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【借金返済への道】夢見る返済者

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【借金返済への道】夢見る返済者

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第1章


 空京の宿屋から出てきた青年が叫び続けている。
「誰かホイップちゃんを助けてやってくれ!」
 何度も何度も必死に叫ぶ。
 しかし、空京の街の人達は何が起きているのかと遠巻きに眺めるばかり。
 自分には関係はなく、何かが出来るわけがないという人達の野次馬が青年の周りに集まるだけ。
「何か面白いものは……って、なんだが大変な事になっているみたいだねぇ」
「ほらっ、りゅーき! 大変な事になってるとか言ってないで手伝いに行きますよ!」
 たまたま散歩に来ていた曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)がパートナーのマティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)に手を引っ張られ人だかりをかき分けて行く。
「き、君達、助けてくれるのかい!?」
「ちょうどホイップの話を聞いて返済の手伝いと新しい商売のネタを探しに来ていたところだ」
 青年の前へと辿り着いたのは瑠樹達だけでなく佐野 亮司(さの・りょうじ)もだった。
「私達も手伝います! ねっ、りゅーき」
「……あー、うん。ところでどんな状況?」
 3人の申し出に青年は涙ぐむ。
「有難うございます! まずは宿の中へ」
 青年は自分が経営している2階建ての宿の中へと招く。
 周りにいた野次馬達は少しずつばらけていった。
 亮司達は2階にあるホイップの部屋へと案内される。
 部屋の中はかなり広く、大きな本棚が一つと窓側にベッドが一つ、枕元には机があり、クローゼットが壁側にある。
「広い部屋だな」
 亮司がぽつりと呟く。
「部屋3つをぶち抜いたんです。ホイップちゃんは魔法薬の研究とかで場所をとるらしいですから。この部屋はもうホイップちゃんの部屋なんです。部屋代も要らないと言っているのですが、どうしても、と聞かなくて……それで1部屋分の代金だけ頂いています」
「なんでそこまで?」
「前に助けてもらった事があるんです……って、今はそれよりホイップちゃんを」
 ベッドの側に行くと、衰弱して青白くなっている顔のホイップと対面出来た。
「ゆすっても、叩いても、大声で叫んでも起きないんです……医者にも来てもらったのですが、異常はどこにも見当たらないそうです。本当に眠っているだけだと診断されました」
「点滴とかは?」
 疑問に思った事を瑠樹が聞く。
「医者にも勧められたんですが……君達も知っているみたいですから言いますけどホイップちゃんは今、もの凄い額の借金をしています。そんな状態で医者にかかったら余計増やしてしまうだけでしょう? 勿論、ボクが払ってしまっても良いんですけど、それはホイップちゃんが望まないから。だけど、医者はこのままじゃ衰弱死するから無理にでも病院で点滴なり、看病なりをした方が良いとは言ってました。だから少しだけ待ってもらったんです」
「他に何か手掛かりになるような事はありますか?」
 首をかしげながらマティエが質問をする。
「そういえば、4日前ホイップちゃんのところへ、誰かが訪ねて来ていたんです! 確か……真面目そうな女性と、薬屋のおやじさん、あとタノベさん……だったかな……あ、美食家で有名なドロウさんも来てい……たような気がします。出入りの激しい宿なのでちょっと確かではないですが……。ああ、それと悪いとは思ったんですが鞄を開けさせていただきまして『夢見放題』というパッケージとお香を見つけてあります。関係があるかは、解りませんが……」
「なるほど……ね」
 瑠樹は相槌を打ち、携帯を取り出す。
「とにかく、手伝ってくれそうな人達へ連絡してみよう」
「そうだな俺も手伝わせてもらう」
 亮司も携帯を上着内側のポケットから取り出すと知り合いに掛けていく。
 1人に掛ける事で連絡網のようになり、直ぐに来てくれる人達が集まりそうだ。
「――ああ、そうだ……どうせ聞き込みとかが必要になるんだろ? 俺はドロウとやらのところへ行くつもりだから、そう勘定しておいてくれ。……ん? 俺? ちょっと秘策がある。直接、ドロウの屋敷へと向かう。じゃあな」
 亮司が最後の電話を切ると行くところがあると瑠樹に言い残して部屋を出て行った。
「す、すみません。ボクまだ仕事がありますので、ここを任せても宜しいでしょうか?」
「だいじょーぶです。どうぞ、ここは任せてお仕事行ってください。後で何かあれば行きますから」
「はい、宜しくお願いします」
 マティエの言葉を聞いて、深々と頭を下げてからホイップの部屋をあとにした。