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溜池キャンパスの困った先生達~洞窟探索編~

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溜池キャンパスの困った先生達~洞窟探索編~

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●第三章 最奥に待つもの 

 立入禁止区域内は、これまで通ってきた洞窟内とは比べ物にならないほど、金属に溢れていた。
 色とりどりの金属が輝き、光源らしき物も見当たらないのに、ぼんやりと明るい。
「これは凄いな」
 虎鶫涼は洞窟最奥の様子を見渡す。そのままリリィ・ブレイブと共にさらに奥、虹色に輝く大きな岩の先へ。赤く光る眼が二組、光った。
「! ゴーレムだ!」
 立ちはだかるは銀色の巨体と銅色の巨体。銅色の背後には、矢や青みがかったケースのようなものが見える。
「もしかしてあそこに機晶姫が……?」
 虎鶫涼はブロードソードを構える。様子を見てから飛び掛かろうと観察していると、隣から駆け出す影。
「えいっ!」
 リリィ・ブレイブが【バーストダッシュ】使用。一気に銅のゴーレムに近付き【ツインスラッシュ】を仕掛けた。
 キィン
 高い音と共に剣が弾かれる。同時に腕を振るゴーレム。しかし動かずその場に立ちつくしたまま。あえなく虎鶫涼のもとへリリィ・ブレイブが戻る。
「まず考えろ。闇雲に攻撃しても、痛い目を見るだけだ」
「動いてみなきゃ、わからないもん!」
 虎鶫涼の指摘に、リリィ・ブレイブがそっぽを向いた。虎鶫涼は、そんな彼女を見ないようにして呟いた。
「……確かに、動いてくれて分かったこともあるけどな」
「でしょ?」
 胸を張るリリィ・ブレイブに苦笑し、虎鶫涼は銅のゴーレムを見遣る。
「あの銅色のゴーレムが、機晶姫を直接守っていると思う。一歩も動かずその場で攻撃してくるだけだからな」
「じゃあ、あれを倒せば機晶姫が見れるんだね!」
「そういうことだ」
 結論は出た。頷きあい、今度は二人で【バーストダッシュ】を仕掛けた。
 地面すら金属に覆われた立入禁止区域に一式 隼(いっしき・しゅん)も足を踏み入れた。
 パートナーのルーシー・ホワイト(るーしー・ほわいと)も、やや後ろからやって来ている。
「機晶姫は、あっちのようですね」
 一式隼は銅色のゴーレムを見遣り、光精の指輪を使用する。小さな光の珠……人工精霊が現れた。
「これで上手く誘い出せればいいのですが……」
 呟きつつも精霊を銅のゴーレムへ差し向ける。赤い瞳の前にぐるぐると回した。
 動物を誘い出すときと同じように、ゴーレムを動かそうと試みる。
「あ……」
 しかし動くまでもなく、ゴーレムが精霊を腕で叩き落した。力の込められた一撃に、光が弱くなる。
「隙を突くのは難しそうですね」
 歯を食いしばる一式隼の背後から、ゴーレムへ向け弓矢が放たれた。
「……効くかな」
 連続してルーシー・ホワイトが弓を使用。矢がゴーレムを射る。しかし高い金属音を上げただけで刺さりもせず、矢が落ちた。
「あー、ダメなの? それなら……」
 ルーシー・ホワイトは四足をつき、一瞬でユキヒョウへと獣化した。
「スピードで攻めるわよ!」
 真っ白の体毛を揺らし、一気に銅のゴーレムへと詰め寄る。そのまま突進。鈍い音が響く。
「っ……」
 金属の体に根負けしたルーシー・ホワイトは、一旦下がる。
「普通の攻撃にはびくともしませんね……」
 一式隼がごくりと生唾を飲む。どうすれば隙を作ることができるのか、考えを巡らせた。

 その場に固まっている銀色のゴーレムに向け、処刑人の剣が突き付けられた。
「おい、木偶の坊。突っ立ってるだけだとお姫様は頂いちまうぜ?」
 レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)が挑発して近付く。銀のゴーレムの赤い瞳の輝きが強くなった。
 そしてゆっくりと地面を踏みしめ、歩き始めた。
「お、挑発が効いたか……?」
 向かってくると思い、レイディス・アルフェインは構える。
 しかし、銀のゴーレムは腕をぶんぶん振り回し続けて、レイディス・アルフェインの斜め後ろへ向かい、歩いていく。
「挑発に乗ったわけじゃねぇのか」
 苦笑しつつ銀のゴーレムを観察する。大きく手を振り下ろした瞬間、ゴーレムの骨格部分が露わになった。
「あれだ!」
 狙いを定めて走り【轟雷閃】を腕の付け根に浴びせる。バチバチと音がして、付け根が焦げた。
「この調子で行くぜ!」
 レイディス・アルフェインはにやりと笑い、処刑人の剣を掲げた。
「封印、機晶姫……私の心の琴線をビシビシとふれてきます!」
 島村 幸(しまむら・さち)が手をぐっと握って瞳を輝かせた。
「まずは邪魔者を退かさなければいけませんね」
 動きだした銀のゴーレムに視線を向け、島村幸は【財産管理】を発動し、銀のゴーレムの進行方向、速度を計算。
「成程……攻撃者に向かって進むわけではなくジグザグに進んでいるだけですね。速度は……」
 呟きつつ、結果を吟味。島村幸は納得して頷いた。
 そして【トラッパー】を使用。小脇に抱えた袋の口を開ける。中には、油を染み込ませた落ち葉が大量に入っている。
 そのままブラックコートを使用し、気配を消したままゴーレムの進行方向へと先回りし、袋の中身をバサバサとまいた。
「こっちですよ!」
 準備を終えてブラックコートを脱ぎ、銀のゴーレムを罠にかけようと挑発を始めた。
「後ろ取られたら終わりなんだぞ!」
 そう叫びつつ飛鳥 桜(あすか・さくら)が【バーストダッシュ】と【スウェー】を発動。
 飛びあがって、振り回された銀の腕を避けつつ背後をとる。
「飛鳥流剣術奥義! 紅蓮繚乱剣!」
 叫んで横に転がり【爆炎波】を使用。更に飛翔。落ちる勢いで銀の頭へ剣を走らせる。
 キィンと高い音と共に、ゴーレムの頭にヒビが入った。たまらず反撃する銀の腕を、剣で受け止める。
「そのまま支えてくれ!」
 レイディス・アルフェインの声。頷いて、横に逃げようとしていた体を戻す。
 右足に【轟雷閃】が炸裂すると同時に、転がって避けた。
「もう一回後ろ、狙うぞ!」
 体勢を立て直し、飛鳥桜は剣を振り上げた。
 一方、じっと銅色のゴーレムを見て、隙を窺うエヴァルト・マルトリッツ。
 ぐるぐると振り回される腕が止まるのを待って【シャープシューター】で狙い撃った。狙った関節はやや外れかかったように見える。
「意外と強固だな」
 顔をしかめ、武器を弄ぶと銅のゴーレムを睨みつけた。
「やはり劣化を狙うべきか……」
「ゴーレムくんの相手はボクだよっ!」
 ロートラウト・エッカートは、やや離れた、ゴーレムの攻撃が決して当たらない安全な位置から【遠当て】により闘気を発する。
 銅のゴーレムは攻撃の元へ腕を振り下ろそうとする。しかしもちろん、遠くにいるロートラウト・エッカートには届かない。
「こっちだよ!」
 呼びかけてロートラウト・エッカートは再び【遠当て】を繰り出した。