移動し、欠伸をした。
 そして倒れ込むように眠りについたのだった。
 さらに追い打ちをかけるように騎沙良 詩穂(きさら・しほ)と優が近づき添い寝する。
「ご主人様、どこか痒いところはございますか?」
「いつの間にアイスタイガーがご主人様になったんだぁ?」
 のんびりと優が詩穂につっこむ。
 詩穂は、添い寝だけではなく、足裏マッサージに始まり、自前のブラシで毛づくろいをし、リラックスさせている。
 暫くすると規則正しい寝息が聞こえてきた。
 皆は、ほっと胸をなでおろし、氷像になってしまった人達を抱えて外へと向かう。
 眠ってからアイスタイガーの生態を側で観察していた星次郎はケイに引っ張られ、優はアメリアに、詩穂は零にそれぞれ無理矢理連れられて行く。
 ぼ〜っとアイスタイガーを眺めていた晶も七海に引っ張られていった。
 洞窟の中には静寂が戻ったのだった。